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第79話 エデンコーポレーション


 「・・・ ッン!?」


 フィフスが気絶から目を覚ますと、まず目が行ったのは、手錠をはめられた自身の両腕でした。


 「オイ! こりゃ一体!?」


 ゴンッ!!


 驚いて叫びながら立ち上がると、狭い天井に頭が当たってすぐに座り込みました。


 「イッ・・・」


 フィフスが痛む頭にやりずらく両手を置き、辺りを見渡します。すると両隣には、同じように手錠をかけていたグレシアとサードがいました。その三人の中心にユニーが立っています。


 「もう少し静かに起きてよ! ビックリするじゃない!!」

 「ハァ・・・」

 「三人揃って詰みか・・・」


 そこは監獄を思わせる檻の中でした。しかしエンジン音が聞こえて来たので、どうやら移動しているようです。すると、檻の外のスペースにいた瓜が近付いてきました。


 「フィフスさん! 『良かった、目が覚めたんですね・・・』」

 「これのどこが良いんだ? どうなってんだよこれは!?」


 フィフスの怒りながらの質問に、瓜は彼が気絶していた間のことを説明しました。


_______________________________________


 それは先程の男による鶴の一声から先のこと。


 経義は、その男の言っていることに、ヘルメットの中で目を丸くしました。


 「正気かドクター・・・ 魔人を研究所内に入れるなど、言語道断だ! 俺は反対する!!」

 「君の答えは聞いてないよ。それとも、今すぐ契約を切られたいかい?」

 「クッ・・・」


 拘束が解除された経義は、ブレスのスイッチを押して装甲を外しました。その中の顔は分かりやすく不満な表情になっています。


 瓜は今の内にとフィフスを抱えてユニーを肩に乗せ、その場から離れようとしました。すると腕輪の声は彼女に向きました。


 「君、待ってくれ。」

 「ヒャエ!?・・・」


 瓜がまさか自分に声が来たのかと思っていると、男はそれを分かってて続けました。


 「逃げようとしても無駄だよ、監視カメラに映っている。」


 瓜が言われて上の方を見回すと、木々に紛れ込んでいる監視カメラを見つけました。


 『あんな所に!!』

 「そこにはもう部隊を向かわせてある。安心したまえ、悪いようにはしないよ。」


 男が言ったとおりに、そこにはすぐに多数の人が入ってきました。


 『!! あれは・・・』


 それは、過去に化けゴウモリのいたアパートにやって来た男達と同じでした。しかしその部隊の迅速な動きを前に、為す術も無く皆揃ってその部隊が乗ってきた大型トラックに乗せられました。


_______________________________________


 一通り聞き終えたフィフスは、大きくため息をつきました。それが要するに、その謎の男に自分たちの命運が握られているということだったからです。


 「で、これはどこに向かってんだ? まさか死刑台じゃねえよな。」


 すると、瓜の後ろにある長い座椅子に座っていた経義が静かに答えました。


 「時期に分かる、黙って座ってろ。」


 そう殺気のこもった声で言われ、フィフスは黙ることにしました。瓜も、すぐに寄ってきた平次に諭され、席の位置に戻っていきます。経義は落ち着いてからこんなことを思います。


 『ドクターの奴、なぜ魔人を自分の居場所へ連れて来させようと・・・』




 少しして、走っていたその大型トラックはブレーキをかけ止まりました。瓜達が案内されている中、彼らの前に部隊員の一人が来て檻の鍵を開け、彼を始めとした何人かに監視されながら魔人三人はそこから降りました。


 そこはどこかの駐車場でした。かなりの規模のものなのか、このスペースも大きな空間が広がっていました。そこを一行が進んでいくと、ふと瓜が大きめの扉に描かれていたマークを見つけました。


 「あれは・・・」


 彼女と違ってそれを知らないフィフスとサードは首を傾げますが、残りの連れて来られた面々は少なからず顔色を変えて反応しています。


 「どうした、このマークになんかあんのか?」


 それは、大きなリンゴの枠の中に一本の木が中心に生え、そのサイドに男女が別れて描かれているロゴ。その中心に英文で書かれていた言葉を、フィフスは習いたての片言で言いました。


 「エデンコーポレーション?」


 すると扉が開き、移動を始めると共に彼の感じた疑問にグレシアを始めとして代わりばんこに答えます。


 「『エデンコーポレーション』・・・ こっちの世界に存在する中でも有数なトップ企業よ。」

 「でかい会社ってことか?」

 「そんなレベルじゃねえよ。都市開発、ファッション、グルメ・・・ やってる部門を上げれば切りがねえんだ。」

 「でもまさかそんな組織が魔人討伐に絡んでたなんてね・・・」

 「だがこれで説明がつくな。」


 一行がエレベーターに乗り込んだタイミングにフィフスが言った事が瓜には分かりませんでした。なのでこう言います。


 『牛若さんの鎧のことですか?』

 「それもそうだが・・・ 今まで土蜘蛛といい、化けゴウモリといい、アイツらは一切隠れること無く暴れていた。だってのに、テレビや新聞では一切それについて触れられなかったからな。」


 瓜はそれを言われて初めてハッとなりました。そこにフィフスは彼女の思ったことを言い出します。


 「要はここでもみ消してたってことだ。確かに、耐性の無い奴がいきなり魔人のことを知ったら混乱するからな。」

 「隠したくなるのも無理は無いわね。」

 『前から知っていた、ということでしょうか・・・』


 エレベーターの扉が開き、監視員の指示を受けてそこから出ます。そこでも会話は途切れませんでした。


 「そこまではわかんねえ。でも、手際が良いのは確かだ。これから合う奴に『そこら辺のことが』聞けたら良いんだが・・・」


 するとそのとき、前方を歩いていた経義が足を止め、一行もそれにつられます。それはとある個人部屋の扉の前でした。その中では、足音が聞こえて来た男が独り言を呟きました。


 「来たか・・・ やっと話が出来る。」


 男は楽しみに胸を膨らませ、少しニヤけていました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・エデンコーポレーション


 瓜達の居る世界にある随一の巨大企業。イギリスのロンドンに本社があり、魔人の出現率の高い日本には多くの支社がある。


 表向きには都市開発、ファッション、グルメなどと世界のあらゆる部門を支えている複合企業として広く知られているが、その裏では日々襲来する魔人に対抗するための武力装備の開発、及びその運用をしている。


 経義は呼び出した男のことを「ドクター」と呼んでいたが、一体彼は誰なのか。それは次回で。

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