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第80話 変人ドクター

 監視員は扉横のインターホンのボタンを押し、現状を報告します。


 「失礼します。ご要望の魔人三体をお連れしました。」


 すると、扉のロックが外れます。


 「入れ。」


 監視員の一人がそう言い、一行はそれに従って経義を前方にその部屋の自動ドアを開いて中に入りました。事前に用意されていた椅子にそれぞれ座ります。


 彼らの視線の先には、コーヒーを飲んでいる男が見えました。彼はそのカップを置き、フィフス達をグルッと囲って監視していた男達に声をかけます。


 「もういい、掃いてくれ。」


 そう言われて男達は部屋から出て行きました。そして少し広くなった空間の中、彼は椅子を回してフィフス達に姿を見せます。


 「やあ、初めまして。赤鬼君。」


 その男は思っていたよりも若く、また爽やかな顔つきをしていた科学者でした。フィフスは周りを見ると、先程経義が着ていたのと似ているパワードスーツを複数体ありました。


 「アンタがあのヘンテコ鎧の開発者か・・・」


 全く地の利のないことで個人差はあれど緊張感を感じていたフィフス達に対し、彼はフランクに話しかけます。


 「そう、人工魔石を搭載した『Un beyond human suit』通称『UBスーツ』さ。凄いだろ?」

 「人工魔石だぁ?」


 男はポケットから形の整った透明な石を取り出しました。


 「これのことさ。君達、異世界の魔人と違って魔力を使えない我々でも魔人に対抗するために僕が開発した代物さ。」


 フィフス達は緊張感を持ちながら彼の話を黙って聞いています。すると男はそれを見てふと笑顔になりました。そして・・・


 「ハハハ、そう緊張することはないよ。解体しようって訳じゃないんだから。」


 男は机の上に置いていたリモコンを彼らに向け、ボタンを押します。するとはめられていた手錠が瞬く間に外れて落ちました。フィフスは急に異物が外れてスースーする手首に違和感を感じています。そこに信はやって来ます。


 「まぁまぁ固くならずに! コーヒーでも飲んで落ち着いてくれたまえ。」


 信は自分も飲んでいたムースコーヒーを彼らにも配り歩きました。


 「・・・」

 「うちの会社の名物さ。毒なんて入れないよ。」


 怪しみながらもどうにもならないので、フィフス達は取りあえず一口それを飲みました。すると瓜が反射的に呟き、グレシアもそれに続きました。


 「あ、おいしい・・・」

 「ウン、中々いけるわねえ・・・」


 女性陣がその味を気に入ってグビグビ飲んでいると、横の平次の反応は違いました。


 「マッズ!!」


 平次はどうにか吐き出さずに飲み込みましたが、かなり苦しんでいました。


 「アハハ、外れ当たっちゃったか~・・・ これ当たり外れが大きいからね~・・・」

 「そんな物を客人に渡すな。」

 「経義君も飲む?」

 「いらん!」


 完全に緩くなっていた空気になったのを見て、フィフスは彼に聞いてみました。


 「で、アンタは誰だ?」

 「そうだった忘れてた。じゃあ自己紹介。」


 男はわざとらしい敬礼をして笑顔で応えました。


 「エデンコーポレーション日本支部 第三科学技術局長 『龍子(たつご) (しん)』だ。 よろしく。」


 続けてフィフスは質問します。


 「アンタの目的ってのは何だ?」

 「そうきつい目で見るなよ。まずはこれを落とし主に返してあげようと思ってね。」


 信はそう言うと、机の引き出しにしまっていた落とし物を取り出しました。それは、暴走バスの一件で無くしていたグレシアの杖でした。


 「アァ!! アタシの杖!!」

 「ほう、これは君のだったか。では・・・」


 信はそれをグレシアにほろうとし、彼女もをれを手で受け止めようとします。


 「なぁんちゃって。ただでは返さないよ。」


 しかし信はそれを途中で止めて体を反転し、自分の席の所へ歩いて行きます。フェイントをかけられたグレシアはあんぐりをしています。信はそこから調子を変えました。


 「さて、ここからが本題だ。これの返答次第によっては、これを取り戻すのは諦めて貰う。」

 「『・・・空気が変わった。』 交換条件があるのか?」


 横で壁にもたれて聞いていた経義が話し出します。


 「ようやくか・・・ うちのメイドに早く帰るように言っちまったんだ。さっさとしてくれ。」


 そこから信はまた体を反転させ、笑顔を見せながらハッキリこう言いました。










 「君達、エデンと組まないかい?」










 ハァッ!!!!?


