第62話 フィフスの野暮用
国門での戦いが終わってフィフス達は城に、グレシアと平次は彼女の実家に戻りました。しかしその後すぐに、彼らは各々それぞれの疲れによって、安易をするという事も無く早くにベットに入りって眠り込んでしまいました。
そして翌日。いつもより長く眠っていた瓜は目を覚まし、朝の支度をします。その後、事前にサードから言われていた食事室に足早にやって来ました。そこには、朝食のセッティングのために既に起きていたルーズとキンズがいました。すると、彼女が部屋に入ってくるのに気付いた二人が挨拶をします。
「おや、おはようございます。瓜さん。」
「思っていたよりお早いですね。もっと休まれても良いのですよ。」
「い、いえ・・・ 大丈夫、です。」
三人がそんな会話をしていると、そこに寝癖がボーボーになってアフロになっているサードと、適度にかわいらしくアホ毛を出しているセカンドがやって来ました。
「ふぁ~あ~あ~・・・ あら? 部屋にいないと思ったら、もう起きてたのね、ウリーちゃん。」
「健康的な方ですね。もう少しゆっくりしているのかと思いましたわ。」
そこにしれっと、キンズが冷たく文句を一言言います。
「貴方たちがだらしないだけですよ。極度に・・・」
すぐに三人分の朝食が用意され、瓜達は席に着きました。すると彼女は、フィフスが来ないことに気が付きます。
「あれ? フィフスさんは・・・」
「ああ、王子なら、朝早くに起きて、野暮用が有ると言っていました。」
「「「野暮用?」」」
_______________________________________
古塔内。緊急事態が収束したことで、マイナはいつも通りに魔剣の刺さっていた穴に祈りを続けていました。しかし次の瞬間、彼女は一瞬目を開け、何があったのかを察してまた目の閉じました。
「ほぉ、お前から来るとは珍しいな。フィフス。」
「久しぶりだな、お袋。」
「フフッ、生意気な口も相変わらずか。安心した。」
「世間話をしに来たわけじゃないって事は分かってんだろ?」
フィフスのその言葉にマイナは細く目を開きました。
「手短に頼むぞ。昨日の事で封印が緩みかけているのでな。」
「瓜って女についてだ。俺の友人の。ここに来てたよな?」
「お前が知ってるとおりだ。ユニコーンから情報は行っているだろう。」
「どうやって入った? ここには魔王家の関係者しか入れないはずだろ。」
「お前と契約したからではないのか? 間接的だがつながりは出来るぞ。」
そこにフィフスはこう切り出しました。
「ならそれだけで、お袋の矢が待てるのか?」
「!!」
フィフスはその一瞬の彼女の反応を見逃しません。
「その反応、心当たりがあるな。」
「・・・ 彼女がここへ来たとき、私には目もくれず、この穴に向かって真っ先に進んでいった事があった。」
それを聞いてフィフスは驚きました。
「魔剣の穴にか? どうして奴が・・・」
「私が分かるのはここまでだ。あまり当てにはならないがな。」
フィフス少しの間無言で考え込みました。
『異世界の、魔力すら持たないアイツが、何でそんなことに・・・』
フィフスはそこから更に問い詰めようとも思いましたが、母の忙しい時間をこれ以上割く事は迷惑になると思い、言葉を引っ込めました。
「いや、十分だ。こっから先は、俺の方で調べる。わざわざ時間貰って悪かったよ。もう帰る。」
フィフスがそこからすぐに階段を降りようとしましたが、それをマイナは呼び止めました。
「フィフス。」
彼は声を聞いて足を止めます。
「どうかしたか? まさか、久々の息子に説教でも?」
冗談臭く言うフィフスに、マイナは優しい声でこう言いました。
「・・・ 無茶はするな。お前は後先を考えずに突っ走りすぎる。」
「・・・ わかってるよ、んなこと。」
フィフスは一人階段を降りながら、ぶつくさと彼女に聞こえないほどの音量で独り言を言います。
「どの口が言ってんだか。自分の幸せより国を優先したくせに・・・」
対してまた一人古塔に残ったマイナも、ボソッと少し呟きました。
「あれは・・・ また、無茶をするな・・・」
そのとき、マイナは祈りに少し雑念が入ってしまい、その結果魔剣の穴の中の邪気が少しあふれ出しかけました。
しかしこのことに彼女はすぐに気付き、自分の気を引き締めて再度己の魔力を込めながら合唱を初め、邪気は途端に動きが止まり、そして吸い込まれるかのように魔剣の穴に入っていきました。
「私もまだまだなようだな。たったこれだけのことで気を緩ませるとは・・・」
マイナは珍しく微苦笑をし、また気を張った表情になりながら目を閉じて祈りを再開しました。
「あ! そうだった・・・」
フィフスは何かを思い出して彼女の元に近付きました。
「まだ何かあるのか?」
「これ、話しにも来たんだったわ。」
彼はそう言って、元々考えていた本題をマイナに話しました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
セカンドは朝、目が覚めるとほぼ百パーセントの確立で服がはだけてしまっているので、彼女は朝食時の廊下の移動中に使用人達に格好を整えられている光景が恒例行事になってしまっています。