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第81話 仕組まれた契約

 そこから少し時間がたち、瓜達はフィフスの提案もあって、彼と信を残して部屋から出て貰いました。グレシアは返して貰った杖を触りながら不安そうに言います。


 「どうしたんだろう、アイツ・・・」

 「給料貰えるって分かった途端顔色変えてたもんな・・・」

 「それについては同意だけど、こんな形での交渉をするとはね。」


 周りはそんな風に感じ地ますが、近くでフィフスの顔を見ていた瓜だけは違いました。


 『さっき、龍子博士の言葉を聞いた途端、一瞬だけ険悪な顔になっていたような・・・ 何かあったんでしょうか?』


_______________________________________


 対面用の部屋に残っていた二人。彼の考えていることを察していたのか、信は彼の険悪な表情の顔を見ても全く調子を崩していません。


 「さて・・・ その顔からして、給料につられて組んでくれた訳じゃなさそうだけど。人払いをしてまで僕に話したいことって何かな?」

 「分かっているくせに白々しい・・・」


 信のラフな態度に少々腹が立ったフィフスですが、それより優先して聞きたいことを離しました。


 「さっき俺の去り際にアンタがボソッと言ったことが気になってな。」


_______________________________________


 「残念だな~・・・ せっかく向こうから来て貰ったのに・・・」


_______________________________________


 「あの含みの有る言い方、だたエデン(ここ)に来させたことじゃないよな。」


 信はパンッと一回手を叩き、右人差し指を彼に指して嬉しそうに答えました。


 「ご明察。実は君がこの世界に転移して来ていることは、過去の監視カメラに映る一件の前から知ってたんだよね~・・・」

 「どうしてだ?」


 信は机の上のコーヒーを少し飲んで喉を潤した後、ことに対する説明をしました。


 「君の契約の魔道書は、瓜君の家に宅配便で届いたもの、だったよね。」

 「なんでアンタがそんなこと知ってる? ! まさか・・・」


 信は机の方に向かせていた椅子を再びフィフスに向け、ハッキリと言いました。







 「察しの通り。 彼女に魔道書を送りつけたのは、この僕だ。」







 フィフスは驚くより、何故か怒りに満ちている様子でした。


 「・・・ どこで手に入れた?」

 「ん、・・・ 何か言ったかい?」


 信は彼の小さい声が聞こえずもう一度聞きました。するとフィフスは椅子から立ち上がり、信に顔を詰め寄る勢いで近付いて、彼の胸づらを掴み上げて睨み付けました。


 「どこで手に入れた!! あの本を!!?」


 フィフスは唾が飛ぶことも気にせず叫び出しました。信のこれには驚いている様子です。


 「かなり動揺しているね・・・ 何かあったのかい?」

 「話をそらすな!! どこでそれを手に入れたのかと聞いている!!!」


 そのときのフィフスはいつになく必死な姿を見せています。しかしそれに対しての信の答えは大雑把なものでした。


 「そう言われてもなぁ・・・ 僕はただ『ある人』に頼まれただけなんだけど。瓜君に契約の魔道書を渡せってね。理由を聞いても彼は答えてくれなかった。」

 「ならそいつはどこにいる!!? 言え!!!」

 「生憎それは秘密だ。言わないように根を押されているのでね。」

 「そうか・・・」


 フィフスは強引な手段に出ようと、腰に携えていたままの剣に手を伸ばします。しかし、彼がいざそれを行動に移そうとした次の瞬間、彼のへその辺りには銃口が突きつけられていました。


 「止めておきたまえ・・・ 君が剣を抜くより先に銃弾が腹を撃ち抜くよ。」

 『どっから銃を出しやがった!? しかも顔色に一切の変化が無い、使い慣れてやがる・・・』

 「・・・ ケッ!」


 フィフスはこの場では分が悪いと判断し、仕方なく降参しを示して彼の胸ぐらを掴んでいた手を離し、気持ちを落ち着かせて椅子に座り込みました。


 「なりふり構わないね~・・・ 余程あの本に思い入れがあったのかな?」


 フィフスはそのとき、またあの少女のことを思い出していました。


_______________________________________


 「じゃーーーーん!」


 少女はフィフスに赤い表紙の魔道書を手渡します。


 「それは?」

 「フフフ、契約の魔道書。 家にあったのくすねてきた。」

 「ホント悪い意味で手際が良いな。」


 フィフスは彼女の行動に呆れながら聞きました。


 「それで、それは何が出来るんだ?」

 「なんでも魔人と人間を契約させてつながりを作るそうよ~・・・」


 フィフスは疑問を感じます。


 「どうしてそんな物を?」

 「最近、フィフスが修行で忙しくなって来れなくなってるから、少しでも、つながりが欲しいなぁって。どうかな?」

 「つながり?」

 「そう・・・ どんなものであれ、つながりって大事だもん。だからそれが少ないアタシには、それを形にしたくって・・・」


 フィフスは風に揺れた彼女の髪を見た後、顔の向きを変えて冷めた答えをしました。


 「・・・ 変な奴。」

 「アハハ、やっぱそうかな?」


_______________________________________


 フィフスはそんなことを思い出し、自分なりに考えて答えました。


 「わかった、今は聞かないでおく。ただし、働いたらそれなりの報酬として断片的にでも教えて貰うぞ。」

 「がめついな~・・・」

 「じゃ、これ以上いても進展はなさそうだし、帰らせて貰うわ。」


 話が終わったフィフスは席から立ち上がり、部屋を出ようと後ろに歩き始めました。信はそれを呼び止めました。


 「待ちたまえ。」

 「何だ? 魔道書について話す気になったか?」


 すると信は机の上に置いていた分厚いスマートフォンを彼に三つ放り投げました。フィフスはそれを落としかけながらも受け取ります。


 「・・・ これは?」

 「僕の発明した『マグナフォン』、さっきの戦闘で経義君が使っていた銃兼連絡具だよ。使い方についてはボタンを押して起動したときに出るから、それに従ってくれ。」

 「監視アイテムってか?」


 信は自身の都合が悪いことには口を開きませんでした。


 「まあいい、後で姉貴達にも渡しておく。」


 フィフスは持ちにくそうにそれを抱えながら帰って行き、信はそれを見送ります。すると扉の前でふとフィフスが立ち止まりました。


 「あ、そうだ・・・ 龍子ドクター、最後にこれだけ言っとく。」


 するとフィフスはまた殺気のこもった目になって振り返り、信を睨み付けました。


 「もし、アンタの指示に瓜を巻き込んだら・・・ 




  ・・・ そのときは、お前も殺す。」


 「・・・ 分かったよ。」


 信の返事を聞くと、フィフスは顔の向きを戻し、そこからは黙って部屋を出て行きました。信は静になった部屋の中、残っていたコーヒーを一口飲んでこんなことを呟きました。





 「そんなことを言われてもな~・・・ 彼女は君より先に、この騒動に巻き込まれているのになぁ~・・・」



<魔王国気まぐれ情報屋>


 彼の帰還を待っていた瓜と合流後帰宅。彼女の説明を受けながらスマホの設定をする。


瓜『ここをこうです。』


フィフス「こっちの世界のものはいちいち細かいな・・・」




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