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第67話 帰りたい?

 フィフスの言い出した提案は、当の対象である瓜の一言によって止められてしまいました。サードもそれに便乗します。


 「そうよ! せっかく帰ってきたのにもう行っちゃうわけ?」

 「あねk・・・ 姉上が心配しているのは瓜と会えるかどうかだろうよ。」


 二人の会話に瓜はまた顔を下に向けて黙っています。自分から続きを言いそうになかったのでフィフスは自分から聞くことにしました。


 「どうした? お前も帰れて嬉しいんじゃないのか?」


 『でも、フィフスさん、せっかく帰ってきたのに・・・ これでは・・・』


 瓜は、偶然とはいえせっかく元の世界に帰って来られたフィフスに、これ以上迷惑をかけないために自分もここに留まるつもりだったのです。


 『フィフスさん、貴方はせっかく故郷に帰れたんです。それに、一国の王子が直々にまたそんな・・・』


 色々と思った事を率直に言う彼女にフィフスは直球でこう返して言いました。


 「お前は、帰りたくないのか? 故郷だろ。」


 その言葉に瓜は拳を握りしめて、話すことに詰まってしまいます。


 「あ!・・・ いや、それは・・・ その・・・」


 そのときのフィフスはなんとなく彼女の意思を察していました。


 彼女は、自暴自棄になっていた自分の身勝手な行いのせいで、彼に右も左も分からない世界に連れてきてしまったことを後悔し、こうして帰ってきたことにどこか安心していました。


 それがまた元に戻ってしまえば、制限も復活し、また彼に自分の存在がために迷惑をかけてしまうと思っていたのです。


 『ここなら契約の制限もなく、貴方にとって安心して暮らせる場所なんです。私のことは良いですから、ここに残ってください・・・』


 瓜から伝えられたテレパシーを、フィフスは黙って聞いていました。そして一通り聞き終えると、緊張感もなく耳の穴をほじってジト目になりこう言い出しました。


 「・・・ お前、何言ってんだ? 俺は『異世界(あっち)』に行きたいから行くんだよ。ただそれだけだ。」


 瓜はフィフスの言ったことに反射的に反応し、無意識に顔を上げて彼の顔を見ました。その表情はもう自分が何を言っても聞かないことを表していました。


 『で、でも・・・』

 「それにお前は一つ勘違いをしているぞ。」

 『勘違い、ですか?』


 「別にてめえの為じゃねえよ。こうして俺やグレシアがいない間に、向こうの世界では、カオスによって仕向けられた魔人達が暴れているかもしれないんだ。


 ・・・ 今の政策として、魔人による他国への理不尽な武力行為は決して許しちゃいけないんでな。王子である俺が止めるのが責務なんだ。そのついでにお前を連れて帰るって言ってんだ。」


 『・・・』


 瓜は彼にそんなことを言われると、もう何も言えなくなってしまいました。そんな二人を見てサードは内心でこう思います。


 『分かりやすいというか、誤魔化しきれない嘘ついちゃって・・・ 』


 サードはここ最近、城で見てきたフィフスの様子を思い出します。そこから更にこう思いました。


 『・・・ アタシ知ってんのよ。アンタがこの帰還の最中、彼女のことを気にしてたこと。』


 そのとき、彼女は腕で隠して周りには見えないでいましたが、フッとその顔は笑顔になっていました。そうしてすぐに表情を戻したサードは瓜にこう言います。


 「だってさ。こいつ、昔から言いだしたら聞かない奴だから、もう反論しても無駄よ。」


 そこにセカンドやルーズも少し噴き出しながら便乗して話します。対してフィフスはムッと顔を悪くします。


 「フフフ・・・ 確かに、フィフスは人の話を聞きませんね。そうして子供の頃に修理中の床にはまって抜けなくなっていましたし・・・」

 「その上国の宝を勝手に盗んで無くしてますしね・・・」


 「ああ、もううっさい!! 本人の目の前で俺の悪口を言うのは止めろ!!!


  ゲホッ!!・・・ ゲホホッ!!・・・」


 流石に怒った彼は、立ち上がって急に大声を出したことでむせてしまっていました。瓜は自分のことより彼の心配をしました。


 『だ、大丈夫ですか・・・ フィフスさん・・・』


 フィフスはとにかくそれを治そうと、一番近くに置いてあったグラスの水を一気飲みしました。すると落ち着いたのか、彼は再び椅子に座って今度はうつむきました。


 少しして、彼らのテーブルの料理は完食されました。瓜はどうにかフィフスともう一度話が出来ないかと、彼に語りかけました。


 『フィフスさん、私・・・』


 するとフィフスは、うつむかせていた顔を上げて彼女を見ます。その顔はなぜか笑顔でした。


 「おぉ~・・・ 話があるなら、俺の部屋でやるか・・・」


 彼はそう言って椅子から立ち上がりました。瓜は妙な違和感を感じましたが、彼の機嫌を損ねないようにそのままついて行きました。


 二人がいなくなって少しした部屋。さっきのフィフスの様子に、ルーズ達も何か感じているようでした。


 「アイツ、何か変な笑顔してたわね~・・・」

 「一周回って吹っ切れたんでしょうか・・・」


 サードがふとそんなことを感じながら自分のグラスを手に取り、口に付けました。すると、彼女は一つのことに気が付きました。


 「ん?・・・」


 そして彼女はグラスを見ると、突然叫び出しました。


 「アァーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 周りの皆も驚きます。


 「どうかしましたか、姫様。」


 キンズが冷静に近付きます。サードは次にこう言いました。


 「フィフスの奴・・・ これ、飲んじゃったんじゃ・・・」


 そこには、酒を入れていたはずが、いつの間にか空になっていたグラスがありました。部屋にいた全員はそれを見て、揃って目の色を変えます。


 「「「「まさか・・・」」」」


_______________________________________


 その頃の部屋を離れた二人。すぐにフィフスの部屋にたどり着いて、二人は中に入りました。


 「そら、入れ~・・・」


 相変わらずフィフスは変に上機嫌なままです。瓜がどこに座ろうか悩んでいると、フィフスは扉の敷居につまずいて転んでしまいました。


 ズテンッ!!


 「フィフスさん!?」


 瓜は彼に駆け寄ると、フィフスは顔を上げました。しかしそれでも彼は笑顔のままです。


 「だ、大丈夫ですか!?」


 瓜は彼の肩を抱えて立ち上がらせました。


 「ヒヒ、うり~・・・」


 すると彼は次の瞬間、抱えてくれていた瓜の頭をうなじ辺りから持ち、自身の顔を近付け出しました。そして・・・













 次の瞬間そこにあったのは、二人が部屋の中で『キス』をしている様子でした。













<魔王国気まぐれ情報屋>


魔王城 フィフスの部屋


・王家用高級ベット


・木製引き出し


・魔獣の毛皮のカーペット


・作業用の机 椅子


・手作りの本棚


・ユニー用ベット

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