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第59話 矢の光

 突然と現れ、フィフス達が苦戦した怪物を軽々と粉砕した矢は、地面に刺さったまま動かなくなっています。


 『これは・・・ どこから・・・』


 瓜がなんとなく矢に興味をもってそれを見ていると、後ろに近付いてきていたフィフスとサードがそのポーズのまま進みを止め、周りにも緊張を与えるほどの大きく身震いをしていました。瓜はその音に何事かと思い見ます。


 『ど、どどど、どうしたんですか!?』


 「あああ、いいや・・・ ううう、瓜。早く、早くそこから離れろ!! 危ないぞ!!」

 「そそそ、そうよウリーちゃん!! その矢から離れてなさい!!」

 『お二人とも固まっていますよ!!』


 瓜は近くの石の少ない場所にユニーを置き、他はどうなっているのかと見回します。すると、怪物を止めながら冷や汗を流して笑っているセカンドを見つけました。


 「アハハ、これはとんでもないことになりましたわね・・・」

 「こ、この矢は・・・」


 瓜の小さい声での質問に、セカンドは相手を切り裂いて乾いた笑いを続けながら答えてくれます。


 「それは私達の母、『王妃マイナ』の放った矢です。唐突にそんな物が来て、二人は混乱しているのです。」

 「!! マイナって・・・」


 瓜は古塔の上での彼女を思い出します。


_______________________________________


 「・・・ マイナだ。また会えることを楽しみにしているぞ。」


_______________________________________


 『あの方、フィフスさんのお母さんだったんですね・・・ どおりでどこか見覚えのある雰囲気だと思いました。』


 ガタガタガタガタガタガタガタガタ・・・


 二人が会話をしてる間も、フィフスとサードは震え続けています。


 「それで・・・ あの・・・ 二人は・・・ 震えて?」


 瓜は普段見ない二人の姿にどうとって良いのかわからないでいます。


 「ははは母上は、私達にめちゃくちゃ厳しいのよ・・・」

 「普段戦闘の手助けなんて全然しねえのに、何でまたこんな・・・」

 「これが来たって事は、まさか・・・」


 その次の瞬間、さっきと同じように怪物達が次々と突然粉砕されていきました。それが続けば続くほど、フィフス達は怯えは増していきました。


 「「ギイヤーーーーーーーーーーーーー!!」」


 セカンドは二人とは違い恐ろしがってはいませんでしたが、笑顔の形が微苦笑に変わっていました。 


 「あらあら、これはまた派手に・・・」


 しかしこのことに聖剣ホープも負けじと、木の枝や草に引っかかっていたような身体の細かい破片すらも集め出して次々と怪物を誕生させ、向かって行きます。矢の雨に感化されたフィフス達姉弟は普段と違う焦った表情のままにそれを相手していました。


 すると、とうとうマイナの矢が剣の結界に刺さり出しました。近くにいたグレシアは歓喜の顔になります。


 「良し!! あの王妃様の矢だってんなら、あの結界も流石に・・・」


 しかし、この結界はその攻撃ですら、何度当たろうとひびが入ることすらありませんでした。


 「嘘でしょ、あれでも・・・」

 「王妃の矢でも無理ですか・・・ 全くの予想外の堅さですね。自分の爪で砕けなかったわけです。」


 ルーズはそう言いつつ、さっきのことで痛めていた手をそのまま使って怪物と戦っていました。






 そのころ、奥に控えていた瓜は考え事をしていました。



 『さっきの矢・・・ 白く光ったと思ったら・・・





 ・・・あれは、一体・・・』




 離れた所にてそれを見て、口を開けたままボーッとしています。さっきのこともあって、考え事をしていたのです。


 『皆さんには、見えていないんでしょうか・・・』



 この時に瓜には、周りには見えていないものが見えていたのです。それは、一瞬に思われた矢の動きでした。


 矢が軌道を進む直前、彼女の目には上空に、白く光る線のようなものが引かれるのが見えたのです。本人は知りませんでしたが、これは化けゴウモリ戦のときにフィフスに見えた、光の曲線と同じだったのです。


 しかも今の彼女の目には、矢が刺さっているところ全てから光があふれ出している光景が広がっていました。瓜はこの異常な光景にどう感じたら良いのか分からなくなっていました。


 『こんなに輝いているのに、全くまぶしくありません。それに、何というか・・・』


 瓜はそのとき、無意識のままにまた前に歩き出しました。襲いかかる怪物も、それが矢によって粉砕されている瞬間も、間近で見ているというのに一切怯えることありませんでした。


 戦闘中にフィフスはそんな彼女を見かけます。


 「アイツ、こんな混戦地で何を!?」


 そのとき、後ろにいた怪物が彼に殴りかかりましたが、フィフスはそれを軽々とかわして蹴り飛ばし、彼女を避難させようと、次々とくる怪物をなぎ払いながら駆け寄りました。


 そのとき、丁度彼女は結界近くの地面に突き刺さっていた矢を引っこ抜いたところでした。


 「オイ瓜!! お前何してんだ!?」


 「ハッ!! あれ・・・ 私は、何を・・・」


 瓜はフィフスからの大きな声に我に返りました。しかしそれでも彼女の手には拾った矢が握りしめられたままでした。


 「これは・・・」

 「お前、お袋の矢が持てるのか!?」

 「え? そ、そのよう・・・ ですが・・・」


 瓜は握っていた矢に気付き、腕を目線まで上げてそれを見ました。


 「これは、一番輝いてますね。」

 「輝いてる?」

 「アッ!! イヤッ!! その~・・・」


 瓜の今の状況に、フィフスは少し考えます。


 『どういうことだ? お袋の矢は、触れた途端に相手を粉砕するはずだ。しかしこいつには効果が無い・・・ こいつが人間だからか? ・・・ッン!?』


 すると、そこに引かれるかのように、フィフスが腰に据えていた剣が突如『ドクンッ』っと鼓動を鳴らしたのです。その音は瓜にも聞こえていたらしく、彼女の方から聞かれました。


 「あの! 今、剣が・・・」

 「分かってる。」


 内心の疑問の表情を隠しながら、フィフスは剣を鞘から抜きました。すると、彼の目は化けゴウモリのときのように身の色が変わり、持った剣のその刀身は瓜の持つ矢と同じように輝いています。


 「これは・・・ あの時と同じ。」

 「あの時?」

 「ああ、こっちの話だ。 『輝いてるってのはこのことか・・・



 ・・・まさか!!』」


 何かを思ったフィフスは瓜に言います。


 「瓜、ちょっと付き合え!!」


 「・ ・ ・ ハイッ!?」


 彼からの唐突な台詞に、瓜は白目を向いて驚きました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・マイナの矢


 フィフスの母、マイナが放つ術のかかった矢。射程距離が非常に長く、彼女の腕もあって、高確率の命中率を誇る。また、込められる魔力の量は術士である彼女の自由自在であり、やりようによっては周囲一帯ごと相手を粉砕することが出来る。

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