第78話 馬とバイクの追いかけっこ
都市街に行くと人目につくと判断し、公園奥の林に逃げ込んでいたフィフス達。後ろの経義はバイクではギリギリの幅にもかかわらず、上手く乗り回して木々を通過しています。その事に彼も感付いてました。
「後ろから来てるな、面倒くさい奴だ。」
「来てる!? こんな木だらけの所をか!?」
「どうやらな、器用なこった。」
そんな会話をしながら少しの間ユニーに乗っかって移動していた三人でしたが、突如フィフスがこんなことを言い出しました。
「メガネ、そこ代われ。」
「あ? どうした急に?」
すると次の瞬間、平次の顔のすぐ横を細い閃光が通り過ぎ、それをフィフスが抜いた剣で弾きました。
「な? 危ないから代われ。」
「はい・・・」
フィフス達は一瞬ユニーの背中に立ち上がってジャンプし、その間に残り二人は前に一つ前進しました。そんな中でも容赦無く飛んでくる閃光を、フィフスは全て剣で防ぎます。そのときに彼が見ると、思っていたよりも経義は自分たちの近くにいたこと、そしてそこからスマホの原型があるハンドガンを構えていました。
「まだ武器があったのか。ならこっちも・・・」
フィフスはユニーの尻尾近くに体を反転させてまたがり、相手の銃弾に対抗して連続して火花弾を打ちました。両者の攻めは拮抗していましたが、ユニーとバイクの距離はどんどん詰められていました。
「どうして・・・ 距離が・・・」
瓜の疑問にフィフスは答えました。
「そりゃそうだろ・・・ こいつにだって限界がある。一人は女とはいえ、人三人は流石に疲れが出る。」
一番前方に乗っていた瓜がそのユニーの頭をよく見ると、確かに彼から息を荒れさせている音が聞こえてきました。
「ユニーさん・・・ 無理を・・・」
「だったらお前の瞬間移動使えば良いだろ!!」
「あれは一度使うと一時間インターバルがある。今は使えん。」
「役立たず!!」
「戦ってすらいないお前が言うな。」
「俺は町田さんを守っているんだよ!!」
「あっそ。」
フィフスが会話を面倒くさく感じて聞き流していると、そこに援軍がやって来ました。経義の左上から、氷の針が飛んできたのです。しかしこれは彼の装甲を貫けませんでした。
「チッ、杖なしの即席じゃキツいわね・・・」
「大丈夫よ魔女っ子ちゃん、アタシが行くわ。」
それは魔王国から帰るときにグレシアが持ってきた『魔女の箒』でした。二人で乗っていたそこから、サードが飛び降ります。
「ウリーちゃんに怪我はさせないわよ!!」
「俺達の心配もしてくれ!!」
それに対して経義は、ハンドル中央にいくつかあったスイッチの一つを押しました。すると、バイクの座席より後ろの部分から小型の砲台が飛び出し、サードに照準を合わせてミサイルを放って来ました。
「嘘! そんなのあり!?」
サードは予想外の攻撃に対処が遅れ、防いだものの彼に追い付かずに落ちてしまいました。
「エエイ! やってくれるじゃない・・・」
せっかくやって来たのに二人のサポートが役に立たなかったことにフィフスは少し怒りを感じましたがそれは置いておき、限界が近くなってきたユニーに気を配りながら火花弾を続けます。
「・・・」
切りがないと思ったのか、経義はさっきとは別のスイッチを押しました。すると今度は前門のの天狗の意匠が縦半分に割れ、そこからさっきのより大きな砲台が一つ出現しました。
「何あれ?」
フィフスが嫌な予感を感じながら冷や汗を流すと、次の瞬間その砲台からレーザーが放たれました。突然のそれにフィフスは放射炎を出して対応しましたが、やはり威力が足りず、全員吹き飛ばされてしまいました。そのときに疲れが限界まで来たユニーも小さい姿に戻ってしまいました。
フィフスは咄嗟に瓜とユニーを抱えて受け身を取りましたが、彼に無視された平次は頭から地面に突っ込みました。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます。」
ユニーも力がないながらコクコクと首を縦に振りました。
「フィフス! 瓜!!」
グレシアはそれを見て気が散ってしまい、自分にミサイルが向かっていることに気付かず箒に受けてしまい、墜落してしまいました。
「グレシア!!」
しかし彼女を心配する間もなく、経義がバイクを降りて間合いにまで来ていました。一人と一匹を抱えている今の彼には、彼の攻撃をよけきれる自信はありませんでした。それでもどうにか回避しようと、フィフスは後ろを向いて走り出そうとしました。
すると、その隙を見逃さなかった経義は、背中にしまっていた大剣を振り下ろしました。一度目はなんとかかわしたフィフスでしたが、それによって足を崩しました。
そこに経義のツバメ返しのような切り返しに背中にしょっていた鞄に引っかかってしまい、切られると共に遙か上空へ飛ばされてしまいました。
「アァーーーーー!! ルーズの魔道書ーーーーーー!!!」
中の魔道書は無事ではありましたが、その勢いのまま地平線の彼方まで飛んでいってしまいました。
それに気を散らしたフィフスは崩した板体勢をそのまま転んでしまい、抱えていた彼女達をかばいながらだったためダメージを受けてしまい。木に頭を打って目を回してしまいました。
「あぁ~・・・」
「フィフスさん!?」
そんな愉快な彼らにも、経義は容赦無く剣を構えます。
「万事休すだな。
・・・ 死ね。」
経義の言った事に瓜はどうにかフィフスを助けようと、怖さで震えながらも咄嗟に彼をかばうように前に出ました。
「退け、邪魔だ。」
「退きません!!」
「そうか・・・ ならお前ごと切る。」
冷たい言葉を浴びせた次の瞬間、経義は彼女ごとフィフスを切り裂こうと大剣を思いっ切り振りました。しかし・・・
ガチッ!!
次の瞬間、経義の剣の刃が瓜の頭に当たるすぐ近くで動きが止まりました。瓜は何が起こったのかと恐怖で閉じていた目を開けると、まるで何かに縛られたかのように動けなくなっている経義がいました。
「クッ!・・・ 何だ・・・」
そこに、経義の付けていた腕輪から男の声が聞こえてきました。
「君のスーツは、今こちらから『停止』させてるよ経義君。」
「ドクター・・・ どういうつもりだ!?」
「さっき言っていたことさ。彼が探していた魔人だよ。」
「アァ!!?」
経義と男の会話を瓜が緊張したまま聞いていると、男はこんなことを言い出しました。
「その魔人君の一行、僕の所へ連れてきてくれない?」
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所変わってとある道中、こぢんまりとして人気のない道に一人の女子高生が、買い物帰りに歩いていました。するとそんな彼女の前方に、何やら落とし物を発見しました。
『何これ・・・』
彼女はそれを拾います。それは緑色の表紙の本でした。しかし開いても、彼女にその文字は読めません。
『どこの言葉だろ・・・ 交番にでも届けよ・・・』
そして彼女はその本を買い物袋に入れ、そこから歩いて去って行きました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・その頃の静
屋敷の入り口にて経義が帰るのを今か今かと待ちわびて立っていること既に一時間。
静『若様、シズは待ちます。いつまでも待ちます。』
弁『この時間の間に家事の訓練でもすればいいのに・・・』