第66話 晩餐
その日の夜、外出を終えた瓜、サード、セカンドは魔王城へと帰還しました。彼女達が城の廊下を歩いていると、扉の開いていた大部屋を見つけました。するとそこには、何やら忙しそうに準備をしているルーズとキンズ達使用人がいました。
「何してんの、アンタら?」
サードがなんとなく二人に聞いてみると、彼女の側近であるキンズがすぐに答えました。
「夕食の準備ですよ。」
その答えに三人は疑問を抱きました。
「夕食って・・・」
「これ・・・」
その準備の量は、一食事の量ではなく、最早パーティーのレベルでした。
「どうしたのですか、これ・・・」
セカンドから聞かれたことに、今度にルーズが答えます。
「さっき王子から頼まれましてね。何でもケリを付ける為の晩餐だそうですよ。」
『ホンッと執事にブラックなご主人様だ・・・』
そのとき、瓜は一瞬見えたルーズの闇を抱えた怒りの目にビクッとしました。それに気付いたのか、ルーズは目を閉じた笑顔になって彼女達にこう進めました。
「すみませんが、少し時間がかかると思いますので、姫様達は一度部屋に戻っていてください。」
瓜は困惑して反応します。
「エッ!? 私も・・・ 手伝いを・・・」
するとそこに足早にルーズが近付き、その笑顔のままに瓜に圧をかけて言いました。
「戻っていてください!!」
「ハ、ハイ・・・」
その殺気がかった圧力に瓜は見事に屈服しました。
『つ、疲れているようですね・・・ それも壊滅的に・・・』
そして残りの二人はお互いを一度見た後、自室にへと戻っていきました。
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その日の夜、キンズのノックによって呼ばれた瓜達は、既に準備を終えていたフィフスのいる食堂へと向かっていきました。
そこにいざ着いて扉を開いてみると、そこには席に座っているフィフスと、それを後ろから殺気のこもった血走った目で睨み付けているルーズがいました。
『す、凄い顔になってます・・・』
なんてことを瓜が思っていますと、ルーズはまた乾いた笑顔になって瓜の方に残像が見える速さで振り向きました。
「来ましたか。ではお席にどうぞ。」
『ホラーのレベルになってます。これ・・・』
暗に圧力のかかった声を聞いて、瓜は抵抗することなく用意された席に座りました。サードとセカンドも、瓜に続いて席に着きます。
用意されたテーブルは意外にも小さく、四人がそれぞれの席に座って丁度の大きさでした。そして食事を始めると、サードは早速この事態についてフィフスに聞きました。
「早く本題を話さなしなさい。アンタのことよ、突拍子のないことを言うのは分かっているわ。」
フィフスは口にしていた料理を飲み込むと、ニッと笑って、彼女の質問に関する答えを端的に話し始めました。
「俺は明日、瓜と共に異世界に戻る。
・・・それを伝えに来た。」
それを聞いた来客はもちろんのこと、ルーズとキンズを除いた使用人達も驚いていました。そして次の瞬間に口々に聞き返します。
「アンタ! 何言ってるのよ!?」
「そもそも、帰る目処は立っているんですか!?」
『やはりそう言いますか・・・ 全く、勝手なことを・・・』
中でも一番驚いていたのは、その異世界からやって来た瓜でした。
『フィフスさん、なんで・・・』
一時多くの質問が飛び交うと、次は返って静かな空気になりました。それを待ってフィフスは再び話し始めました。
「行き方については、さっき親父から聞きつけた。やっぱ知ってやがったぜ。」
「お父様が!?」
「考えてもみろ、俺が行った向こうの世界には、魔物がいないのに人々は『鬼』や『魔女』を知っていた。それも空想上にしてはえらく具体的な形でな・・・」
何かを察したセカンドに対して、サードはピンとこない顔をしています。
「つまり、どういうことよ?」
口をモゴモゴさせて彼女は聞きます。
「つまり、俺達の世界は結構前から『異世界』に関わっていたということだ。ならどうやってそれをしたか。
・・・それ要の出入り口があったってことだ。」
「出入り口!?」
「そんなの、私達は聞かされてませんが・・・」
「そりゃな。親父がこう言ってた。」
そしてフィフスは、魔王との会話の内容を話しました。
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「帰りたいのなら、『ゲート』を使うといい。」
フィフスはいきなり彼の言った事に疑問を浮かべました。
「ゲート、んだそれ?」
「大昔、いつ出来たのかも分からない巨大な石碑だ。そこに魔力に注ぎ込むことで起動し、平行世界への移動が可能になる。」
魔王の説明に、フィフスは異を唱えました。
「ちょっと待て親父! 俺、今まで国中を走り回ったが、そんな物は見かけなかったぞ?」
「当然だ、それは今となっては禁忌になって隠してあるからな。」
「禁忌?」
フィフスは首をかしげます。
「これもいつだったかは定かではないが・・・ どうやら向こうの世界で魔人の迫害が起こったようでな。それに気付いた国は、早々に門を閉じたというわけだ。」
「で、それが処理されずに残っていると?」
「何分数が多かったのでな。未だ我らに見つかっていない物すらあると聞く。」
魔王が困ったようにため息をつきました。それと同じくしてフィフスも察します。
『なるほどな・・・ カオスが使っていたのも、国に見つかっていないゲートだってんなら説明がつく。』
「中には国で管理している物もある。それを使え。」
「サンキュー、親父。」
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「て、ことだ。」
フィフスの言ったことに、その場にいたメンバーは動揺を隠せません。
「以前から、つながりがあった?」
「なるほどね・・・」
フィフスは切りを付けるために己の両手をポンッとたたき、こう言いました。
「ま、ということだ。グレシアには伝書鳥を送っておいたから、明日合流して戻るつもりだ。」
そこにサードが一つ言います。
「でも、入り口は分かっても、出口はどうするの?」
「向こうには瓜やメガネの契約の魔道書がある。そこに描かれた魔法陣を出口にするつもりだ。」
そう答えた後、フィフスは瓜に語りかけました。
「瓜、朝には帰るから準備しておけよ。」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
瓜は咄嗟に立ち上がり、両手で机を叩いて声を上げてしまいました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
ルーズの受難
・フィフスの勝手な行動
・それにより起こる二次災害
・瓜の存在の国への誤魔化し
・深夜労働軽く七日近く