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第53話 悪い子はロバになる

 「・・・」

 「・・・」


 完全に壊された国門から、少し離れた森林の中。フィフス達は今、目の前に現れたライヤーに対し、そこから放たれる感じたことのない感覚のプレッシャーに、どうすれば良いのか分からなくなっていました。


 その状況にカオスはただ笑っています。そして・・・


 「いいかいライヤー君、あれが『獄炎鬼』だ。あれを狙うんだよ。」


 ライヤーは分かったように首を縦に振ります。そして片言で話しました。


 「ゴク・・・ エン・・・ キ?」


 「そう。じゃあ、後は頼んだよ。ライヤー君。」


 そしてカオスは地面に攻撃をし、土煙を発生させ、それが消えると共に姿がなくなっていました。グレシア達と戦闘をしていたウォーク兵も、それと同時に消えていました。


 「チ、また逃げたか。」

 「それより今は、こっちの魔獣に集中した方が良さそうよ。」

 「・・・だな。」


 疲れを押しているフィフスも含めて、集まった一行は戦闘の構えを取ります。すると・・・


 「ウオァーーーーー!! 獄炎鬼ーーーーー!!」」


 ライヤーが今度は彼らに向かって雄叫びを上げました。大きな体であることが相まって、吠えただけでもかなりの風圧が起こり、飛ばされないながらもかなりの物理的な圧を受けていました。


 「ウオッ!!」

 「クッ!!・・・」


 そのせいで彼らは反応が遅れてしまいました。そして気付かなかったのです。



・・・邪気は魔力の源。そしてライヤーの中には、元々ノギが持っていた偽物のホープが取り込まれていることを・・・


 「グオァ!!」


 そしてライヤーは、その大きな口からグレシアの氷の岩を吐き出しました。


 その攻撃はライヤーの真正面にいたフィフスに直撃しました。


 「グッ!?・・・」

 「王子!!」

 「今のって、アタシの氷?」


 フィフスは、ヘロヘロの体でしたが、このまま押しつぶされては元も子もないと感じ、必死で火炎術を発動した。どうにかそれで氷を溶かし、危機は去ったが、それでもまだまだ次がきます。


 一発不意打ちを食らったことで今度は準備をしていたこともあって、遅いながらも回避が出来ました。


 しかし、ノギがこの時にはいくつもの魔術を剣に吸収させていたがために、ライヤーの攻撃には一切の法則性がなく、場にいる全員は口から出される寸前にその術それぞれで違う光の色でどうにか判断していました。


 「ええい、まどろっこしいわね。攻撃が多すぎて近づけないじゃない!!」

 「生憎裏から回り込もうにも、こっちは今瞬間移動が使えないんでな。」

 「でも、これだけ連発していると、そろそろ魔力切れを起こしそうですが・・・」


 しかし、そのセカンドの当ては外れてしまいました。ライヤーはいつまでたっても魔力切れを起こす様子はなく、猛攻は続きました。


 「どうしてですか!?」

 「おそらくあの量の邪気ってやつを吸ったんだ。魔力の量は俺らとは段違いなんだろう・・・」

 「そんな・・・」


 他のメンバーはともかく、フィフスにはかなり応えています。


 「・・・」


 黙ってはいますが、彼は明らかに無理をしている様子でした。なんとか近くに来たルーズがそこに話しかけます。


 「王子、無理をせずに戦線離脱してください。流石にあれは、今の貴方では勝てませんよ。」

 「そうしたいのは山々だが、相手さんはそんな気は無いようなんでな・・・」


 ですが、その攻撃は多いものの、一つ一つの攻撃が単調だったためにだんだん回避が容易になっていきました。これを好機と捉えたサードは、木の幹に剣の刃を飛ばし、ライヤーの資格を縫って後ろまで回り込みました。


 『さて、背中(ここ)からならいくらか隙がありそうね。』


 ついに相手の真っ直ぐ後ろの場所まで移動したサードは、早速二本の剣を振り下ろし、ライヤーを一気に切り裂こうとしました。しかし、その刃は相手の首当たりに当たった途端、ピタリと動きが止まってしまいました。


