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第83話 魔道書の行方

 前回、鈴音が自然な流れでふと言ったことを聞いて、フィフスは内心かなり焦りながらもユニーのことを誤魔化そうと言い訳をします。


 「何言ってんだよ日正さん? ぬいぐるみが・・・」

 「鈴音でいいぞ。ウチは固いことは苦手だぞ。」


 話の腰を折られて更に調子が悪くなりましたが、それでもフィフスは続けました。

 

 「鈴音・・・ ぬいぐるみが勝手に動くわけ無いだろ。」

 「でもくしゃみしてたぞ?」


 それに対しフィフスは少し動揺しながら答えます。


 「そ、それは俺のくしゃみに決まってるだろ。今だって・・・ ヘックチ!!・・・」

 「お、おう・・・ 大丈夫か、小馬ッチ?」


 『小馬ッチ!?』


 フィフスは変な呼び方をされたことに思うところがありましたが、それより今はユニーのことを誤魔化すことを優先します。


 「あ、ああ・・・ もう・・・ ヘックチ! ヘックチ!!・・・ 





  ・・・ へエェッッッッッックチ!!!!!」


 「あ~あ~・・・ なんだか小馬ッチとても辛そうだぞ、保健室行った方が良いぞ。」


 フィフスの読み通り、鈴音は彼の大きなくしゃみを連続で聞き続けたことでユニーのことからフィフスの体調の方に思考を変えさせました。


 「へクッ!!・・・ ゲホッ!! ゲホッ!!・・・」


 フィフスはくしゃみのふりをする内に唾が喉に詰まってしまい、いつの間にかくしゃみが咳に変わってしまいました。


 「ゲホッ!! ゲホッ!!・・・ ちょっ・・・ これマジで・・・キツいやつ・・・」


 フィフスは実際に苦しんでダメージを受ける羽目になったものの、その場での鈴音のことは誤魔化すことに成功しました。



_______________________________________



 そしてその日の放課後、自分がまいた種で一番疲れることになったフィフスは、同情して下手くそな笑顔になってくれている瓜の隣で朝より猫背になって歩いていました。


 「ハァ・・・ これが自業自得ってやつなのか?」


 人目の無くなったところでユニーも動き出し、彼ですら前足でフィフスの肩を叩いて同情しています。首をコクコクとするユニーにフィフスは誰のせいだと心の底から思いました。


 そんな状態の彼でしたが、自身の体に鞭を打って態勢を戻しました。


 「さて、学校も終わったし・・・ 魔道書探しに戻るとするか。」


 どうやら今だフィフスはルーズの魔道書を見つける気でした。当然隣で今の彼の様子を見ている瓜は心配して止めようとします。


 『待ってくださいフィフスさん!! 今日は疲れているんですしもう止めておきましょうよ。』

 「いいや!! こうしている間に拾われてみろ・・・ 下手をすればルーズが犯罪常習犯になっちまうかもしんねえんだぞ。何が何でも見つける!!」

 『しかしそれでも一度休憩を・・・ それにどこにあるのか分からないものを探すのなら、もっと人手があった方が良いですよ・・・』


 それは一理あると思ったフィフス。しかしグレシアを誘おうにも今日は委員の仕事があるらしく、平次もそのパシリに行っていたため頼れませんでした。そのためフィフスはどうしようか立ち止まって考え込んでしまいましたが、少しして一つの案が思い付きました。


 「あ! そうだ・・・」


 そしてその事を瓜に言わずに、フィフスはおもむろにスマホを取りだしてどこかに電話をかけ出しました。





 そのときの彼らは気付いていませんでした。こういう捜し物は、見つけられてないだけで意外と近くに目的の物があったということに・・・



_______________________________________



 その少し後の時刻に、鈴音は家に帰ってきました。


 「ただいま~。」

 「あら、きょうは少し遅かったわね。」


 奥から聞こえた母の声を聞き、彼女は小さなため息をつきます。


 「ハァ・・・ ウン、急な課題があって遅れたんだぞ。しかもそれを提出したらそんな課題無いって突き返されたし・・・」

 「アハハ、災難だったわね。」


 軽く笑われて済まされながら、鈴音は一旦自室に入って鞄の中を整理しました。


 『もう・・・ ならなんで小馬ッチはそんなこと言ってきたんだ?』


 上手くすり替えが出来ていたらしく、彼女の頭の中にはユニーのことは消えていました。しかしそのための嘘でフィフスのことが気になりながらゴソゴソと鞄の中の物を取り出していくと、ある物に目が行きました。


 すると・・・


 「アッ!? しまった!!」


 その中には、教科書はもちろんでしたが、彼女がこの前買い物の帰り道に拾ってきた、緑の表紙に金の枠があしらわれた本があったのです。学校帰りに通る交番に渡そうと、鞄の奥底に入れておいたのです。


 『課題に意識しすぎて、この本交番に届けることスッカリ忘れてたぞ!!』


 マズいと思った彼女は無意識に口を大きく開けて顔から大量の汗を流して焦ります。







 読者の皆さんは今回の話を読んでおそらく察したでしょう。






 その通り、鈴音が拾って家まで持って帰ってしまったこの本こそが、フィフス達が必死になって探している『ルーズの契約の魔道書』だったのでした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


その後外へ出ても結局余計な物の買い物をして魔道書を交番に届けることを忘れていた鈴音。



鈴音「うぅ~・・・ またやっちゃったぞ・・・」

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