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第5話 鬼さんとお友達

 前回、気絶させられて、運ばれていった瓜。そしてそれを遠目に見て出された水を飲んでいるフィフス。


 『やっぱりか。ま、俺にはどうでもいい話だが・・・』


 そのころ、突然客がいなくなったことで中途半端に残った料理がテーブルの上に残っていました。


 「・・・」


 そこに店員が困り顔になってやって来ました。どうやら処理に困っているようでした。


 「いただきます。」



 『急いで片付けないと・・・  って、あれ?』


 店員がそこにつくと、そこには完食された皿だけが残っていました。そのころ丁度店を出たフィフス。なにやら口をモグモグさせています。口の中に入っていたものを飲み込み、フィフスはふと呟きました。


 「ご馳走様でした。 ここにルーズがいたら、今頃キレてるだろうな・・・

                                ・・・さて、」


 フィフスは瓜が連れて行かれた方向を見ました。


 「食後の運動でもするとするか。」



____________________



 瓜がしばらくして気が付くと、どこか薄暗い場所に来ていました。そして目の前にはさっきまで一緒にいた二人と、さらに二人の成人男性がいました。


 『ここは一体・・・』


 目が覚めたことに気づいた二人は話し出しました。


 「あれ、もう目が覚めたの? もうちょっと寝てて欲しかったのにな~」

 「ねえ、さすがにこれはやばいんじゃ・・・」

 「大丈夫よ、どうせこいつは何も言わないんだから。でも、パシリがいないと面白くないもんね~」


 一方がさすがにマズいと思っているのか乗り気ではなさそうでしたが、もう一方は笑いながら続けました。


 「あんた、昨日あたし達の話聞いてたでしょ。バレてないと思った?」

 「そ!! それは・・・ ウッ!」

 『体が痺れて・・・』


 瓜は体が動かなくなっていた。どうやらレストランの飲み物に仕込まれていたようです。


 「別に友達やめようって訳じゃ無いから安心して。」

 「なら、なぜ・・・」


 当然瓜は安心など少しも感じていませんでした。これから何をされるかの恐怖で縮こまっていた。そこに女は瓜に顔を近づけて、印象に残るようにゆっくりしゃべりました。


 「念のためよ、これからもずっと一緒に遊べるようにするだけ。」

 「それって、どういう・・・」


 「いやね、さすがにこのことが学校で言われたら、みんなに優しい優等生のあたしのキャラがなくなっちゃうじゃない。だからこのことを黙っておくって約束して欲しいの。そのために・・・」


 女が合図すると、そこにさらに五人の男が入ってきます。全員揃って見るからに柄が悪そうでしだ。


 「こ、これは・・・」

 「だ、誰この人達!?」

 「フフン、あたしのお友達~」


 女は男達を自分の周りに近づけ何かを話し出します。そしてその内一人の肩を叩きました。そして、戸惑っているもう一人の友人を連れてその場を離れようとしました。


 「じゃ、後よろしく~ ちゃんと動画撮っといてね~・・・」

 「ねえ、これってホントにまずいんじゃ・・・」

 「大丈夫よ。あいつら口が堅いし、動画さえくれたら向こうもへコへコするだろうし・・・」


 そう言って二人は去って行きました。それと同時に残った男達がまだ体の動かせない瓜に迫って言いました。


 「じゃ、お嬢ちゃんも始めよっか。」

 「どうせならもっと美人が良かったけどな・・・」

 「まあ良いじゃねえか、やることやって金までもらえるんだしよ。」


 目の前のことにどうすることもできない瓜は、ただ怯えることしか出来なかせんでした。


 「い、イヤ・・・」


 涙目で力ない声で瓜が言った。当然いつもながら声が小さく、相手に届いている様子はなかった。たとえ届いていたとしても、現状が変わることも無いだろう。瓜はそのことに絶望した。自分のふがいなさ、薄々気づいていたのに、彼女達との関係を続けていた私自身の自業自得と・・・


 もうどうにもならないと彼女が諦めかけたそのとき・・・


 「おじゃましまーーーーーーーーーーす。」


 突如一帯に聞こえた声に男達が振り返ると、そこにはフィフスが堂々と肩幅まで足を広げて立っていました。


 『あれって、もしかして・・・』

 「あの~、こんなところで集団で何してるんですか? 」


 きょとんとした表情でフィフスが聞いた。男達のうちの一人はヘラヘラしながらフィフスに近づきます。


 「いや~すいません。ちょっとトラブルがありましてね・・・」


 そして男は言葉を切ると同時にフィフスを思いっ切り腹パンをしました。


 「なんも見てないよな!!」

 「丁度良い、こいつに責任取らせようぜ。」

 「自分からくるなんて馬鹿なやつ。」


 殴られた勢いでフィフスはかぶっていた帽子が落ち、隠していた角が見えてしまいました。


 『やっぱり、昨日のことは夢じゃ無かったんだ・・・』

 「おいなんだこいつ変なの生えてるぞ。」

 「これって角じゃね?」

 『マズい・・・』

 「に、逃げてください!!」


 瓜はできるだけ大きな声で危険を伝えた。しかしそれも間に合わず、為す術も無く殴られるフィフスでした・・・       が・・・


 「・・・ オイ。」

 「ア? 何だてめえ。」

 「こちとら昼飯食った直後なんだ・・・ 痛えだろが!!」


   ドスッ!!