 それに全員揃って疑問詞を叫びました。最初に反論をも押し出たのは当然経義です。


 「気でも狂ったかドクター!! 研究材料ならまだしも、魔人を味方に付けるなど言語道断だ、断固反対する!!!」


 それにフィフスも乗ります。


 「俺も経義(コイツ)に同意するわけじゃねえが反対だ。魔人を無差別に刈り尽くすような組織が信用できる訳ねえだろ。」

 「ま、それもそうね。」

 「おいおい・・・」


 珍しく彼の意見にサードが同意し、その隣の平次はこれによって悪いことが起こらないかと困っていました。


 「ということでこの話は終いだな。」


 立ち上がろうとしたフィフスの服の裾をグレシアが引っ張って止めます。


 「アタシの杖は?」


 フィフスは可愛らしく見てくる彼女の視線をものともせずに冷たく言います。


 「知らん、自分でどうにかしろ。瓜、帰るぞ。」

 「ハ、ハイ!・・・」


 瓜は急に声をかけられてビックリしながら立ち上がり、フィフスについて行こうと走り出しました。


 「待ってくれ。小馬五郎君、町田瓜君。」


 名前を呼ばれたことで、二人は反応して足を止めました。


 「・・・ すでに俺達のことは把握済みってことか。」


 信は手に持っている杖をいじくりながら話し続けます。


 「君達の行動が派手だったからね。むしろ感謝して欲しいな。君らがやった事件の後処理も僕の方でやっておいたんだから。」


 フィフスはそれを聞いて一つ気付きます。


 「てことは化けゴウモリのときの武装集団も、アンタが送ってきた先兵だったのか。」

 「ご名答。本当ならあの場で君達を連れて来ようと思ってんだけど、先に手を打たれちゃってね・・・」

 『あの魔法陣か・・・』


 フィフスはそれがカオスのものだとは知りませんが、魔法陣は分かっていました。


 「これからこちら側についてくれるなら、尻拭いについての心配は無くなるよ。どう?」

 「弱みを握って操ろうってか?」


 信はニコリとしたまま聞き返します。


 「そんなことは言わないよ。帰るなら帰ればいいさ。」

 「ホウ、それなら早速失礼させて・・・」


 扉のホウに向かうフィフス達を見ながら、信は小さくボソッと呟きました。




 「残念だな~・・・ せっかく向こうから来て貰ったのに・・・ 給料もはずもうと思っていたたんだけどな・・・」




 フィフスは後ろに瓜がいるのも忘れて突然足を止めました。瓜は彼に当たって少し痛がっています。そこからフィフスは信に聞きます。


 「・・・ 給料って、どのくらいだ?」

 「? まあ具体的なことは討伐回数によっても変わるけど、月最低でも『十万円』くらいは・・・」





 「乗ったぁ!!」


 フィフスは目を輝かせてそう叫びました。


 「「「「「エェーーーーーーーーーーーーーー!!!?」」」」」


 こうして、フィフス達一行はエデンコーポレーションと共闘態勢を気付くことになりました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・人工魔石


 信が発明した特殊素材。過去に彼が知り合いのつてで手に入れた魔石を元に作り上げた模造品で、魔力を持たないこの世界の人間も使用可能になり、対魔人への攻撃手段が大幅に広がった。



・Un beyond human suit


 信が人工魔石をふんだんに使用して作り上げた特殊パワードスーツ。使用者によって分けた特殊能力を持った『専用機』のみが開発されている。


 これは信がとある事情からスーツの悪用を防ぐために考えた策であり、また「beyond」は「越える」を意味しており、そこに「Un」をつけ、信はこれを人に人を越えさせずに魔人と戦えるようになることをモットーとしている。




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