第60話 二人でキメる!!
瓜はフィフスが言い出した突拍子のない言葉に若干混乱気味になっています。
「エッ!!? いや・・・ フィフスさん、何も・・・ こんな所で!!」
「な~に変な勘違いしてんだバカ。協力してこの剣を壊してくれって言ってんだ。」
「こ、壊す?」
意味の分かっていない瓜。しかし聖剣ホープは次の瞬間、剣の刃から氷柱を発生させ、結界を通して二人に飛ばしました。
しかし油断していた瓜とは違い、フィフスは分かっていたように二人分の氷柱を光る剣で軽々と砕いてみせました。それに気付いて瓜はビクッと驚きます。
「この剣、意思でもあんのか? だがおかげで分かったぞ・・・」
そこからも剣は直接攻撃を放ちます。避けるためにフィフスは瓜を即座に姫抱っこして下がります。
「ちょっ!!?」
「我慢しろ、すぐ終わる。」
『でも、重いのでは・・・ 』
「大丈夫だ。お前の体なぞ木の棒と同じだからな。」
「そこは軽いって言いなさいよ!!」
二人の会話に戦闘中のグレシアは横槍の文句を言いました。フィフスはそれを右で聞いて左で受け流しています。
「ちょっと!! 無視しないで!!」
「アハハ・・・ 『やっぱりフィフスさんはこうですよね・・・』」
フィフスは瓜を抱えたまま、聖剣ホープから繰り出される攻撃をよけながら距離を詰めます。
「よし、ここらでいいか。」
そう呟くと、フィフスは一旦動きを停止して、抱っこ状態の瓜を丁寧に降ろしました。
「あの・・・」
「ここからは走ってくれ。一つ賭けをする。」
「賭け・・・ ですか?」
フィフスは彼女に混乱をさせないように、感じたことの一部を省いて説明しました。
「お前は俺らと違ってその矢を使えるようだ。」
『そ、そうなんですか?』
「ああ、だからお前はあの結界まで近付いて、俺の剣と共にそいつをぶっ刺す。」
『い、行き当たりばったりでは・・・』
「これしか手が思い付かないんでな。悪いが協力してくれ。」
「は、はい!」
そうして瓜の協力を得たフィフス。今彼の頭の中では、彼女に説明していない事を考えていました。
『もっとも、こいつがただ矢を持ててるだけなら、あの結界は壊せないだろうが・・・ 予想が当たれば・・・』
瓜はフィフスの後ろに控えながら走り、対して彼は彼女に向かってくる攻撃を捌きながら進みます。そして他の面々に言いました。
「お前ら!! か細いがこの戦いにケリをつけれる手を思い付いた。あと少しの間粘ってくれ!!」
「あと少し~・・・?」
「言葉通りなら良いのですが・・・」
そう口を叩きながら、グレシアやルーズは矢の雨を回避した怪物達が二人に向かって行くのを防いでいきます。違う場所にて、フィフスの姉二人も同様でした。
「フフ、人を振り回すのも相変わらずのようですね。」
「フィフス!! アンタ、ウリーちゃんに怪我でもさせたら骨折るわよ!!」
サード、セカンドは再生しかけの破片に攻撃をし、再生を遅らせようと奮闘しています。
『何か愚痴が多い上におっかね~台詞があったような・・・』
フィフス達二人は、そこから真正面に短い距離を走ります。しかし罠の多さに、彼らにはとても長く感じました。
聖剣ホープは彼の後ろにいる瓜にどうにも強く警戒しているのか、彼女に向かって次々強力な飛び道具をぶつけようとし、それをフィフスは得意の火炎で阻止していきます。
『破れかぶれで撃ってくるな。相当焦っているようだ。』
距離を詰めれば詰めるほど、相手からの攻撃の数は増えていきます。至近距離になるとそれはなおさらで、とうとう防ぐと同時にフィフスは反動で下がってしまいました。しかしそれも、後ろにいた瓜が彼女なりの必死な力で受け止め、支えてくれました。
