第61話 決着後
その後すぐに、まわりで仲間達と戦っていた怪物達も形が崩れて崩壊しました。
グレシアサイド
「・・・終わったの?」
「の、ようですね・・・」
サードサイド
「やっとか・・・ フィフスの奴、時間かかりすぎよ!!」
「フゥ~・・・ お疲れ様です、サード。」
古塔内
再び撃とうと弓を引いていたマイナがその手を止めます。
『異様な量の邪気が消えた・・・ 決着が付いたのか・・・』
マイナはその事を感じ取ると、弓の張りを戻して撃とうとしていた矢を背中の筒にしまいました。
「全く、不良息子を持つと世話が焼けるな・・・」
彼女は一人になった塔の中でため息をつきました。
_______________________________________
こうしてようやく戦いが終わると、それを直接行った瓜は、気が抜けて崩れこんでしまいました。
「ハァ~・・・ なんとかなりました~・・・」
そんな彼女とは対象的に、フィフスは手に持った剣をじっと見て、なんだか考え込んでいる様子でした。
『やっぱりこうなったか・・・ 』
すると戦闘が終わったからか、フィフスの目の色が元に戻りました。
『剣の光が消えた。おそらく矢の光も同じだろう・・・ しかし今回は疲れはない・・・ 前とは何か条件が違うのか?』
せっかく勝利したのに浮かない顔をしているフィフスに、座り込んでいた瓜が話しかけます。
『どうかしましたか、フィフスさん?』
我に返ったフィフスは、彼女に悩ませないためにこのことは頭の片隅に置いておくことにしました。そんなことより彼女に伝えたい言葉があったのです。
「何でも無い。そんなことより瓜・・・」
『ハイ?』
するとフィフスはにこやかな表情になって手を伸ばし、彼女の頭を撫でました。
「ありがとう、助かった。」
「・・・!!?」
瓜はフィフスが彼らしくない行動をしたことに内心かなりの衝撃を受けました。目が覚めたユニーも含め、戦闘が落ち着いて集まってきた仲間達(主にサード)がそんな二人を隠れて見ながら、彼らに聞こえないように口々に野次を言います。
「あらあら~? 終わった途端にイチャイチャしちゃって・・・ 仲いい事ね。」
「まぁ一応、お二人は婚約者ですしね。 『姫による無理矢理だけど・・・』」
「これに割って入るのは無礼ですわね。ここは後ろから見守りましょう。」
「いいな~・・・ 」
「「「エッ!?」」」
グレシアがボソッと呟いた一言に、残りのメンバーが注視しました。
再び視点が変わってフィフスと瓜。いきなりなでられたことに彼女は赤面しています。フィフスは頭に当てていた手を退け、今度は差し伸べました。
「立てるか?」
「あ・・・ すいません。」
瓜は彼の手を取り、よろけながらも立ち上がりました。
「大丈夫か? やっぱ疲れてるようだな。」
「ごめん・・・ なさい・・・」
「いい加減謝るな。その台詞は聞き飽きた。」
フィフスはさらに戦闘慣れしていない彼女を励まします。
「どうであれ、今回の一番手柄を上げたのはお前だ。家出した件は不問にしておくよ。」
「・・・」
彼女は褒められることにも慣れていなかったがために、そこからは更に赤面して黙り込んでしまいました。そんな彼女にフィフスはもう何も言わず、他に居た人達に話しかけました。
「それで、そこの茶化し組はいつまで隠れているつもりなんだ?」
ギクッ!!
既に気付かれていた事が分かったグレシア達一行は隠れていた茂みから立ち上がりました。
「あちゃ~・・・ バレちゃってたか・・・」
「上手く隠れていたつもり何でしたが・・・」
「こいつ、視線には人一倍敏感だからね。」
見破られたことに歯がゆさを感じている四人。そんな彼女達を見てフィフスもため息をつきます。
「終わった途端にくだらねぇことやってんじゃねえよ。疲れてるくせに・・・」
事実言われたとおりです。彼女達も目の前の光景を楽しもうと頑張っていますが、実際は再生で切りのない相手とずっと戦っていたので、服は汚れて身も疲れ切っていました。
「いくつか疑問は残ったが、ここでやれることはもう無い。帰るぞ。」
「アンタが仕切らないで!!」
そうグレシアが反論しますが、全員疲れを優先して帰ることにしました。当然ながら迎えはないので徒歩で帰ろうとします。
「流石にこれはキツいわね・・・」
「一旦休みたいですが、こんな所では・・・」
すると彼らの所に、国の方から大きな音が聞こえてきました。
「何よ、こんなときに・・・」
サードがまた厄介ごとかと疲れながら身構えると、そこにやって来たのは、何体もの馬車でした。そしてその中から、キンズが出て来ます。
「姫様、皆様、お迎えに来ました。」
それを見てサードは構えた剣をしまってニヤけます。
「ここに来ないと思ったら、用意してくれてたのね。さっすがアタシの自慢の執事。」
「皆さん揃って後先考えずに動かれましたので、のたれ死ぬ前に間に合って良かったです。さぁ、さっそく、席はそれぞれ用意していますので。」
キンズからのありがたい配慮に、戦いに疲れた全員はありがたくお世話になることにしました。
「あの・・・」
全員が意気揚々と馬車に乗ろうとしたところに、男の声が聞こえてきました。その方向に一行が同時に振り向くと、木の枝にぶら下がったままの平次がいました。
「俺のこと、皆忘れてませんか・・・」
残りの一行が隣にいた仲間と一度顔を合わせ、再び彼の顔を見て言いました。
「「「「「「忘れてた。」」」」」」
「町田さんまで!!?」
平次はその事実にショックを受け、皆に彼の全身が白く見えるほどに絶望していました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
その後、平次は同情したルーズの魔術によって無事救出されました。
しかし彼の心のダメージはしばらく続き、最早周りから彼の白骨が見えるまでに深刻化していました。
フィフス 「向こうの世界の人間は、しょげるとガシャドクロになるのか・・・ 新しい発見。」
瓜 『そんなことはありません!!』