第41話 同期三人組
壁にめり込んでダウンしたフィフスとグレシアの代わりにルーズが挑むことになった。相手であるノギも自分の剣の強さを棚に上げてその勝負に挑む気満々だ。
「ほお、やる気か? 目的は獄炎鬼だったんだが・・・ お前の首もついでに土産にするか。」
するとノギはまた聖剣ホープを構え、複数の術を同時に発動しようと魔力を込めた。しかしそのとき、異変が起こった。
・ ・ ・
「・・・ ん? あれ・・・」
魔力を込めても、ホープが術を出すどころか全く光りすらしなかったのだ。剣の仕組みを知らないルーズは疑問を浮かべていたが、逆にノギは剣に異常が出た途端に顔から大量の汗をかいて明らかに焦っている様子だ。
「フ、フンッ! フンッ!!」
彼自身はその事を誤魔化そうとしているのか、ノギはホープをブンブン振り回していた。しかしどういう訳か剣は技の一つも出さない。その様子に壁にはまったままのフィフスが感付いた。
「アイツ、まさか・・・」
流石に痺れを切らしたルーズはノギに一発殴り込んだ。剣の不調に気が散って気付いていなかった彼は攻撃を直撃した。はずだった・・・
プスーーーーーーーーー!!・・・
ルーズの攻撃が当たる直前に突然ホープの刃から煙が飛び出し、彼の動きを妨害したのだ。すぐに煙はやんだが、そこにノギの姿は消えていた。
「・・・ 逃がしましたか。」
そうと分かればと帰ろうとするルーズに、頭上から声が聞こえてきた。
「「オイ!!」」
ルーズが顔を上げると、未だに壁にはまっているフィフスとグレシアが険悪な顔をしていた。
「てめえ・・・」
「アタシ達のこと忘れてない!?」
「ああ、スミマセン。忘れてました。」
ルーズは自分の腕を戻し、術を使って二人を解放すると、一旦状況を整理するためにその後やって来た魔王国の兵士にこの場を任せて一行は魔王城に戻ることにした。
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「・・・ で、何でこうなる?」
城に戻ったフィフスはルーズによって自室のベットに拘束されていた。それを瓜が心配そうに見てくる。
「回復しきっていないのにいきなりフルパワーで炎を出すからですよ。しばらくは大人しくしていてください。」
フィフスの拍子抜けした姿に部屋にやって来たグレシアと平次が揃って手で口を押さえて笑っていた。
「プ~クク・・・ 随分と無様ねフィフス。」
「誰のせいでこうなったんでしたっけ?」
「いやあ、実に残念だ。まあ安心しろ赤鬼。町田さんは俺がきっちり守ってやるから。」
「その台詞言う奴大体ろくな目に遭わんぞ。」
その瓜はフィフスの見たこともない疲れ姿に駆け寄っている。その方にはユニーが乗っかっていた。
『フィフスさん、いつからこんな・・・』
フィフスは瓜に剣の副作用については話していなかった。彼女の性格上また自分を責めると思ったからだ。
しかしこうなってしまえば仕方ないと、ルーズはフィフスからの口止めされていたことを無視して話し出した。
「瓜さん、今の貴方には隠さない方が良いですね。実は、王子は貴方を救う際の術で、現在深刻な魔力不足。いわば体力が底をついている状態になっているのです。普通ならば何日も寝込みますが、この方の回復力は尋常じゃないので・・・」
「お前が言うな・・・」
「しかし回復しても油断は大敵。しばらくの間は魔術の使用は厳禁だったんです。ご報告が遅れて、すいません。」
ルーズは瓜に頭を下げて謝った。
そうすると、やはり瓜は黙り込んだ。フィフスは話を切り替えようとルーズに言った。
「ルーズ、帰って早速だが仕事をやってほしい。あの勇者について調べろ。」
「相変わらずのブラック労働ですが、承知しました。」
さも当然のごとく言う二人に平次が割って入る。
「待て待て、一人間の事なんてこの国で分かるのか?」
「そこはご安心を。メガネさん。」
『こいつまで「メガネ」呼ばわりかよ・・・』
内心そんなことを思いながら立っていると、ルーズは机に紙と鉛筆を用意してさらさらと鉛筆を動かしてノギの顔をそっくりに書き上げてしまった。
