第57話 魔人大旋風
「『魔人大旋風ボール』!! よーーーうい!!」
「「「オオッス!!」」」
「・・・ハイ?」
フィフスの言うことに後ろの瓜が戸惑っていると、彼らが動き出す前にライヤーは容赦無く攻撃が放たれてきました。その事によってまた彼らは四散しましたが、今度はただ逃げているわけではありませんでした。
「それでは・・・」
セカンドは宙に舞っているときに、両手に持っていたユニーボールに己の魔力を込めました。するとユニーボールがピンクに輝きました。そして・・・
「執事君、いきますよ!!」
そう言うと、セカンドはユニーボールを手から放し、落ちたところを右足で蹴ってルーズに向かってパスしました。ルーズはそれを見事に受け取ります。
「承りました。」
また放たれる火炎や氷岩、衝撃波を器用にかわしながらリフティングをしています。そうしている内にユニーボールは、ルーズの魔力が込められたことで今度は緑色に輝きます。
「サード姫!!」
しばらくそれを続けた後、ルーズは一番近くにいたサードにユニーボールをパスしました。
「ナイスパスよ、オオカミ君。」
機嫌良く彼に言葉をかけながらサードがユニーボールを左足で蹴り上げて受け取ります。そこからは彼女がリフティングをしながら自分の魔力を込め、ボールを黄色く輝かせます。
ボールを警戒していたのか、ライヤーも狙いをサードに変えて攻撃を始めました。しかしそこは流石のゲス姫。その事を分かっていながら、挑発をかねて全て攻撃をかわしていました。
「オラオラどうしたの? そんなへっぽこな攻撃じゃ、アタシは倒せないわよ!!」
ライヤーはちょこまかと逃げるサードに苛つきながら、攻撃を続けます。しかし彼女は一通り楽しんだ後、ライヤーにあっかんべーをしてユニーボールをグレシアにパスしました。
「魔女っ子ちゃん! そろそろあげるわ!!」
「エッ!? このタイミングに!!?」
グレシアは戸惑いながらパスされたボールを受け取ります。途端に攻撃対象がこちらに来ると思った彼女は身構えますが・・・
「くらえーーーー!! たおれろーーーーー!!」
ライヤーはどういう訳かサードに攻撃したままです。
「これって何で・・・」
そのときグレシアはハッとなりました。さっきのサードの挑発は、ライヤーに彼女を意識させることが目的だったのだと・・・
『ま、絶対嫌がらせも入ってるだろうけどな・・・』
感心するグレシアから少し離れた場所で、フィフスはそう思っていました。
落ち着いて作業が出来ると感じたグレシアは、脚で蹴ることなくボールを両手に持ち、自分の魔力を込めて水色に輝かせました。そこに大きな声が聞こえてきます。
「グレシア!!」
「!?」
彼女が振り向くと、そこにはフィフスが走って迫ってくる様子が見えます。
「構えろ! 俺が決める!!」
普段なら文句を言う彼女ですが、ここは確実な手を取ろうと思いました。そこで彼女はボールの上下をそれぞれ持ち、彼にシュートを決めさせるための構えを取りました。
ライヤーは今だサードによって翻弄されています。しかしそんな中でも彼女は的確に周囲を見ています。そして、細かいハンドサインを出しているフィフスを見つけました。
『へえ、無茶なことやらせるわね・・・ あの馬鹿。』
そんなことを考えていたがために、いつの間にか彼女は油断をしてしまい、再びライヤーを見たときには、彼の口から出た火球を至近距離に見つけました。彼女は宙にいたので身動きが取れません。
「やばっ!!」
すると、彼女の目前に竜巻が現れ、攻撃を打ち消しました。サードが着地すると、すぐ近くにセカンドとルーズがいました。
「あなたもお姉ちゃんを頼ってくださいませ。」
「一緒に詰めに入りましょう。姫様。」
三人はそこからまばらに動き出し、ライヤーの動きを完全に翻弄します。
そのころ、残りの二人が発射準備を整えていました。
「ほら、やったよ!早くして馬鹿王子!!」
「あざっす、グレシア。」
フィフスはグレシアが構えたボールめがけて走り出します。それを見計らった残りの三人は、ライヤーをある角度を向くように陽動ました。
そしてフィフスはある程度グレシアに近付いて地面を蹴り飛びます。そして・・・
「必殺シュート!!」
グレシアの持っていたユニーボールに見事な跳び蹴りを決めて飛ばしました。
蹴り飛ばされたユニーボールは、フィフスが触れた一瞬に彼の魔力を受けて赤く輝きますが、彼の足から離れた途端に、これまで彼に触れてきた五人の魔力の色を次々と変えていきながら輝きながら、ライヤーに向かって突撃していきます。
「よし・・・」
「今ですね!!」
そしてルーズ、サード、セカンドの三人は、攻撃を仕掛けてきたライヤーの首の位置をユニーボールの向く方向に誘導し、そこからすぐに退散しました。
「頼みますよ、ユニー。」
そして技を出すために大口を開いたライヤーの体内に、ユニーボールは勢い良く突入していきました。
「オゴッ!!?・・・」
ライヤーは突然身体に入り込んできた異物に驚き、すぐに吐き出そうとしますが、奥底に詰まったのか取れません。
そこから少しすると・・・
「ウグッ!?・・・ ウググ・・・ ウゴッ!!?」
ライヤーは大きく苦しみだします。そして・・・
「ウオァーーーーーーーーーーーーー!!」
ドカンッ!!!
ライヤーは次の瞬間に身体の口や目元からさっきのボールの光があふれ出し、そして大きな爆発を起こした。
そのとき発生した風圧に、近くにいたフィフス達を吹き飛ばしました。離れて見ていた瓜にも強風が吹き抜けましたが、どうにか飛ばされるほどにはなりませんでした。
爆風が収まると、魔人達を心配した瓜は自分の身を省みずに動き出しました。
「フィフスさん!! 皆さん!!」
すると、彼女の真上から声が聞こえてきました。
「そんなに必死になるな。こうも簡単に死なねえよ。」
瓜がまさかと思って見てみると、上の細かい木の枝に引っかかりながらも無事でいたフィフスが、下手くそな笑顔をしながら瓜を見下ろしていました。
「フフッ・・・
・・・ 減ったな笑顔ですね。」
「うっせ・・・」
二人はお互いの無事に再び安心していました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・魔人大旋風ボール
事前に用意して置いたボールにそれぞれの魔力を代わる代わるに込めて相手に打ち込む強力技。
行うメンバーによって起こる属性効果が代わり、また行う人数によっても威力が左右される大技になっています。
決してどこかで見たことがあると入ってはいけない・・・
決して大旋風から連想してはいけない・・・