第3話 異世界来ちゃいました・・・
「・・・」
「・・・」
音が静まった部屋の中、向かい合っている二人は一方は威圧、もう一方は混乱で黙り込んでいました。
『こいつは・・・ なるほど<召喚術>か・・・ 相手は一人、おびえてるようだが・・・ これは罠か?』
『ななな何ですか!? も、もしかして・・・ 願いを叶える、魔人さん・・・ とか? し、しかし・・・ どう見ても魔人ってより赤鬼なんですが・・・ 』
遅々として進まない状況にフィフスはさすがに業を煮やして、口を開いた。
「・・・ おい!!」
ビクッ!!
声をかけられたことに瓜が驚いていると、フィフスが続けます。
「ここはどこだ?」
しかし瓜は無言のままでした。人見知りの影響であります。それに気付かず、フィフスは怒りながら繰り返して言いました。
「もう一度言う。ここはどこだ?」
なおも瓜は震えて黙っています。進展のない状態にフィフスは痺れを切らしてため息をし、立ち上がった。そして右手を銃の形にして瓜を方向を指しました。
「このまま黙ってんなら、少々手荒い手を使わせてもらうぞ・・・」
『え、何かやばい感じ?』
フィフスの右人差し指に火が発生しました。そしてあきらかにその攻撃は、瓜の脳天を狙っていました。
『ま、罠なら罠でこうすりゃなんか起こるだろ。技を放つふりをして驚かすか。』
「こ、ここは・・・」
根負けした瓜が口を開きます。しかし声が小さかったことでフィフスには聞こえず、彼は術を放ったのです。
『<火炎術> 火花弾 』
するとそのとき・・・
バラバラバラバラバラバラバラバラ!!
「ギーーーーーーーヤーーーーーーーーー!! 」
突如フィフスの体を電撃が襲い、彼を黒焦げにしました。
「・・・ カハッ・・・」
そしてフィフスは煙を吐いて前に倒れました。目の前の状況が読み切れないものの、さすがにマズいと感じた瓜は彼の近くへと駆け寄りました。
「あ、あの・・・ 大丈夫ですか?」
相手の反応はなかった。しかしその次の瞬間フィフスは顔を瓜の方に向けました。
「テメー、一体俺に何しやがった!?」
「ヒッ!! な、何も・・・」
「声が小さい!!」
「す、すみません・・・」
「ったく、どおなってんだ。技を出そうとすると発動する<雷鳴術>なんてきいたことねえぞ。」
疑問に思ったフィフスが倒れたまま辺りを見渡すと、床に落ちてほっとらかしにされている例の本を見つけました。
「何だ、これ?」
気になったフィフスがそれを拾って立ちました。そして本を改めて見た彼は、両目を飛び出させて驚いていました。
「ハァ!? こいつは!!」
「!?」
瓜が小声で聞くと、フィフスはまんま鬼の形相で彼女の方を向きました。
「お前、とんでもないことしてくれたな~・・・」
「・・・えっ?」
「どこでこいつを手に入れた?」
「そ、それは・・・ 何ですか?」
「お前、まさか知らずに作ったのか!?」
フィフスは本をわし掴みにし、左の人差し指で表紙を指しながら怒り気味のまま説明しました。
「こいつは<契約の魔道書> 人間が魔人を使役するために用意した特殊術の魔道書だ・・・」
「ま、魔道書?」
「表紙にそう書いてるだろ。」
「そ、そう・・・ ですか・・・」
「そうですかって、まさか読めないのか!?」
「は、はい・・・」
それを聞いてフィフスは動揺し、考え込んでしまいました。
「そんなはずはない。いくら遠くへ飛ばされようと、文字はどこの国も同じはず・・・ ッン?」
フィフスは部屋の奥にあったカレンダーに目がいきました。そして疑問を感じて近づきました。
「これは・・・ 文字か。 何て書いてるのか意味不明だが・・・ ハッ!!」
突然フィフスは思い立ちました。しかし・・・
『いやいや、さすがにこの考えは無理があるだろ。窓もあるようだし、そこから外を見れば少しは落ち着くだろ・・・』
そう思って窓の外を除いてみると・・・
ブーーーーーーーーーーーン!!
