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第73話 手違い

 読者の諸君、皆大好き魔王子フィフスだ。新章が始まって一向に俺達が出なくて焦っていたと思うが、今回からちゃんと登場するから安心して読んでいってくれ。

 あれから数日たち、フィフス達が異世界から日本に戻ってきていきなり色々と問題が起こりました。



 ・連日無断欠勤をした学校への誤魔化し


 ・娘の行方不明に飛んできたおやっさんとの修羅場


 ・さらには家賃の滞納による家の追い出されかけ


 ・・・と騒動には事欠かなかったのですが、今のフィフスと瓜にとって一番の衝撃的な出来事は、現在進行形で目の前に起こっていることでした。










 その対象は今、目を輝かせています。


 「キャーーーーーー!!! 何あの動く箱!!?」


 あるところでは道を走る自動車に驚き、またあるところでは・・・


 「キャーーーーーー!!! 何あの階段!!?」


 買い物先のエスカレーターに驚き、終いには・・・


 「キャーーーーーー!!! 何この道具達!!?」


 瓜の家にある家電類々に間近にまで顔を近づけて見ていました。流石に対応に疲れたフィフスは、文句を口に出します。


 「いいがげん落ち着いてくれよ、姉貴・・・」


 言葉を聞いてその対象、『サード』は容赦無くフィフスの胸ぐらを掴み上げました。彼の肩に乗っかっていたユニーは落っこちてしまいます。瓜はすぐにそれを受け止めました。


 「オイ愚弟! いくら異世界でも言葉には慎みなさい!!」

 「グゴッ!!・・・ わかった、わかりましたから離してください姉上!!」

 「アワワワワ・・・」


 サードは気を落ち着かせ、フィフスを降ろしました。


 そう、先日異世界から日本に戻る際、移動する前の一瞬の隙を突いて彼女はルーズを魔法陣の範囲からどついて追い出し、代わりに自分が成り代わったのです。


 それもこれも、彼女が瓜のいた世界を知りたいという興味が発端でした。


 このことにより、予定していたフィフスの算段は狂い、その上に、彼にとって味方陣営の中で一番厄介なのが自由に放たれているという状況に頭を抱えていました。


 そして本日は、そんな彼女たっての希望によって、彼らはグレシア達も巻き沿いにスポッチャに来ていました。


 「いやぁ~・・・ 凄いわね、ウリ-ちゃんの故郷。ビバ! 異世界!! 最高かな!! 異世界!!! イエーーーイ!!!」


 「「「「イ、イエーーーイ・・・」」」」


 初めて見る一風変わった町並みにテンションが上がっていたサードに対し、連れ回されたフィフス達は始まる頃には既に疲れていました。


 「ハァ・・・ すみません・・・ 志歌さん。」

 「いいのよ、一国の姫に何かあったら、それこそとんでもないし・・・」


 自分も王家なのに氷放とうとしてきたくせにと内心フィフスは思いましたが、騒動の上に更に面倒ごとを重ねたくなかったので、黙っておきました。


 そこから先は、サードに連れられた女性陣は楽しんでいました。




・テニス


 サードから打たれる強力なショットを、相手コートにいた平次の顔面に直撃しました。そのショックに態勢を変えないまま倒れ込んでしまいました。


 「メガネ!!」

 「オラオラ! ちゃんと玉ぐらい返してきなさい!!」

 「あ・・・ ああ・・・」


 平次はピくりと苦しそうに動きました


・サッカー


 サードは女性陣に優しくパスを渡します。


 「魔女っ子ちゃん!」


 綺麗にそれを受け取ったグレシアは、ゴール付近にいた瓜にパスを送ります。しかし運動神経のあまり良くない彼女は、走っている最中にスッ転んでしまいました。


 ファサ・・・


 そのとき、一瞬だけ男性陣二人にセンスの悪いパンツがもろに見えてしまいました。二人は全く違う感想を言い出します。


 「ま、町田さんの・・・!!!」

 「ケツに『ケツ圧』って書かれてたぞ・・・」


 すると・・・


 ガシッ!!


 二人は後ろから、殺気の圧のこもった腕に肩を掴まれました。


 「オイ!」 「アンタら・・・」


 「「ギイヤーーーーーーーーーーーーー!!」」



・バッティングセンター


 飛んでくるボールの速度を決め、グレシアはそのボールを打っていきなりホームランを成功し、意気揚々としています。


 「フフン、まあ当然ね。」


 すると、後ろでそれを見ていた包帯姿のフィフスは、その包帯を取り払ってグレシアの隣のブースに入りました。そして彼女より速い球を設定してそれで軽々とホームランを決めてみせました。


 「「「オオッ!!」」」

 「ムッ・・・」


 すると反抗心を燃やしたグレシアは、ボールの速度をフィフスのより更に上げ、それでホームランを決めました。そして彼女はフィフスの方を向いてわかりやすくどや顔をしました。


 「フフンッ・・・」


 それを見たフィフスは再び設定マシーンに近付き、さっきのグレシアよりもボールを速い速度に設定し、見事ホームランを打ちました。


 「・・・」


 ジト目のままフィフスはグレシアの顔を見ます。グレシアはまたふてくされた表情になって機械に向かって行き、また玉の速度を上げて打ちます。これに負けじとフィフスの方も、玉の速度を上げて打つ。この単純な作業を二人は何度も繰り返していきました。 


 「フンッ!」 「フンッ!」

 「フンッ!!」 「フンッ!!」

 「フンッ!!!」 「フンッ!!!」

 「フンッ!!!!」 「フンッ!!!!」


 白熱している二人の戦いに後ろの三人は楽しんでいます。


 「すげ~と言うか、もうメジャーリーグの速さだろあれ。」

 「ハハハ・・・ 何だかんだで『ライバル』・・・ なんですね・・・」

 「ほらフィフス! さっさと負けなさいよ!!」


 しかしその戦いは、思わぬ形で収束することになりました。二人がやっている横に、一人の別の客が入ってきました。そして彼は速度を設定し、定位置につきました。


 『ッン?』

 『別の客か?』


 新しく入ってきた彼に何の気なしに興味を持ったフィフスとグレシアは、一旦勝負を止めてその様子を見ます。



 シュン!!



 カキンッ!!!


 すると次の瞬間に五人が見たのは、二人よりも更に速い速度のボールを易々とバットで打ち、それでホームランを決めている様子でした。


 「「ナァッ!!?」」


 二人が同時に衝撃を受けていると、ブースの外から彼に対する拍手と声が聞こえてきました。かれもそれに答えます。


 「お見事です、若様。」

 「褒めなくていい。こんなこと、できて当然だ。」


 これが、フィフス達と経義達の出会いでした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 その頃の魔王城


 それぞれが事情「主にサードのせい」によって怒りながら執事二人が城の雑用をこなしていました。


ルーズ「ホ~ントあの姫様には色々とやってくれますね・・・」


キンズ「その尻を拭うのは誰なのか一度ちゃんと分かってほしいものですね・・・」


 後ろにいたセカンドがその剣幕な雰囲気に冷や汗を流していました。




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