 言い終えた瞬間、フィフスは殴ってきた相手を同じく腹パンを仕返し、一撃でダウンさせました。


 「グハッ!?・・・」

 「ハッ!?」

 『えっ・・・』


 動揺している周囲に対し、彼は襲いかかってくる相手を次々と軽くあしらっていました。


 「てめ・・・カハッ・・・」

 「やろう・・・ グヘッ・・・」

 「ふ~ん、威勢の割には雑魚ばっかだな。こないだの百人組の方がまだ個人でも強かったぞ。」


 バキッ!! ベキッ!! ボキッ!!


 『これってやり過ぎでは・・・』

 「俺は今機嫌が悪いんだ。だが安心しろ、今回は半殺しでとどめておいてやる・・・」

 「ヒッ、 ヒィーーーーーーーーーーーーー!!」


 大柄な男達を全滅させ、フィフスは瓜のもとへと行きました。


 「よう、随分盛り上がってたな・・・」

 「あ、ありが・・・」

 「ア? 聞こえん!!」

 「ありがとう・・・ ございます・・・」


 瓜は珍しく言葉でお礼を言った。しかしフィフスはそれに素っ気なく返し、絶賛伸びている男達の方を見ます。


 「俺はただ、メシを無駄にするやつが嫌いなだけだ。師匠(せんせい)が言ってた。食事は日常で大切な儀式。それを冒涜することは、決して許してはいけない・・・ と」

 『ま、また師匠(せんせい)・・・』

 「よし後は・・・」



 そのころ、場を離れて歩いていた二人。


 ピロリン!!

 「あ、メール、動画撮り終わってのかな・・・」

 

 しかし、そこに映っていたのは・・・


 頼んでおいた男達が全員土下座している様子でした。


 「は? 何これ・・・」


 続いてそこに電話がかかってきました。女はスピーカーモードにしてつなげました。


 「・・・ もしもし?」

 「どうもどうも、そちらさんが今回の首謀者ですか~」


 そこからは、二人が知らない男の声が聞こえてきました。


 「あんた、誰?」

 「今回のことを一部始終見させてもらったもんで~す。」

 「・・・ 何のことかしら?」

 「レストランで起こったことに覚えがあるだろ。女子一人に集団リンチしてたことのな・・・」

 「何よそれ、そんなこと知らないけど?」

 「録画してるとしても?」


 一方が微かに動いた。だがふっと笑いました。


 「嘘が上手ね。でも残念、そんなことしたって意味ないわストーカー。あいにく怖い友達は他にもいるの。そうしようとしたら、瓜はどうなるだろうね~」


 隣にいた友人がゾッとした。フィフスは黙り込んでいる。笑っている彼女だったが、聞いている音に違和感に気付いた。


 「何この音、小さいけど、聞こえてくる・・・」


 そしてその音が段々大きくなる。というより・・・


 「この音、スマホじゃなくて直接聞こえてくる?」



 「オーーーーーーーーイ! 聞こえますかーーーーー?」

 「!?」


 二人が声のする方へ顔を向けると、そこにはニッコニコな笑顔を振りまいているフィフスが迫ってきている様子があった。しかも・・・


 「ギイヤーーーーーーーーーーーーー!!」

 「誰か助けてーーーーーーーーーーーーー!!」


 「何よ・・・ あれ・・・」


 そのフィフスの右手の上には、さっきまで瓜に仕向けていた男達がロープでグルグル巻きにされて軽く運ばれていた。目の前にあるあまりにも異常な光景に二人が絶句していると、