そのとき、ちょうど一台の自動車が通り過ぎました。それを見てフィフスは絶句して固まった。心配になった瓜が近づきますと、フィフスはさっきまで打って変わってか細い声で聞いてきました。
「なあ・・・ 本当に、ここどこ? 国名は?」
瓜こ声で答えた。
「に、日本です・・・」
フィフスはその後少しして崩れ落ち、四つん這いの態勢になっていた。
『まさか・・・』
「あ、あの・・・」
『いや、見たことのない文字、見たことのない動く物体、見たことのない道、間違いねぇ。』
「本当に・・・ 大丈夫ですか?」
『ここは、俺の知らない、<異世界>ってことかよーーーーーーーーーーーーーーー!!!』
フィフスは状況の悪さに大体気が付きました。
数分後、二人はその場で座り込み、腹を割って話し合うことにした。しかし瓜の性格のせいで一切の進展がありませんでした。
「あの、その・・・」
彼女の方もどうにか話そうとしていることもあり、フィフスは頭を抱えていました。
『さて、どうにかして話だけでも聞けたらいいんだが・・・』
フィフスは近くにあった魔道書を開いて黙読していると、途中でめくるのをやめました。
『ほう、これはちょうどいい。試すか・・・』
「ど、どうかしましたか・・・」
『もしもーーーーし!!』
「は、はい!? 何でしょう・・・
・・・て、あれ?」
瓜は疑問を感じた。前方にいるフィフスは一切口を動かしていなかったからです。
「よし、確認OKだな。」
「今のは、一体・・・」
フィフスは本を右手で振りながら続けました。
「この本に乗ってた。どうやら契約した二人はテレパシーができるらしい。これなら話せるか。」
「ど、どうやって・・・」
「俺に伝えたいことを思い浮かべて送る感じだ。とりあえずやってみろ。」
瓜は胸に手を置き、やってみました。
『こ、こんな感じ・・・ でしょうか・・・』
「よし、上出来だな。これで話はできるな。」
『すみません・・・ 』
「で、お前は一体誰だ? 何で禁書であるはずの魔道書があるんだ?」
少し慣れてきたのか、テレパシーながらも瓜は自己紹介が出来ました。
『私は、町田 瓜 です。その本は、その・・・ 宅配便で届きました。』
フィフスはあどけない顔になり?を浮かべていました。
「俺は フィフス・・・
で、『たくはいびん』って何だ? 何かの術か?」
異世界育ちの彼には、よくわかっていないようだった。思いもよらない回答に瓜は冷や汗をかいていました。
「とにかく、どうにしろ俺はお前の願いを叶えるまで帰れないって訳だ。面倒なことをしやがって・・・」
『ごめんなさい、フィフスさん。』
『さて、その内容はっと・・・』
フィフスは本の中央の見開きのページを開きました。契約の内容は魔法陣の中心に書かれているのです。
「お、あったあった。とっとと叶えて帰るか・・・」
そしてフィフスはそれを確認した。しかしそれを見た彼は険しい顔になりました。
<たくさんの友達が欲しい>
『・・・ よりにもよってこれか・・・』
『あの、それで、どうでしょうか。私の願いは、叶うでしょうか・・・』
それを聞いたフィフスは小声でボソッとこう呟きました。
「却下だ・・・」
『えっ?』
フィフスはもう一度、今度は大きな声で言います。
「却下だ!! お前の願いは叶えない!! 帰る方法はほかに探す。」
「エーーーーーーーーーーっ!?」
瓜は思わず声に出して驚いていました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
<契約の魔道書>
かつて異世界の人間が魔人を使役するために作り出した特殊術の魔道書。本に血をつけた魔人に己の願いを叶えるまでの間支配権を握ることができる。願いを叶えた後に反逆を受けることが多かったため、今日では禁術として処分されていた。しかし、なぜか日本にそれが存在し、本に関わったことのないフィフスが召喚されてしまった。
<火炎術 火花弾>
火炎術の一番基本の術。指先に火を発生させて相手に撃つ技。威力は低いが小回りがきくため重宝する。
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