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第42話 それぞれの悩み

 一通りの話が終わり、部屋にいた他の人達は次々と自室に戻ろうと部屋を出始めた。しかし瓜は部屋を出てすぐに立ち止まった。


 「あれ、町田さん?」


 それに違和感を感じた平次。そしてその肩に手をポンと置くグレシア。


 「な、何だよ・・・」

 「ほら、こういうときこそアクションを起こしなさいよ!!」

 「ハァッ!?」


 小声でそう言うグレシアに、平次の心にまた雷が走った。そしてその脳裏にほんの数秒の間に高速で思考が回った。


 『な、何を言っているんだこいつは・・・ 今町田さんは悩んでいるんだぞ!! それをチャンスだと!? これほど彼女にとって失礼なことはないぞ・・・ 



 いや、待て・・・ もしここに俺が入ったら・・・


__________________________________________


<平次のアホな妄想タイム>


 うつむいている瓜にそおっと近づく平次。妄想だからか彼の顔がえらくイケメンになっている。


 「町田さん、何か悩み事かい?」


 平次はなぜかキラキラなオーラを纏っている。


 「アッ、石導君。」


 ※瓜が普通にしゃべっている時点で変ですが妄想なので気にしないでください・・・


 「実は、私・・・」

 「なあんだそんなことかい? 安心したまえ、全てこの、『石導 平次』に任せなさ~い!!」


 イケメン化された平次はキランッと歯を見せてドンッと胸を叩いた。


 そして平次は颯爽と瓜の困りごとを終わらせていく。その様子に瓜の顔も段々晴れやかなものになっていき、その目も煌びやかに輝いていた。


 「石導君、フィフスさんよりかっこいいです!!」


 平次のハイスペック差に、見たフィフスですら悔しそうな顔をする。


 「クッ・・・ 負けたぜ・・・」


 そう言ってフィフスはロマンチックな雰囲気の二人を置いて去って行った。そして平次は目の前のときめいている瓜にイケメンスマイルを見せる。


 「町田さん、これでいいかな?」

 「は、はい・・・」


 明らかに瓜の顔は赤面している。そして顔所が次に言ったのは・・・


 「石導君・・・ いや平次君!!」

 「な、なんだい!?」


 「私、あなたのことが好きです。大好きです!!」


 「町田さん・・・ いや、瓜ちゃん 俺の方こそ・・・」


 そうして煌びやかな背景に包まれていき、二人の影は互いの距離を近づけていってついにその唇が重なっていった。


_________________________________________


長ったらしい妄想終了・・・


 ・・・よぉうし!! これならいける!! ここでアタックして関係を進めてやるぜ!!!』


 ご都合主義な決意を固めた平次は早速瓜に近づいてみた。しかし妄想と違って下心満載だったこともあって歩き方自体が変だった。それを後ろから見てグレシアは・・・


 『キモっ!!』


 と単純に思った。最早顔すら気持ち悪くなりながら平次は瓜に話しかける。


 「ま、ままま・・・ 町田さん!! な、何か・・・ おな、おな、お悩みがあるのかな? よ、よけ、よければ・・・ この、石導 平次に相談してくれたまえ!!!」


 ドンッ!!


 「イッテテ・・・」


 自分の胸を打って痛がっている。あまりのキモさにグレシアは後ろで吐きかけているが、瓜はまだうつむいたままだった。


 「・・・ 大丈夫・・・ ですので・・・」


 いつもよりどこかどんよりとした小声でそう言うと、すぐに瓜は廊下の奥へと進んでいった。


 「町田さん?」

 「平次、」


 平次はグレシアに声をかけられその方を向く。すると彼女は汚物を見る目で言った。


 「・・・ シンプルに・・・ キモかった!!」

 「ハア~!!?」


 平次はさっきの自分の姿のことを聞いて驚き、そしてそれを瓜に見られたことに大きなショックを受けていた。


_________________________________________


 城の中の廊下、誰もいない場所で瓜は窓枠に両腕を置き、その上に顔を乗せて一人考え事をしていた。


 「・・・」


 彼女は、ルーズの言っていたことを重く受け止めていたのだ。



 「王子は貴方を救う際の術で、現在深刻な魔力不足。いわば体力が底をついている状態になっているのです。」



 『私のせいで・・・ フィフスさんがあんなことに・・・』


 瓜はより顔を渦組めて思った。


 『思えば・・・ 私はいつもフィフスさんに助けられてばかりでした。ピンチになったときも、普段の友達作りでさえ、彼の助けを借りなければ何も出来なかったです・・・


 ・・・私の方は、ただ迷惑をかけているだけなのに。』


_________________________________________


 その頃、ルーズはフィフスの部屋にて自分がいない間の服などを用意していた。黙々と作業をしているルーズと、今だベッドで寝ている王子。


 部屋に沈黙が続いていたが、ふとしたときにルーズがこんなことを言い出した。


 「・・・ 本当に言われたとおりでしたね。」

 「ア? 急にどうした?」

 「瓜さんのことですよ。王子の言っていた特徴に完璧に当てはまっていたので・・・ 特に最後の一つが。」


 ルーズの言うことに、フィフスは機嫌を悪くしながらシカトを決め込んでいた。しかしそこに質問が飛び込んできた。


 「それで、瓜さんには言っているんですか? あのことを。」


 流石にフィフスも寝返りを打ちながらそれには答えた。


 「言える分けねえだろ。言ったらこの関係が軽く壊れちまう・・・」

 「だからって嘘までつきますか?」

 「嘘だと?」


 とうとうルーズは振り返って言った。


 「魔道書のことですよ。彼女からは王子が血を入れた覚えがないと聞きました。なぜそう言ったんです?」

 「・・・」

 「あなたはこれまでに一度だけ、契約の魔道書にちを入れていますからね。」


 フィフスは一時無言になって一人の少女のことを思い出していた。そしてルーズに向かってこう答えた。


 「・・・ しょうも無い事だよ・・・




 ・・・ただ、友達をほしがったアイツに・・・ 少しばかり思うところがあったのさ・・・」


 「失う怖さを知っていても・・・ ですか?」


 フィフスはまた黙り込み、再び寝返りを打って目元を右腕で隠して眠った。


 「そうですか・・・」


 ルーズはそれ以上は何も聞かず、また黙々と作業に入った。


 『また同じ轍を踏まなければ良いのですが・・・』



<魔王国気まぐれ情報屋>


魔人のモチーフ


・キンズ

『赤ずきん』より赤ずきん


・勇者ノギ

 『ピノキオ』よりピノキオ

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