 「お二人さん、忘れ物だよ!!」


 フィフスは抱えていた男達を二人の少し手前に投げ込み、地面にめり込ませた。


 「え、え、え?」


 そして二人は再びフィフスの方を見た。しかしそこには誰もいなかった。


 「どこ行ったの?」

 「やっほ。」

 「!!?」


 気付くとフィフスは二人の真後ろにいた。


 「で、怖い友達が何て言った?」

 「あ、いや・・・」

 「ま、しょうも無い嫌がらせをやるならやってみろ。次やったら・・・」


 フィフスはロープをばらして男達を次々殴り、地平線の彼方へ飛ばした。そして極めつけにドスのきいた声で言った。


 「お前らもこうなると思っとけ!!」

 「ス、スミマセンデシターーーーーーーーーーーーー!!」


 女二人は勢いよく去って行った。フィフスがそれを確認すると言った。


 「もう出て来ていいぞ。」


 すると、二人の死角にいた瓜が出て来た。


 『あの、ありがとうございます。わざわざ麻痺まで解いてもらって・・・』

 「俺はお前と離れられないからな。にしても・・・」


 フィフスは頭をかきながら瓜の方を向いて続けます。


 「お前も運が悪いな。ここまでするやつはそうなかなかいないぞ・・・」


 それに瓜はこう答えました。


 『私の、自業自得なんです・・・』

 「?」


 『私は、小さい頃から一人になるのが怖かったんです。でも、話し下手だし周りに合わせられない・・・ 薄々気づいていても、ものを言う事もできない。今回のことはそのせいで起こったんですから・・・』


 自分で言ってて更に気が落ちていく瓜。それを見たフィフスはふと思った。


 『一人になるのが怖い。ね・・・』



____________________



 フィフスは少年の頃の記憶がよぎった。


 「あいつ王子だろ。」

 「仲良くしとこうぜ。」

 「仲良くなったら将来結婚かも・・・」

 「プリンセスって、最高よね~」


 そんなことを影で言っていた周りの貴族の子供にフィフスは嫌気がさした。


 『誰も、俺を見てくれない・・・

   みんな、俺を魔王の息子としか見ない・・・




           俺は、一人だ・・・』



 「信じてるから・・・」



____________________




 記憶を振り返ったフィフスは、ため息をついた。


 「・・・ 仕方ない。」


 そして彼は真っ直ぐな視線を送り、瓜にハッキリとこう伝えました。


 「なら叶えてやるよ・・・」

 「・・・ エッ?」

 「だから、お前の願いを叶えてやるっつてんだ!! コミュ障女にまともな友達、わんさか作ってやる!!!」

 「い、良いんですか?」

 「帰る方法が見つかるまでの間だけだ。それでならやってやる・・・ それまでは俺が、おまえの友達になってやる!!」


 そのことを聞いた瓜は、その場で滝のような涙を流しました。


 「お、おい! どうした?」

 「あ、・・・」

 「あ?」


  カチャ・・・


 「ありがとうございます!!!」


 そのとき、瓜は涙を拭くために眼鏡とマスクを外しました。するとそこには・・・


 『ッン!?』


 まるで漫画のヒロインのような容姿の彼女がいました。


 『マジかよ!!・・・こいつは・・・』

 「ど、どうかしましたか?」


 つい見とれていたフィフスでしたが、声を聞いて我に返りました。


 「ああ、いや・・・ お前って、素顔めちゃくちゃかわいいんだな。意外だったから驚いた。」

 「素顔? ・・・ ハッ!!」


 フィフスを直視していたことに気づいた瓜は、急いで顔を元に戻します。相手を久々に直視したことに恥ずかしがっているようでした。


 『こいつはめんどくさそうだな・・・ だが、人間と友達か・・・』



 「信じてるから・・・」



 『・・・悪くない。』


 そうしてフィフスは瓜との契約を認めました。


 「おら、いい加減泣き止め。」

 『ス、スミマセン・・・』

 「さ、帰るぞ。寝床も決めてもらわないとな。」

 『そ、そうですね・・・ 物置にしてた部屋ならありますが・・・』

 「え、まじ・・・」


 そのとき、瓜は嬉しくこう思いました。






 『お母さん、私、本当に鬼さんと友達になりました・・・』







____________________



 そこから離れた、人気の無い裏路地に不良達をけしかけた女が機嫌を悪くして歩いていました。もう一人の友人とは先ほど別れたようです。


 「くそっ! あの変な男さえいなければ・・・」


 苛ついてあてもなくさまよっていました。


 「あ~もう、今度買おうと思ってたカバンも、パシリがいないんじゃご破算だわ。でも欲しいし・・・ (サイフ)さえあれば・・・」



 「お困りの用だね・・・」

 「そうよ、大体こっちは・・・ って、エッ?」


 女が気付くと、いつの間にかそこには自分の見知らぬ青年が立っていました。


 「だ、誰あんた・・・」

 「大丈夫、長話はしないさ。ただ・・・」


 男は背中で隠していた右手を出します。そこにはある物がもたれていました。それは・・・


 「君の願いを叶えに来たよ・・・」


 瓜の物とは色の違う、<契約の魔道書>でした。

<魔王国気まぐれ情報屋>

その日のSNSで見られた画像


 五人の成人男性が綺麗に横並びになって頭からめり込んでいっている様子・・・





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