「これが例の勇者か?」
「おお! 流石ルーズ。相変わらず器用なものね~・・・」
じいっと見る平次と関心するグレシア。彼女の言うことに平次は反応した。
「ん、相変わらず? お前こいつと知り合いなのか?」
「知り合いも何も、こいつもアタシの修行仲間よ。」
「ハイッ!?」
「何驚いてるのよ。前の話の回想シーンで『流石です、王子。』て言ってたじゃない」
※第十六話より
「ごく自然にメタいこと言うな!! というかあの台詞こいつだったの!?」
話を戻そうとルーズは咳き込んだ。
「コホンッ!! とにかく、これを持って僕は人間の国へと向かおうと思います。見ての通りこの姿ですし。」
平次がルーズの姿をまじまじと見る。確かに彼の今の姿はどう見ても人間だ。認めたくないがついでにイケメンでもある。だからこそ平次は聞いた。
「そ~いや、ルーズだっけ? お前何の魔人なの?」
「何って・・・」
部屋にいた魔人三人は声を揃えていった。
だが?」
「「「・・・『人狼』だけど?」
ですが?」
その一言で平次は内心に雷が落ちる程の衝撃を受けた。彼の思う『人狼』のイメージ。それは読者のあなた方と同じ、『人狼ゲーム』であった。そこでの人狼といえば・・・
『やばいやばいやばいやばい・・・ これもしかして俺食われる寸前なの!? ていうか今改めて見たら・・・』
平次はフィフス、グレシア、ルーズを順に見る。そしてある一つの結論にたどり着いた。
『鬼に魔女にオオカミって・・・ 童話の悪役勢揃いじゃねーーーーか!!!』
平次は現状にとても不安になります。そして密かにこんなことを思いました。
『いざってときは・・・ 町田さんは俺が守らないと・・・』
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その頃のノギは、人間側の国の森林に退却していた。
「クソッ!! 何で急に使えなくなったんだ?」
ノギはホープの刃をよく見た。しかし一件どこにも異常は無い。その事で頭を抱えていると・・・
「あ~・・・ やり過ぎちゃったか~・・・」
「やり過ぎだと? どういうことだ?」
当たり前のように会話をしていたが振り返ると共にノギはカオスがいることに驚いた。
「お前! いつの間に!?」
「どうも~ 途中経過を見に来ました。どうですか?」
「どうもこうもあるか!! 貴様、この剣は最強ではなかったのか!!」
どうやらホープはカオスがくれた物だったようだ。
「最強とは言ったけど、容量切れがないとは言ってないですよ。初めての剣に調子に乗りすぎましたね~・・・」
そう言われてノギは味の悪い顔をしながら悪態をつく。
「ならばそうだと事前に言っておけ!! おかげで俺は死にかけたんだぞ!!」
「おや? あの程度でですか? 伝説の勇者様が!?」
カオスは首を横に傾げ、頬を膨らして笑いかける。それにノギは顔を近づけて彼に威圧をかけた。
「分かっているのか? 俺の力があれば、お前ごときすぐに消すことだって出来るんだぞ!! もう少し立場を考えて動け!!」
「おお、怖い。でもこのまま貴方の国で、獄炎鬼が生きてることが分かれば・・・
・・・損をするのは貴方ですよねえ?」
ノギは悔しそうな顔をして黙り込む。そこにカオスは更に提案をした。
「まあ、任せてくださいませ。こちらから頼んだからには、最大限サポートさせていただきますので。」
カオスは少し二イッと笑った。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・キャラクター紹介
{ルーズ}
種族 人狼
主人 フィフス
役職 王子側近の使用人
年齢 16歳
誕生日 8月10日
身長 171cm
性格 真面目
家族構成 父 母
使用魔術 疾風術
好きな物・こと 料理レシピ開発
嫌いな物・こと マナーの悪い人
好きなタイプ 執事心を動かすお嬢様
将来の夢 目標は日々考え日々叶えるものです
モチーフ 『三匹の子豚』 『赤ずきん』などよりオオカミ
『美女と野獣』より野獣