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小悪魔からの手紙  作者: はな夜見
女将は優しく
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第一節

 遠州は不思議そうなムムに一から説明する時間もないという風にケータイを取り出した。女将の住所など遠州は知りもしない。ただの客と従業員。遠州と女将にはその言葉がぴったりの関係だけだったのだ。しかし遠州はその事実に後悔した。昨日の女将の態度を見るに、何かありそうだとは思っていたが。それがユズの事件のことだったとは。

 遠州は苦々しく顔をしかめた。


「もしもし……俺だ。大至急、調べてほしいことがある。”きんかん”という居酒屋で働く”女将”と呼ばれる女性の住所、その経歴全て頼む」


 そう言いながら遠州は自身のケータイの時計を見る。時刻は一時を過ぎたあたり。“きんかん”の開店時間は七時。長くても二時間前には開店準備を始めるだろうが、しかしこんな時間では“きんかん”にいるかどうかも怪しい。つまり女将は自宅にいる可能性が高いというわけだ。


「桔梗さん、お手数をおかけしました。では」


 遠州の態度の変化に、桔梗は青ざめた顔を遠州に向けた。桔梗は青ざめた顔を遠州に向けた。桔梗のケータイを持つ腕がカタカタと震えているし、先ほどから目も合わせようとはしない。ムムは焦っている遠州を珍しいと思いながらも、遠州をサポートするように、桔梗をなだめた。


「あなたのおかげで事件解決に動き出したと、そういうことですよ」「は、はぁ……」


 ムムの言葉に満足そうに頷いた桔梗にムムはさらに追い打ちをかけた。

「桔梗さんのような素晴らしい住民ばかりだとこちらも助かります。では、また」





「まさかレモンさんが遠州さんの知り合いだったとはね」

 桔梗の家を出たムムは開閉一番に遠州に言った。遠州は少し複雑そうな顔をする。

「知り合いじゃねぇが、まぁ、お得意さんだな」「ユズさんの顔に見覚えがあるって言っていたのはそういうことだったんだ」


 納得した様子のムムは、少し目を細めた。

「まったく。別にいいけど、桔梗さんへの聞き取りが少なくなっちゃったよ。桔梗さんの分析だけ乱雑だ」

「できてない訳じゃないんだな」


 そんなわけないでしょとムムは前置きした。

「桔梗さんは小心者だね。私が女であろうがなかろうがあまり対応が変わらなかった。ネットではとても見栄を張りたがるような性格だけど、でも事実以上のことを自慢する気はなさそうだ。グッズも集めて満足するようなタイプだったし、他二人と違ってミカンさんへの執着はないように見える。が、他二人と大きく違うのはミカンさんの引退後の姿を見ているということ。写真まで撮っている。つまり後を付けて住所特定も出来るだろうし、夫であるモミジさんの特定も出来ない訳じゃない。自身は夫婦仲が良くないのに、ミカンさんたちは良い。許せないと逆上する可能性はなくはない」


 でもとムムは続けた。「私はそんなに夫婦仲がこじれているようには見えなかったし動機は見えてこないかな。一番殺人を犯しやすい情報を持っていたというのは確かだけど」

「……人を殺すのに大層な理由はいらないだろ」

「殺したことがあるようなセリフだね、遠州さん」

「殺したことがある奴らを見てきただけだ」

 遠州はそう言って、続けた。「人殺しを許す気は微塵もないが」


「同感だね」


 そう言ってムムは空を見た。遠州はそんなムムを見つめて目を閉じた。


「あんなにそっくりだとは思いもしなかったがな」

「そんなに似てた?」

「まるで双子だな。女将本人のようだった」


 遠州の素直な意見に、ムムは頷いた。「アルバムで見た彼女らも似ていたね」

 遠州はなかなか返ってこない連絡に少し待ちきれないようで、ムムに女将が経営しているという”きんかん”まで行こうと持ち掛けた。勿論、遠州の提案に断るムムではない。頷き、そして呟いた。


「そのお店、開いていればいいけど」



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