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第6話 町田瓜改造計画

 この間の騒動から、三日が経過しました。フィフスは元物置部屋を自分なりに片付け、こちら側の世界について知るために猛勉強していました。


 「ウオーーーーーーーーー!!」

 『そんなに無理をしたら、体に障りますよ。』

 「見た目ほど大変じゃねえよ。数学や化学についてはほとんど故郷と変わらんようだしな。」

 『そうなんですか・・・』

 「そんなことよりだ・・・」

 「?」


 フィフスは後ろに振り返ります。そしてそこにいた瓜を見て言いました。


 「お前、まだ家の中でもその格好なのか・・・」


 そこにいた瓜は、また眼鏡やマスクをつけていました。その様子を見たフィフスは頭をかき、微妙な顔をしています。


 「お前なあ、まずそこから変えないと話にならないだろが。」

 『い、いえ、私はこれがないと人と話が・・・』

 「・・・って、あれ?」


 瓜が気付くと、知らぬ間に眼鏡もマスクもフィフスに取られていました。


 「い、いつの間に・・・」

 「あいにく素早さには自信があってな。」

 『か、返してください! その眼鏡はお気に入りの一品物で・・・』


 それを聞いてフィフスは驚きました。


 「ア!? この変なグルグルがか!!?」

 『はい・・・ 見た中で一番おしゃれだったので・・・』


 そう言われ、フィフスは目を細めてよく見ました。しかし思ったのはこの言葉だけでした。


 「いやお前、はっきり言ってセンスないわ・・・」


 それを聞いた瓜は衝撃を受けていました。


 「そ、そんな!!・・・」

 「ついでに言うと今着てる服もな。」

 「ガーーーーーン!!・・・」


 フィフスの言う事は最もでした。現在瓜が着ていた私服は、堂々と中央に<風林火山>と書かれたTシャツに、赤と黒のストライプのズボンでした。


 それは当然女子高生のオシャレな格好とはほど遠かったのです。そういう当の彼も服を家から借りていたが、そのTシャツにはドドンと<鬼さんこちら>と書かれていました。


 『まだこの世界も文字は意味不明だが、とりあえずなんかこれ腹立つな・・・』

 「まさか・・・」


 フィフスはふと思い立ち家のクローゼットを広げた。そしてその中にあった衣類を片っ端から見て言いました。


 「う~わ、これは・・・」


 見てて普通な瓜に対し、フィフスは


 『こいつ、そりゃ友達できないわな。』


 と思った。そこにあったのは、<威風堂々>や、<親しみ>などのような、俗に言う<文字T>がわんさかあり、それに合わせる下も、スカート、ズボンのどれを取ってもヘンテコな物ばかりでした。


 『どうですかこれ、かっこいいでしょ。』

 「どこがだ。」

 『エッ!?』

 「どう見てもこんなの孤立するだろ。」

 「ガーーーーーーーン!!」


横でしくしく泣いている瓜を見ながらフィフスは思いました。


 『これは致命的だな、まずはまともな服からだな・・・』

 「オイ、」

 『はい、何でしょう?』

 「出かけるぞ!」

 『え、どこに・・・』


 フィフスは瓜の分も支度を整えて、続けました。


 「当然服屋だ、ここらでまともな服屋に行くぞ!!」

 『はいっ!? ちょっと・・・・』


 瓜はされるがままに腕を引っ張られ、外に出されてしまいました。尚も引っ張り続けるフィフスに瓜がテレパシーで言いました。


 『あの、フィフスさん。そのお店の場所ってどこかわかるんですか?』

 「知らん! 知らんが探す。とっとと契約を終わらせるために・・・」

 『そんな当てずっぽうな!!

  それに、またその姿を誰かに見られたら今度は何と言われるか・・・』


 それを聞いたフィフスは急に立ち止まりました。瓜はその勢いに止まりきれずこけかけたが、フィフスが腕を引っ張りそれを防ぎます。


 「そうか、この世界には鬼はいないんだったな。」

 『鬼どころか、魔物というのがいないのですが・・・』

 「仕方ない、こうするか。」


 そう言うとフィフスは瓜をつかんでいた腕を放し、己の気を集中しました。すると、突如彼の足下から炎が発生し、瞬く間にそれが全身を包み込みましだ。


 『!? 大丈夫ですか、フィフスさん!!』


 瓜の心配をよそに、その炎が消えていきました。するとそこから、角が消え、肌の色が日本人と同じになったフィフスが現れました。


 「よし、まあこんなもんか。」

 『ン!? チョ!!? フィフスさんですか? その姿は一体・・・』


 突然のことに驚いている瓜にフィフスが教えました。


 「<擬態変化> その場に溶け込む為に使う特殊術だ。」

 『は、はあ・・・』


 それを聞いて瓜は思いました。




 『そんな能力があるならこないだの時もそれを使えば良かったのでわ・・・』 ・・・と。



____________________



 そんなこんなで始まった瓜の服探し旅。歩き回って服やを見つけるたびにフィフスによって選ばれた服を試着します。


 「ど、どうでしょうか・・・」


 まともな赤のトップスに黒のスカートといったかなりシンプルなセットでしたが、瓜はそれを無自覚ながら着こなしていました。そしてその様子を見たフィフスは率直に思いました。




 『 かわいい!!!! 』 ・・・と。




 『あ、あの、どうかしましたか? フィフスさん。』

 「あ~すまん。な、なかなかいいな。正直思っていた以上だ。」


 瓜が次の服に着替えている間に、フィフスは少し緊張を解きました。すると彼の顔には大量の汗が流れてきます。


 『<かわいい>だと? 俺があいつに思っているのか? いやいやいやいやそんなことはない、確かに服の着こなしは予想以上だからといって、んなことは・・・ ない、はず・・・』


