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第91話 間違った悟り

 鈴音は未だ眠り続ける両親に一言声をかけます。


 「待っててね、パパ、まま。あの化け物には必ず、二人の怒りをぶつけてきてあげるから・・・」


 鈴音は一応開けた場所に行こうと、両親のいる病室を後にしました。そして朝だったことで人気の無い庭にやって来ました。


 「ここなら・・・ 邪魔はいないよね。」


 鈴音は手に持っていたままの魔道書を両手に持ってパラパラと開き、見開きで魔法陣が描かれたページに行き着きました。


 『これに触れて、願いを言えば・・・』


 鈴音はオークへの怒りを抱きながら開けた本を左手に持ち、躊躇いもせずに右手でその魔法陣に触れようとしました。





 しかし・・・



 パシッと鈴音は後ろから誰かの手によって右手を掴まれ、魔法陣に触れることが出来ませんでした。彼女はそれを放そうともがきますが、その腕の力は彼女より強く、離れることも出来ませんでした。それでも止めずにもがいていると、その腕の先から声が聞こえました。


 「止めとけ、魔人に願ったところでスッキリはしないぞ。」

 「貴方は・・・」


_______________________________________


 一方、鈴音のことを不安に思いながら学校に登校し、気難しそうに自身の席に座っていました。そこに疑問を感じたグレシアは彼女に近づいてきました。


 「あれ? 瓜、フィ・・・ 小馬は?」

 「用事が・・・ あるそうで・・・」

 「用事って・・・ アイツ、瓜と五十メートル以上離れられないんじゃ無かったの?」


 瓜は長文になることを分かっていたのか、おもむろにスマホをいじってグレシアにメールを送りました。


 『文字打ち速! ええっとどれどれ~・・・』


 グレシアはそのメールを見て、そこに平次も便乗しました。そこには、昨夜に言った瓜の台詞から始まりました。


_______________________________________


 『あの~・・・ フィフスさん。』

 「ん? どうした、瓜。」

 『日正さんの家に行くとき、私から五十メートル以上離れたのに、電撃を受けてませんでしたよね?』

 「ああ、その事か。」


 フィフスは聞かれることを予感していたのか、特に焦ることも無く答えました。


 「ややこしそうで単純な理由さ。俺とのつながりが五十メートル以内に会ったからだ。」

 『つながり・・・ ですか?』


 するとフィフスは瓜の肩に乗ったままのユニーに指を指しました。


 「ユニーと俺は契約しているからな。ここの間につながりの線がある。そうするとお互いの魔力が一部入ってくんだ。」

 『・・・ つまり?』


 瓜は理解できていない様子です。


 「どうやら制限は、俺の魔力が五十メートル以内にないと雷撃を受けるようでな。それ即ち・・・」

 『即ち・・・』









 「ユニーがお前の側にいれば、俺は自由に動けるって事だ。」









_______________________________________


 そうしてフィフスは今、暴走気味の鈴音の右腕を掴んで止めていました。


 「小馬ッチ!?」

 「よう、朝からグレてんな。」

 「放して!!」

 「放したらお前、その本に触れるだろ。」


 鈴音は普段は一切見せないような目付きでフィフスを睨みます。彼はそれを見てもなお手を放しません。


 「小馬ッチ・・・ 何者なの!?」

 「瓜の友達。」

 「じゃなくて!!・・・」


 鈴音は突っ込みの勢いの押されて本を持った腕を振ってしまい、それを待っていたかのようにフィフスは彼女から魔道書を奪いました。


 「よ~し、怒りで単純になって助かったわ。」

 「何なの!! 小馬ッチには関係無いでしょ!?」

 「関係ある。これは契約の魔道書、願いを言うことで魔人を使役できる代物だ。」

 「なんでそんなこと知ってるの!?」


 鈴音は目付きは変わりませんが、取りあえず気を落ち着かせて聞いて来ました。


 「昨日の事で察しはついてると思うがな、俺もあのオークと同じ『魔人』だ。諸事情があって瓜と契約している。」

 「契約?」

 「こんな本に願いを言うことで、召喚された魔人が叶える代わりにこの世界で実体化できる。」

 「この世界?」


 フィフスは一から説明することを苦に感じ、この場をまず切ろうとしました。


 「とにかく、お前はこんなものを持っちゃいけねえ。どうせ親の復讐でも言うつもりだったんだろ。」

 「アイツは・・・ ウチが倒す! 倒さなきゃいけないの!! それが二人の臨みのはずよ!!!」

 「それは両親が口を開いて言ったことか? それともお前が勝手に思った事か?」

 「そ、それは・・・」

 「勢いに任せて動いているなら、それは止めとけ。

 『ま、こうも早く動くのは誰かにそそのかされたからなんだろうが・・・』」


 フィフスは、鈴音から奪った魔道書をしっかり持って次にこうハッキリと言いました。


 「もう一度言う、止めとけ。一感情に走って動くとろくな事になんねえぞ。」


 鈴音はその言葉に妙な重みを感じましたが、怒りの感情を優先してフィフスから魔道書を取り返そうとします。しかし軽くあしらわれるだけでした。少しでも彼の気を反らせようと、彼女は質問をしました。


 「てか、なんで小馬ッチがここにいるのだ!?」


 フィフスは油断せずに動いて冷静に答えます。


 「一つは昨日の事でお前が何かしでかさないか心配だったから。そしてもう一つは・・・」


 すると次の瞬間フィフスは近くから接近する気配を感じ、鈴音を担いでそこをすぐに離れました。


 「何すんだ!!?」

 「どうやらやって来たようだ。」


 その次の瞬間上空から何かが勢い良く降って地面に激突しました昨日と同じオークが今した昨日と同じオークがいました。


 「へへへ・・・ 再チャレンジしに来たぜ、お嬢ちゃん。」

<魔王国気まぐれ情報屋>


・フィフスの契約の制限


 己の魔力を一部でも瓜から五十メートル以内に置いておかないと電撃を食らうというもの



 ユニーには契約時にフィフスの魔力が一部流れているので、彼を瓜の五十メートル以内に置く事で彼女から離れられるという制限の抜け穴が有る


 フィフスはキメラオークの戦いの時にユニーが隠れながら来るときに離れていた距離に違和感を感じて今回の検証をしました。

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