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第52話 嘘つきの子には・・・



 今、目の前に『日本』にいるはずのカオスがいる。



 異世界にいるフィフスはそこにいる彼を見て驚くと言うよりも、どこか納得していました。


 「やっぱりか。どうやってここに来たのかは知らんが、これはお前が仕組んだことだな。」


 カオスは野木の腕を押さえていた手を離し、右手の指をパチンと鳴らして応えます。


 「ザッツライト!! そのとおり。この勇者さんには僕から君を倒すように頼んだのさ。」


 普通に会話をする二人に、カオスに初対面であるルーズ達は近くにいたグレシアに聞きました。


 「誰ですか? あの方は。」

 「エエッと、話すと長いんだけど・・・ 取りあえず、かくかくしかじか・・・」

 「!! じゃあアイツが大量の魔人を攫ったの!?」


 事を聞かされた三人はさぞ驚いていますが、面と向かっているフィフスには今はどうでも良いことでした。


 そんな二人の圧に挟まれているノギは、それを切ってカオスに聞きます。


 「ちょ、丁度良かった。オイお前! どういうことだ!? この剣は伝説の聖剣なんだろ!! 何でそれが折れるんだよ!!?」


 その質問にカオスはクスクス意地悪く笑いながら、たった一言こう応えました。





 「・・・ は?」




 そのわざとらしいたった一言で、ノギは彼の胸の内にあることを察しました。


 『こ、こいつ・・・ まさか・・・』


 表情を見て自分の真意にがバレたことに感付いたカオスは、笑い顔を更に大きくしてフィフス達にも聞こえるように話し出しました。


 「まさか、本当に聖剣を渡したとでも思ったの!? いやぁ~・・・ これは驚いた。まさか本当に信じていただなんて・・・」


 そう、ノギがカオスから受け取っていた『聖剣 ホープ』は、まごうことのない偽物だったのです。


 「やはりな・・・」

 「折れやすかったのはそれでだったんですね。」


 奥で聞いていたフィフス達が呟いている中、ノギは立ち上がってカオスの胸ぐらを掴みます。


 「貴様!! 国の英雄であるこの俺に、こんな恥をかかせるとは・・・ 良い度胸をしているな!!」


 しかし詰め寄られているカオスは、全く顔色が変わりません。


 「何をそんなに怒るのさ? 伝承でも能力すら分かっていない剣なんだよ。ただの一変人が持っているわけないし、持っていたとしても本物は渡さないでしょ。」


 「何!? 貴様は勇者たる俺の顔に泥を塗ったのだぞ!! ただですむと思うな!!!」





 「ハハ、それは・・・ こっちの台詞ですよ。偽の勇者様・・・」


 その言葉にノギはドキッとし、腕を放してしまいます。そんな中カオスは変わらない調子で話し続けました。


 「悪いね~、魔王子君に魔女っ子君。これは僕によるちょっとしたお遊びだったんだ。」

 「お遊び、だと?」

 「アンタまでその呼び方止めて。」


 カオスはヘラヘラ顔を一度止め、気味が悪い真顔になりました。


 「こっちにやりたいことがあったからね。そのための目くらましだったのさ。」


 ノギはまた怒り出します。


 「め、目くらまし・・・ だぁ?」

 「そ、だから勇者様はもう用済みになったって訳。ご苦労さんでした!!」


 カオスはノギに向かってビシッと決めた敬礼をしました。それがよりノギを苛立たせます。


 「ふ、ふざけるな!! もう許さ・・・」


 ノギが怒りの言葉を言いかけたそのとき、その胸にカオスが手を触れてきました。


 「ご安心を、あなたにはまだ役に立って貰いますから。」


 ニコリと笑いながら、カオスはノギを張り手で飛ばしました。すると彼の胸には、見慣れない魔法陣が刻まれていました。


 「何をする気よ?」

 「なんかやばそうだ!」


 フィフスは咄嗟に疲れた体を押して攻め込もうとしますが、いつの間にかカオスに押さえ込まれてしまいました。


 「まあ見てなって、面白いことが起こるよ。」

 「何?」


 ならばと残りの味方が動き出そうとします。しかし、それすらもカオスが事前に用意して置いたウォーク兵によって防がれてしまいました。


 「エエイ! 邪魔ねこれ・・・」

 「しかも切っても動きますよ!!」


 サードやルーズが文句を言っていると、カオスはフィフスから離れて近くの木の枝の上に飛び乗りました。


 「もう時間稼ぎは的にも十分だね。」


 すると、カオスが離れたことでフィフスの目の前にいたノギは、体から本人も見たことがない黒い魔力が流れ出しています。


 「お、オイ・・・ 何だよ? これ・・・」

 「『邪気』だよ。魔力の元になる成分みたいなもんさ。」


 さらにそこに、離れていた化け猫や魚人の死体からも同様のものが浮き出てきます。そして、それが引き寄せられるようにノギの体の中に入り込んでいきました。


 「ア! アァーーーーーーーーーーーーー!!」


 いきなり大量の邪気が入り込んできたノギは激痛に苦しみ出します。


 「ええい、何か知らんがやばそうだ。」


 唯一ウォーク兵に絡まれていなかったフィフスはノギに足を無理矢理動かして駆け寄ります。しかし、あまりに強い邪気の前に吹っ飛ばされてしまいました。


 「ウオッ!!」


 フィフスは背中から地面に落ちましたが、受け身を取って痛みは緩和しました。すぐに立ち上がってノギの方を見ると、断末魔を上げながら邪気に飲み込まれていってしまいました。



 「嫌だ! イーーーーーヤーーーーーーダーーーーー!!!・・・」



 そうして出来た邪気の塊の前にカオスは着地しました。塊はみるみる大きくなっていきます。


 「レディース・・・ アーンド、ジェントルマン!! 皆様長らくお待たせいたしました。今から誕生するのは、この戦いのラストを飾るメインイベント! それでは紹介いたしましょう。」


 そうしてカオスが左手を上に上げると、後ろで邪気の塊が突然はじけました。


 するとその中から、どこかロバに近いような不気味な風貌をした、フィフス達、この世界の住民ですら見たことのない魔獣が現れました。


 「・・・ こいつは・・・」


 カオスは一人楽しそうな感覚で紹介を続けます。


 「この世界に生まれた新たな魔獣。 ・・・ええっと・・・ 名前どうしようかなぁ。考えてなかったし・・・」


 隙を突いてルーズが風刃斬撃を放ちましたが、相手の方は見向きをせずに軽々とそれをかわしました。そして地面に綺麗に着地すると、ピンと何か閃いたようです。


 「ああ、そうだ!! この人、嘘つきの勇者だったんだし、そっから取って・・・



 ・・・『ライヤー』ってことで。よろしく。」 


 立った今名前を付けられた魔獣、ライヤーは、その雄叫びを天に響く勢いで叫び出しました。





 「ウオァーーーーーーーーーーーーー!!」

<魔王国気まぐれ情報屋>


ノギが魔獣になってしまう展開は、モチーフ元であるピノキオにおいて主人公が悪事をしてロバになってしまう展開を元にしています。


よく分からないままに悪事に荷担するとろくな事にならないということですね。

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