 「ナッ!? 堅すぎでしょ、こいつ・・・」


 サードが自分の攻撃が効かないことに動揺していると、彼女の存在に気付いたライヤーの尻尾を上げて横に振り、サードに直撃させました。


 「ウグッ!!・・・」


 彼女はそのまま横に吹っ飛んでしまい、地面に勢い良くぶつかってしまいました。


 「姉貴!!」

 「サード!!」


 土煙が晴れると、不機嫌な顔をしながら彼女は尻餅をついた姿から立ち上がりました。


 「このくらい大丈夫よ。あとフィフス! アンタ後でお仕置きね。」

 「こんなときでもそんなことは変わらねえのか・・・」


 フィフスは呆れながらも安心し、再び戦闘に入りました。


 しかし、やせ我慢をしているサードでしたが、本当は腹に打撲の痛みを感じていました。


 『痛っ! クッ・・・ 思ってたより効いてるようね・・・』


 しかしそんな中でもサードはフィフスと同じように体に鞭を打って立ち向かっていきました。




 そこから先は、時間にすればたった数分でしたが、身体に難のある彼らにとっては、とても長く感じました。攻撃を撃たれてはよけ、撃たれてはよけを続け、死角に入ったとしてもその硬い身体に攻撃は通じませんでした。


 「クッ、僕の術でも通じませんか・・・」


 宙を舞っている状態でルーズは嫌な顔をします。そこにまた尻尾による打撃がきました。


 『マズい、 <部分獣装 左脚>』


 ルーズは一瞬で左足をオオカミの形にし、攻撃力を上げて尻尾を蹴り返します。しかしそれでもダメージが相殺されただけでした。


 なんとか着地したルーズは、近くにいたグレシアに聞きます。


 「なんとか攻撃を通す手はありませんかね。グレシア。」

 「アタシに聞かないで。今は術すら使えないんだから。」


 そこに見える位置に着地したフィフスがこう言います。


 「一応一つ試したい手が出来た。が、これをやるにはかなりの威力がいる。」


 そこに近付いた二人は具体的に聞きます。


 「どんな手?」


 「幸いアイツは攻撃のさいに大きく口を開ける。技の直後に体内に高威力の術をぶっ込んで、中からボカン!! てな感じだ。」

 「ああ? でもそれって・・・」

 「俺は術が使えず、昼間のルーズでも威力は弱い。姉貴達も、魔力圧縮の技は使えないからな・・・」



 「万事休すじゃない!!」

 「他の手は無いんですか!?」

 「今は思い付かん! なんせ見たことのない生物だからな・・・」


 そんなことをしてる間に、ライヤーはしゃべりながら技を出し続けます。


 「獄炎鬼ーーーーーーーーーーーーー!!」


 その攻撃に、とうとうフィフスは疲労から逃げ遅れてしまい、術が間近まできました。


 「フィフス!!」

 「王子!!」


 二人は助け出そうとしますが間に合いません。そして術がフィフスに当たろうとしたとき・・・




 ザザッ!!




 そのとき、フィフスは突如現れた物体に引っ張られました。彼が気が付くと、その生物の背中らしきものの上に乗っていました。


 「うぅ~・・・ 何だ一体・・・」



 「大丈夫ですか!? フィフスさん!!」


 その声と共に、フィフスは目の前に瓜の顔を見つけました。


 「瓜! お前どうして・・・ どうやってここに?」


 瓜は安心からの愛想笑いをしながら説明しました。


 「アハハ・・・ 乗せて貰っちゃいました。」

 「乗せて? って事は、こいつは!!」



 そう、今フィフスが乗っかっていたのは、とても厳つい顔をし、そして白いオーラを纏った立派なユニコーン・・・








 ・・・本来の姿に戻ったユニーでした。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・ライヤー


 カオスがノギの身体を中核に即席で作り上げた魔獣。これまでのフィフス達の世界に存在しなかった魔獣であり、その性質、生態は一切の謎に包まれている。




 しかしカオスはこんなものをおもちゃ感覚で作り上げてしまった。こんなことの出来る彼は一体何者なのか・・・

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