 そのときフィフスの脳裏にある光景が思い浮かんだ。小さい頃の自分が、もう一人の子供と会話をしている。



____________________



 「フィフスってさあ、好きの子っているの?」


 ふと彼女が聞いてきたことに、フィフスはこう答えました。


 「う~ん、俺はいっぱいいるな~」

 「エッ!? いっぱい!!?」

 「父さんに母さん、姉貴や兄貴・・・」

 「ちょっとちょっと待って、そう言うのじゃなくて、恋愛の方でよ。」


 それを聞いてフィフスは顔にしわを寄せて悩んだ。


 「う~ん、そう言うのって違うのか? 好きに種類なんて無いだろ。」

 「クスクス、フィフスはまだまだ子供っぽいわね。」

 「うるせえ、同い年のくせに。」


 隣にいた少女がクスクス笑っていたのを抑え、ムッとしているフィフスに言いました。


 「こう、胸がドキドキしたら、それが好きってことよ。覚えときなさい。」

 「胸はいつでもドキドキしてるもんだろ?」


 天然でそんなことをいうフィフスに少女はため息をついていました。



____________________



 頭の中でそのことを思い出したフィフスは安堵しました。


 『フッ、大丈夫だ。いつもより少し動悸が早いだけだ。異常はない。』

 『あの~、フィフスさん・・・』

 「・・・!?」


 瓜に声をかけられてフィフスは我に返りました。そして目の前を見ると、水色のリボンがついた白いワンピースを着ていた彼女がいました。


 「あ~いや、何でも無い、それより・・・ ッン!」


 話の途中で突然フィフスの顔が険しくなった。瓜はそれを見て心配になります。


 『フィフスさん?』





 「スマン、会計を済ませろ。悪いが服選びは中止だ。」

 『エッ? エーーーーーーー!! どうしたんですか、』


 焦る瓜をよそにフィフスは急いで店を出ました。


 『ちょっと、フィフスさーーーーん!! あ、お会計!!』


 瓜も慌てて会計を済まし、フィフスを追いかけていきました。


 ※ちなみに服を買う代金は瓜が払いました。 『思わぬ出費です・・・』




 フィフスは険悪な表情はそのままに建物の屋根の上を身軽に走っていました。さすがに瓜のことがあるのでスピードに制限をかけてはいましたが、それでも一般人の瓜にはかなりしんどい速さでした。瓜は息をあげながら走り、フィフスに質問しました。


 『どうしたんですか突然!? すごく急いでるように見えますが・・・』


 そこにテレパシーで返事が来ました。


 『  ・・・ 魔力を感じる。』


 『え!? どういうことですか?』


 二人は走りながら会話を続けます。


 『<魔力>は、俺が元々いた世界においての活動エネルギーだ。術を出すときはそいつが放出され、俺はそれを感知できる。』


 それを聞いて瓜も理解しました。


 『それって、まさか・・・』

 『俺と同じ世界から日本(こっちの世界)に来たやつがいるってことだ。しかも、えらく大きめに出てやがる。派手に何かやってるようだ。』

 『まずいじゃないですか!!』

 『ああ、だから急いでる。』


 しかしそのとき、会話に集中していた瓜は前方の注意をおろそかにしてしまい、すぐ後の曲がり角で右から来た人とぶつかってしまいました。


 ドンッ!!


 そのまま二人は尻もちをついちゃいました。相手の男性が立ち上がり、瓜に声をかけてきました。


 「あ、大丈夫?」

 「イタタ・・・ ハッ!!」


 瓜はフィフスがそのことに気付かずに走って行くのを見て、急いで立ち上がりました。そして相手に断りだけ入れ、また走り出しました。


 「ス、スミマセーーーーン!!」


 そうして走り去っていく瓜を見て、彼は思いました。


 『かわいい人だなあ・・・』


 その後しばらくして、フィフスがまた突然足を止めた。瓜はそこになんとか追いつき息を整えたが、その前方を見ると、とんでもないことになっていた。


 「嘘・・・」

 「おいおいまじか・・・」


 そこには、今も激しく燃え続けているビルがありました。周囲の人もかなり集まってきています。そして・・・


 「誰か、誰か助けて・・・」


 そのビルから、職員らしき人が出て来た。警備をしている警官をすり抜け、フィフスはそこに近づき、質問しました。当然警官は止めに入ります。


 「ちょっと! 君!!」

 「オイ! 中で一体何があった!?」


 職員はおびえて混乱しながら話しました。


 「化け物だ・・・ 体のでかい化け物が、突然現れて・・・」

 「化け物? まさか!」


 すると、足音をあげながら、何者かがビルから出て来ました。瓜はそれを見て驚愕し、フィフスは苦い顔をしました。


 「チッ、イヤな方の予想が当たったか・・・」



 「フーーーーーーーーー・・・」


 そこにいたのは紛れもなく、フィフスと同じ異世界の魔人でした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 瓜のお気に入りのメーカー<GRB>


他の店にはない個性的なオリジナルファッションを売りにしています。


文字Tの例         <我々は宇宙人だ!!>

              <  満   足  >

              <ドレスが無いならTシャツを着ろ!!>

              <愛と善意の伝道師>


瓜『全部私のお勧めです!』

フィフス『まずはこの思考回路を変えないとな・・・』




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