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第71話 若様

※ご覧の作品は「魔王子フレンド」で間違いありません。気にせずにお読みください。

 そこは日本。彼らの全く知らないとあるお屋敷の中。


 一人の若者が、だだっ広い部屋のテーブルに並べられた料理を食べながら、優雅な音楽を聴いています。そこに、一人の歳を取った、しかし肉体はとても若々しく感じられる男性の執事が入り、彼のすぐ側まで寄りました。


 「若様、デザートをお持ちしました。」

 「ああ、そこに置いておけ。」


 彼からの軽い返事にもにこやかに頷きながら、そっとテーブルにデザートを並べました。


 少ししてメインディッシュを食べ終わった若者が、早速運ばれたデザートに手を出そうとすると、腕にスプーンが当たってしまい、そのスプーンを床に落としてしまいました。執事はすぐにそれを拾い上げます。


 「ご安心を、すぐに代わりのものをお持ちします。」


 すると若は顔の向きを変えずに冷めた声で言いました。


 「・・・ それは捨てろ。」

 「・・・ ハイッ?」


 執事は彼の言っていることに一瞬理解が追い付きませんでした。


 「しかし、これは我が家に代々使われた銀食器で・・・」

 「たかが食器の分際でこの俺の手から離れるとは・・・



  ・・・ 頭が高いにも程がある!! すぐに捨てろ!!」

 「は、ハイッ!! かしこまりました。」


 執事は若の罵声を受けてすぐにスプーンを捨てに走り、帰りに代わりの食器を取ってきました。若は特に礼を言うことも無くそれを手に取り、パッパとデザートを食べ終わりました。


 完食した若は、執事に聞きます。


 「弁、さっきの反論はお前だから水に流してやる。だが改めて聞くが、この俺が誰だか分かっているのだろうな?」


 そう言われて執事こと『武蔵(むさし) (べん)』は説明口調で答えました。


 「もちろんでございます若様。貴方様は平安の世から続く貴族の家柄『牛若家』の末裔でおられます、『牛若(うしわか) 経義(つねよし)』様にあらせられます。」


 そう言われて経義は満足げな表情になります。


 「そうだ。だからこそ弁、いくらお前とて次同じことをすれば許さんぞ。」

 「・・・ 肝に銘じておきます。若様。」


 そうして理不尽な謝罪をしていると、その部屋の電話から着信音が鳴り響きました。音に間を挟まれた経義は不満そうな顔に戻り、急いで弁がそれを拾います。


 「はい。牛若でございますが・・・」


 電話の内容を聞き終えた弁は、足早に経義の隣に戻り、こう言います。


 「若様、お食事後すぐに申し訳ありませんが、『お仕事』です。」


 それを聞いて経義は表情が険悪に変わり、ナプキンをとって立ち上がりました。



_______________________________________


 人気の無い道路に、全く似つかわしくないリムジンが走り去ります。その中には、先程の二人がいました。弁が運転し、後ろの席で経義が物思いに拭けています。


 すると、突然横断歩道の無い所に歩行者が横切り、いきなりのことに弁はブレーキを踏んで車を止めますが、少し相手に当たってしまいました。


 「何だ!?」

 「すみません若様、トラブルです。」

 「ほう・・・」


 当たった相手はとても痛がっています。


 「イッ!! 痛い!! 痛い!!・・・」

 「ああ! 大丈夫ですか!?」


 するとたまたま近くにいた警官によって、相手の男性は介抱されます。そしてやって来たもう一人の警官に窓をノックされ、弁はそこの窓を開けます。


 「あの~、すみません。ちょっとお話を聞かせて貰ってもよろしいでしょうか?」


 弁が一瞬困惑しましたが、すぐにコクリと緊張気味に合図値をします。すると後ろにいた経義が突然ため息をつきました。


 「ハァ・・・ 鬱陶しい。」


 警官は当然彼の印象を悪くします。


 「君ね! この車は立った今事故を起こしたんだよ。少しは反省をだね・・・」

 「そう威圧をかけて金をせびるのが手口か?」


 警官は経義の言った事に首を傾げます。


 「・・・ 何を言いたいんだい? 私は今回の事故を・・・」

 「明らかに向こうから当たってきた事故に、明らかに早すぎるタイミングに刑事が来る。仕込みでも無きゃ無理があるだろ。 弁、警察に通報を・・・」


 言われたとおりに弁がポケットの中のスマホを取り出そうとすると、警官の男性がニタッと不敵な笑みを浮かべました。すると・・・



 ドンッ!!



 という大きな音と共に、車の後方から強い衝撃が響き渡りました。


 「!?」

 「・・・」


 二人が何事かと後ろを振り返ると、後ろの窓には異様な姿をした化け物が息を荒げながら立っていました。


 「ヒッ!! 化け物・・・」


 弁が恐怖に身を縮めていると、事故を受けた男も立ち上がり、三人になって車に近付いてきました。


 「あらら、バレちゃった?」

 「でも知らずにお金払った方が良かったね~僕ちゃん。お兄さん達こんなお友達がいるの~・・・」


 そして後ろにいた被害者の男が首振りで指示を出すと、車後ろの魔人はその硬い爪でリムジンの後ろ窓をいとも簡単に貫きます。


 「若様!!」

 「・・・」


 相手の目的が脅すことだったこともあり、爪は経義の真横ギリギリを通っていました。男達はまた調子よく話します。


 「さあて、お兄さん達も忙しいから、とっとと・・・」



 「頭が高い。」


 「「「ハッ!?」」」


 経義の言った予想外の一言に三人は凍り付きます。


 「俺を誰だと思っている。貴様ら幼稚な愚民の指示に従うとでも? 甚だ考えが幼いことだ・・・」


 「アッ!?」


 経義の安い挑発に男達は乗ります。そして一人が答えました。


 「ちょっと僕ちゃん、調子に乗りすぎのみたいだね~・・・」

 「少し現実を見て貰おうかな。」


 そして男達はまた魔人に指示を出し、今度は少し痛い目を見せようと経義を狙って攻撃させました。



 ザシュッ!!



 そして次の瞬間、そこには血が飛び散りました。



 「カハッ!!・・・」



 ・・・しかしそれは、彼に襲いかかった魔人のでした。魔人が何が起こったのかと前を見ると、窓を突き破って飛び出した刃物が見えました。


 「ナッ!!?」


 男達が驚いていると、次見た時には、運転席に弁の姿がありませんでした。


 「あのじじい! どこ行きやがった!!?」


 すると次の瞬間、三人はいつの間にか死角にいた弁の攻撃を受けて気絶してしまいました。


 「若様、ではどうぞ。」

 「おう・・・」


 弁からの言葉を受け、経義は車から降りました。しかしその姿はさっきまでの服とは全く違い、機械的な印象の鎧、いわば『パワードスーツ』のようなものを着込んでいました。


 彼はそこから、顔を覆ったヘルメットを通した機械的な音声の声で話し出します。


 「そっちから来てくれるとはありがたい、仕事が早く済む。」


 彼は右手に自分の背丈と同じほどの大きさの大剣を持っています。そしてそれを軽々と振り回し、魔人に向かってその刃先を指しました。


 「先に言っておくが・・・ 俺は強いぞ。」


フィフス「・・・俺の出番は?」

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