「おっと、すまねぇ・・・」
「いいえ、大丈夫ですので。」
瓜は戦いの中、自然に発生した小さな笑顔でフィフスを励まします。彼もそれを受けて同じ表情になって小さく頷くことで返し、また聖剣が放った大きな攻撃も捌ききりました。
そこからはとうとう魔力切れになったのか、聖剣からは術が放たれることがなくなり、周りで戦っている怪物の動きも鈍くなってきました。
そしてフィフスと瓜はようやく攻撃の間合いに入りました。フィフスは攻撃が来ないことを確認し、後ろにいた瓜を隣まで進ませます。
「いいか、聖剣ホープの能力からして、攻撃できるのチャンスは一回だけ。それでこいつの容量を越えれば勝ちだ。」
瓜はフィフスから言われた事にまた固まってしまいます。しかしフィフスはそんな彼女の頬をつねりました。
「アイタタ・・・」
「そぉ固くなんな。お前の動きに合わせるから安心して刺せ。」
普段の彼女ならここでホッとするところでしょうが、今の彼女にはこれこそお節介でした。そしてフィフスが手を離すと同時に、珍しくムッと顔を膨らしました。
「どうした!? そんな不機嫌な顔をして・・・」
フィフスは瓜のそんな表情に焦って冷や汗を流します。
「私だって・・・
・・・私だって!! やるときは自分でやるんです!! いつもいつも遠慮なんてしないでください!!」
瓜からの突然の文句にフィフスは驚きながらも、やらしく笑って応えます。
「いきなり遠慮で城を飛び出していたくせにか?」
「ウッ・・・ それは・・・」
瓜は少し目の視点を次々変えて戸惑っていましたが、一度目を閉じて頭を下げました。
「ごめんなさい!! あの時は、フィフスさんや、皆さんのことを考えていませんでした。もう二度と、こんなことはしません!!」
割と本気で謝られたことにフィフスは逆に困惑してしまいます。
「ああ・・・ いや、良いんだ。『ほんの冗談で言ったつもりなんだが・・・』」
瓜の謝罪が聞こえていたグレシアとルーズ。
「地雷踏んだわね。アイツ。」
「何ですか、その言葉?」
「気にしないで。」
フィフスは言葉に詰まりながら、場を進めようとしました。
「と、とにかく・・・ 今はこいつに集中するぞ。」
「は、ハイ!!」
二人は再び聖剣ホープを見ます。
「やれるって言うなら、任せてみるか。3,2,1でいくぞ。いいな?」
瓜はコクリと一回頷きます。それを見てフィフスはフッと一瞬だけ彼女の覚悟を決めた顔を見て小さな笑顔になり、すぐに前に戻します。
そこからフィフスは自信の剣を刺すために、武器を逆手に持ち、右足を後ろに引いた構えを取りました。隣にいた瓜も見よう見まねで彼と同じ構えを取ります。
「準備はいいか?」
「ハイ!!」
二人は、まるで打ち合わせをしたかのように息を合わせて同時に動きました。フィフスの口から、カウントダウンが始まります。
「3・・・ 2・・・ 1・・・」
そしてフィフスが最後のカウントを言うと同じくして、二人は目を見開きました。
「0!!」
そこからは立った一瞬の出来事。しかし彼ら二人はそんな中で意識することもなく動きを一致させ、お互いの武器を差し込みました。すると・・・
ピキッ!!・・・
ピキピキッ!!!・・・
パリンッ!!!
今まで散々攻撃を弾いてきた結界が、まるで薄いガラス板のように簡単に割れ、中にあった聖剣ホープにまで突き刺さったのです。
「「ハァーーーーーーーーーーーーーー!!!」」
二人はそのまま武器に力を込めていくと、聖剣の刃にヒビが入り、瞬く間に砕け散りました。