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第63話 魔王

 それは、朝食の最中に瓜が寝ぼけていたがために無意識に言った一言から始まりました。


 「ゴクエンキって、何だろう・・・」


 その単語に、その場にいた残りの魔人達がピクリと反応しました。


 「先の戦いで聞いたの?」


 聞かれていたことに気付いた瓜は戸惑いますが、周りの顔を見てそれを止めました。そしてルーズは食器を洗っていた手を止め、それを近くに置いて瓜の所へとやって来ました。


 「良い機会です。これからも王子と関わっていくなら、あなたは知って置いた方が良い。」

 「て言っても、ろくなもんじゃないけどね。」


 サードの言うことに少しルーズが嫌そうな顔をしましたが、咳をしてそれを止め、続きを話しました。


 「 『獄炎鬼』 二年前に起こったある事件から、王子に付いた異名です。」


 「異名・・・ ですか?」


 サードはふてくされ顔、セカンドはどこか心配そうな目付きで瓜を見ます。


_______________________________________


 その頃、彼女達がいる区画とは違う城の一画。そこには中心に大きなテーブルが置かれ、その周りには、それぞれ威圧を放つ中年の魔人達が話し合っていました。


 「先の戦闘。フィフス王子のおかげで収束したようですな。」

 「流石は獄炎鬼、異名通りの強さですな。」

 「しかしこのような事態、彼の手を借りなくてはならないほど、事態は悪化しているのですぞ。」

 「ここまで軍が弱体化しているとは・・・」


 各々個人的な意見を言い続ける中で、一人が、部屋の一番奥にいた男性に聞きました。


 「このままではどうにもなりませんな。いかがいたします、陛下?」


 「・・・」




 ここは魔王城作戦会議室。一番奥におどろおどろしい暗いオーラを放つ存在が鎮座し、その前方に左右で分かれて国の重役や軍の幹部が並んで座っていました。


 彼らは今だ口が止まりません。


 「いやしかし、このタイミングに王子が帰って来られたことはまこと幸運でしたな。」

 「なんでも人間に助けられたなどと聞きましたが、果たしてどうだか・・・」

 「何であれ喜ばしいことだ。彼にはここから先、国の防衛のために働いて貰わなければ。」

 「あの異名があるのだ。いて貰うだけで奴らには、効果があるからな。」

 「流石は、我らの国の『英雄』だ。」


 その言葉を聞き、奥の席の男が肘をかけていた右の指をピクリと動かしました。周りがそれに動揺します。 


 すると扉の向こうから何やら小さい話し声が聞こえてきました。


 「おあいにくですが、ここから先はお通しできません。」


 その後しばらくは音沙汰がありませんでしたが、少しして今度は声の主が焦ったような声で言い出します。


 「チョッ!? お待ちください!! あなた一体何を・・・」


 すると次の瞬間・・・


 ドーーーーーーーーーン!!!


 鉄で出来たはずの扉は、入ってきた者のドロップキックによってあっさりと蹴り飛ばされ、その大きな破片は、部屋の中心の奥にいた男に向かって飛んでいきました。


 「陛下!!」


 周りの一行は焦りだして咄嗟に席を立ち上がり、彼を助けようと駆け出しましたが、その心配の必要は無かったようでした。彼はかなりの速度で飛んできたにもかかわらず、左手で軽々と受け止めていたのです。


 侵入してきた男は話し出しました。


 「よう、黙って聞いてりゃ、随分人のことを祭り上げてくれんじゃねえか・・・」


 「フィ、フィフス王子!?」

 「なぜこのような場に・・・」


 そして、それまで黙り込んでいたその男は初めて口を開きました。


 「家出帰りの挨拶にしては・・・ 随分と乱暴だな・・・」


 それに対して扉を蹴飛ばした当の本人であるフィフスはこう答えました。


 「こうでもしないと、対面で話なんてしてくんねぇだろ・・・



 ・・・ 親父。」


 そう、この方こそが、現魔王国国王にしてフィフスやサード、セカンドの実の父親、世界で最も恐れられる存在、『魔王』だったのです。


 周りにいるおじさん連中が怯えきっている中、この親子は久しぶりの対面をはた迷惑という形で行われました。


 魔王は早速フィフスに聞きます。


 「して、わざわざ会議の邪魔をしてまで何をしにここに来た?」

 「その前に、このおっさん連中どけてくんない。せっかくなら二人で話がしたいんでね。」


 フィフスはニッと頬を上げました。


_______________________________________


 「二年前、ある日突然にして、人間側の大国、『聖国(ひじりこく)』から、二百人の精鋭部隊が送り込まれた襲撃事件が起こりました。」


 そこにセカンドが補足説明を追加します


 「どうやら、アイツらは相当前から準備して、一気に責め立てるつもりだったようよ。もし成功してたら、軍もまともじゃないこの国はボロボロになってたわね。」


 「ボロボロ・・・」


 その言葉に瓜はゾッとしました。しかしそれを見てもルーズは一切表情が変わりません。


 「恐れるのはそこではないですよ。あなたは何人でその軍団を退けたと思いますか?」


 考えた後、瓜はボソッと応えます。


 「・・・八十、いや・・・ 百・・・ でしょうか・・・」






 「・・・ 一人ですよ。」




 「エッ?」


 「王子は、たった一人でそれをほぼ全滅させたんですよ。それも数分でね・・・」


 ルーズは思いふけていました。自分が見た、フィフスの鬼神の姿を・・・

<魔王国気まぐれ情報屋>


 二人の会話に挟まれた魔王国幹部集団。


・・・二人の放つ独特の圧力によって潰されそうなのを必死で耐えていました・・・



満場一致で思った事「は、早く部屋から出してくれ・・・」

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