第37話 魔王国ぶらり旅
翌朝、朝食などの朝の支度を終えたフィフスは城の裏庭である事を確認していました。後ろで見物していたルーズの隣に、城の窓から見て気になった瓜がやって来ました。
「おはようございます、瓜さん。」
「あの、彼は・・・ 何を・・・」
風呂から上がって口調が元に戻っていましたが、耳の良いルーズには十分聞こえていました。
「剣の稽古ですよ。」
「それって・・・ 切れないって・・・」
「おや、あの剣についてはご存じのようですね。なら話は早いです。」
二人が奥で会話しているとき、当の本人は動きを止めて剣の刃をじいっと見ています。
『この剣は何も切ることが出来ない・・・ そう思っていたのだが・・・』
フィフスは化けゴウモリとの戦闘を思い出していました。
『あの時、確かに俺は瓜を真っ二つに切っていた。でなければ化けゴウモリは消滅していない。だが・・・』
フィフスは今度は昨日の温泉での光景を思い出しましいました。
『服を見てもしやと思ったが、瓜の体には、切り傷の一つも無かった。』
その直後に切った部分の下にある物を思い出し鼻血を吹きかけたがもう一方の手で抑えました。
『ブッ!! い、今はその事は忘れておこう・・・ とにかく、この剣は一定条件下で切れ味を発揮できるはずだ。』
ある程度考えたフィフスは持っていた剣を構え、自分の目の前にある修行用の岩に綺麗な線を描いて切りかかりました。とりあえず物は試しだと思ったのです。しかし・・・
カーーーーン!!
ビリビリビリビリ・・・
「イギギ!!?・・・」
岩には少しのひびも入らず、逆に勢い良く剣が当たったときの衝撃がもろにフィフスに流れ、彼は身震いをして倒れました。
「王子!?」
「フィフスさん!?」
それを見て心配になった二人は駆け寄りました。幸いなことにフィフスはすぐに起き上がりました。
「あ~・・・ ビビッときた~・・・」
「いきなり無茶をしないでください。」
『大丈夫ですか?』
二人がフィフスの手を引き立ち上がらせます。助けて貰った彼は再び剣の刃を見ました。
『これは・・・ 自分でやるよりあの人に聞いた方がはやそうだ。』
フィフスは剣を鞘に戻します。そこに瓜を心配してサードがやって来ました。
「あ、いた! ウリーちゃん、心配したのよ。」
「さ、サードさん・・・」
サードは瓜以外が見えていないのかフィフスに無意識に突進してぶっ飛ばしました。
「ウゴッ!!」
「王子!!」
「あらフィフス、いたの?」
さっきのダメージもあってフィフスはピクピクしています。瓜はすぐに駆け寄りました。
「フィフスさん!! 『本当に大丈夫ですか?』 」
「ああ、姉上のはキツかったがな・・・」
サードは二人の会話を聞いて首を傾げ、質問をしました。
「あれ? セカンドお姉様から二人は友人関係って聞いたけど、変ねえ・・・」
フィフスは聞き返しました。
「何がだ?」
「だって、呼び方もさん付けだし、けだし、どこかよそよそしいっていうか・・・ 壁があるっていうか・・・」
二人はいわれてハッとなります。確かに友達と言い張ってはいますが、実際は話すにしてもたわいないことはあまり話していなませんでした。
今更になって築いた事実に二人は黙り込んでしまった。そこにサードは一つ提案をした。
「そうよ! フィフス、アンタ今からウリーちゃんに国を見せてあげなさいよ。」
「エ? 俺今から用事が・・・」
「何?」
サードは殺気のこもった目線でフィフスを見た。そしてにこっと笑いました。
「 ね? 」
すなわち拒否権はないということだ。フィフスはため息をついてこう言います。
「は~・・・ 仕方ない。瓜、支度しろ。ルーズ!」
「馬車の準備ですね。お任せを。」
かくして半強制的にフィフスは瓜に魔王国を案内する事になりました。準備をしようと城に戻ろうとする瓜に、サードはそっと耳打ちをしました。
「ウリーちゃん。」
「?」
その途端サードはまた悪い笑顔になりました。
「どうせならアイツにあだ名を付けてみたら。」
「あだ名・・・ ですか?」
「そうよ。このデートで少しでも距離を縮めていきなさい。」
「!! わ、私達は・・・ そういう・・・ 仲では・・・」
「何言ってんの~・・・ フィフスがあんなに誰かのために動くなんてそうそうないのよ。アタシはいつでも準備OKよ。」
「だから・・・ そういう訳では・・・」
瓜は顔を赤くしながら黙ってそこから走り去っていきました。
「あら、そんなに照れなくて良いのに・・・」
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ある程度ルーズの運転での馬車に乗り、城から離れた下町に着くと二人は降りました。
「それでは僕は失礼します。夜までには戻ってきてくださいね。」
「おう。ありがとうな。」
「そういう仕事ですので。では・・・」
ルーズは再び馬車を運転し、魔王城へと帰って行きました。
「よし、じゃあ寄りたいところもあるんで早速行くか。」
『あの・・・ その前に一つよろしいでしょうか。』
「ん? どうかしたか。」
『なぜユニーさんまでいるのでしょうか・・・』
フィフスの肩には、テンションが上がって鼻息を吹いているユニーがいました。
「ああ、スマン。久々に俺と一緒に出かけたいんだとよ。まぁ普段は大人しくて空気も読めるから、心配すんな。」
そこから二人と一頭は町の衣服店、飲食店、劇場と国のあらゆるお店を回っていきます。瓜はゲームで見るような物とは違うその光景に顔に出てワクワクしているようでした。
『なんだか活気にあふれてますね。』
「まあな、魔王は国民の貧困を生まないことをモットーにしているからな。」
「モットー?」
「ああ、名目上王家がある国だが、ここは実質民主主義の国だからな。」
『驚きです。私の思う魔人とは、全然違いましたね。』
時間もたち、歩き疲れた一行は高台の上にある公園のベンチに座って休んでいました。
「全然違うってのは、どういうことだ?」
『その・・・ 言いにくいんですが・・・』
「・・・」
『私の世界では、魔王や魔人は、みんなから恐れられる存在になっているんです。それで・・・ 私・・・』
フィフスはベンチから立ち上がると、台の端に立って国の景色を見渡しました。
「瓜、見てみろ。」
瓜はベンチから立ち上がって言われたままに高台からの景色を見渡しました。現代の日本とは全く違った街並みが一望できます。まさしく、童話やゲームに出てくるおとぎの国の王様の気分を味わった感覚です。
「わ~!!」
「綺麗だろ。お前の世界とは違った形でな。」
『なんだか、とても平和ですね。この国。』
景色に見とれている瓜の顔をふと見て、フィフスはふっと笑って顔を戻します。そして表情を変え、こんなことを言い出しました。
「そりゃあそうだ。なんせこの国は・・・」
そこにふと風が吹き抜け、二人の髪を揺らします。
「・・・行く当てのない魔人の集落だからな。」
「・・・エッ?」
この話を執筆中に作者が心から思ったこと。
「アアアーーーーーーーーー、フィフスと瓜のデートシーン絵で描きたかったーーーーーーーーーーーーー!!」
説明しよう。作者は幼少期から絵心がないのだ。
後ろで見ていたフィフス
「なんか・・・ 乙。」