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第76話 一匹のキメラ

 フィフス達は今、さっきまでのナンパ行動を一旦打ち止めにし、魔道書を自分の鞄にしまって一直線に走っています。その中で、フィフスはグレシアに聞きます。


 「グレシア、方角は合ってるか?」

 「ええ、水晶の反応が強まってる、このまま進むわよ。」


 つい先程、グレシアが鞄に入れていた水晶が光り出したのです。魔人の出現を知った彼らは魔人は自分の足で、人間は大きくなったユニーに乗っかって、人目につかないようにしながら走り、広い公園の敷地に足を踏み入れました。


 「えらくだだっ広い公園ね。ここじゃ隠れて行動なんて出来なさそうだけど・・・」

 「隠れる能力があるのかもしくは・・・」


 フィフス達が走りながら周りをキョロキョロと見回していると一方向から、次々と人が走っていくのが見えました。


 「何だあれ?」

 「一方向から来てたわね。」

 「「「まさか・・・」」」







 先に走っていた魔人三人が揃って一方向に首を捻ると、そこにわかりやすく暴れている魔人の存在がありました。


 『『『いた!! まさかのど真ん中に・・・』』』


 術は使っていないようでしたが、その魔人は腕っ節で派手に暴れていたので、それによってランニング走者やピクニック客が津波のように逃げていきましたが、その一部が逃げ遅れてピンチになっていました。


 「ったく・・・ 土蜘蛛のときといい隠れる気あんのかよ!!」


 先頭にいたフィフスが先に仕掛けようと、事前に鞄から出して腰に据えていた剣を引き抜こうとしました。しかし・・・


 ブーーーーーーーン!!!


 そんな彼らの耳元に、遠くから近付いてくるエンジン音が聞こえて来ました。聞き慣れないサードは疑問を浮かべている表情でしたが、残りの二人は分かっていたからこそ驚きました。


 『どこから・・・』


 そんなことを考えてる間に、相手の魔人は尻餅をついていた人に向かって殴りかかっていきました。


 『流石にマズいか!!』


 フィフスは瞬間移動を使って魔人の攻撃を受け止めました。その事に相手が驚いていると、突如横からバイクが突撃し、それによって吹っ飛ばされてしまいました。


 『やっぱり、『バイク』とか言う鉄の馬か。』


 逃げ遅れた男もすぐに立ち上がって逃げていき、一安心したフィフスは剣をしまいました。突撃した後すぐにバイクを止めたその男は、被っていたヘルメットを外して彼を見ました。


 「お前は、今朝の・・・」

 「なんでここにいやがる。」


 経義はバイクから降り、眉間にしわを寄せながらもこう言葉をかけました。


 「まあいい、助けてやるから速く逃げろ。」

 「ハ!?」


 フィフスが彼が何を言っているのかと戸惑っていると、経義は数歩前に出て左腕の袖をまくりました。すると、独特な形をした腕時計が出て来ました。経義はそれについていたスイッチの一つを押し、こう言いました。



 「召着(しょうちゃく)


 すると、突如上空から光の筒が降り出し、経義の体を包み込みました。そこから光の粒が彼の全身にまとわりつき、更に強い光を放ちました。


 そのまぶしさにフィフスが一瞬腕で目を覆い、それを離すと、そこには光の筒が消え、特殊なパワードスーツを着込んだ経義が立っていました。


 初めてというか、かなりのぶっ飛んだものを見たフィフスは思わずこんなことを口にしていました。


 「・・・ 俺、出る作品間違えたか?」


 飛ばされた魔人が立ち上がるのを見た経義は、背中に携えていた大剣を右手で取り外し、相手に向かって刃先を向けました。フィフスに合流したグレシアが驚きます。


 「あんな巨大な剣を軽々と!?」

 「もう訳わかんねえな。」


 煙が晴れ、相手の魔人の姿が見えてきました。


 「エエイ、何だ今のは・・・」


 痛がりながら、その魔人は顔を上げ、フィフス達にもそれが見えました。


 『オークか、乱暴なのも納得だな。』


 しかし完全に煙が晴れてそこにいたのは、フィフス達も今まで見たことの無いオークの顔が縦三つに並んでいるキメラでした。


 「「「何だあれは!!?」」」


 その大きな声が聞こえたキメラオークは怒って反応します。


 「うるせーーーー!! 俺達だってこんな姿になんかなりたくなかったわ!!」

 「俺『達』?」


 すると、さっきしゃべっていた顔の下にある顔二つもしゃべり出しました。


 「ああ、そうだ! だまされたんだい!!」

 「あぁ~クソが! クソがーーー!!」


 そう様子に魔人三人がコソコソと話し合います。


 「なぁ、オークってあんなんだったっけ?」

 「いや、アタシの知る限りではオークでこれは初めてだわ・・・」

 「しかも、あれ飾りじゃ無いんだ・・・」


 キメラオークが暴れていたのは、自分の体の状態に対するストレスからだったそうです。彼らは今だバイクにひかれたことは二の次に叫び散らしています。


 「アァーーーーーー!!! カオスの野郎、許さねえ!!!」


 フィフスとグレシアは彼らの叫んだ言葉に少し動いて反応しました。


 『やっぱ仮面野郎(アイツ)つながりか・・・ ならほっとくわけにはいかねえな。』


 まずはとフィフスが一歩前に出ようとすると、その前に経義が先に走り出しました。対決する二人は今にも攻撃が当たりそうです。


 「アイツ!!」


 フィフスは自身の足で瞬間移動ほどでは無いが速く走り、変化を解いて二人の互いに向けた攻撃を防ぎました。


 「ったく、あっぶね~な・・・」


 そのとき、経義は初めて鬼の姿のフィフスを見ました。


 「!? お前、まさか・・・」


 五人の間に、緊迫した空気が流れました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・グレシアの水晶


 グレシアはフィフスと違い魔力による位置探知が出来ないため、相手を見つけるために水晶を使います。自身の魔力の込めながら言葉を発することで多少の設定が出来、フィフスの探知が出来ないように調整しています。


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