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第340話 お誕生日 おめでとう

 火華との戦闘に勝利し、帰路にたった一行。それぞれがそれぞれで極度の疲労を感じて帰ってすぐに深い眠りに落ちました。

 囚われていたフィフスが戻ってきたことによる安心感で張り詰めていた緊張が途切れたこともあったのでしょう。


 そんな中でも一番の年長者である信は、その時間の間も働いて囚われていた人達の事を解決しようと処理をしていました。

 すると彼のラボの中に誰かが入って来た。信はそれが誰なのかをなんとなく察します。


 「眠れないのかい? 五郎君」


 やって来たのは、火華の拘束から解かれたフィフスでした。


 「ここまで散々眠らされた身なんでな。今更横になっても寝付ける気がしない」


 「ごもっともだね。じゃあせっかくだし、作業を手伝ってくれない?」


 軽く笑いながら働くように頼む信ですが、フィフスはこれをいつもとは違ってすんなり受け入れました。


 「もともとそのつもりだ。認めたくないが、今回の件は俺が皆を巻き込んだからな」


 信はいつもとは違うフィフスの消極的な姿勢になっていることに信は笑顔を引っ込めました。


 「そう・・・ まあ確かに色々ややこしいことにはなったけど、火華は別の人達もかなり攫われていたから、僕や経義君達はどちらにしろ動いていたんだけどね」


 「ま、それもそうか・・・ だが・・・」


 フィフスの目付きが鋭いものに変わります。これには信に対する怒りも混じっているようでした。


 「アンタ、今回戦闘に瓜を巻き込んだな」


 信の表情が曇りました。以前フィフスは信と手を組むとなったとき、一つ条件を突き付けていました。


 瓜を指示に巻き込まない。色々意図しない事があったとは言え、今回信は瓜を火華との戦闘に参戦させてしまったのです。


 かといってフィフスとしてもそこまで信を攻めることは出来ません。今回の火華の件で瓜がやって来たのは、彼自身を助けるためだと彼女自身の態度から示されていました。


 フィフスにとっても、まさか自分のせいで彼女を巻き込んでしまうとは思っていませんでした。自分自身をおごっていたことが分かってしまい、自分に対する怒りが大きく怒っていたのです。


 信はそんな彼の心境を見透かし、彼を出来るだけ攻め立てないように言葉を選んで口を開きました。


 「今回の彼女の行動については、アヒルが唆したこともある。僕にも責任があるさ。お互い様だよ。」


 「キレるはずの相手になだめられるだなんてな・・・ やっぱり起こる気が失せちまうよ。」


 「元々なかったんじゃないのかい?」


 「言うな。仕事手伝ってやるから」


 フィフスはこれ以上会話を続けて信によりなだめられる言葉をかけられるのが嫌に感じたために話を打ち切り、彼の仕事の手伝いを自主的に始めました。


 そうして時間は過ぎていき、書類整理が終了したときには、すっかり窓から朝日の光が差し込んでいる時間になっていました。


 「あぁあぁ・・・ 徹夜で仕事はしない主義なんだけどな。アヒルに帰ってから何て言えばいいのやら・・・」


 「この緊急事態なんだ。向こうさんのその手助けのために自分の鎧を瓜に貸してくれた。おとがめはしないだろう。」


 信は横で用意した椅子に座って休憩をしているフィフスの言葉に少し口角を上げ、右目を閉じてふと口にします。


 「それはそうとして、君、今日が何の日か分かっているのかい?」


 「あ? 何を言ってんだ唐突に。」


 この反応からして、フィフス本人は気が付いていないらしいようです。本日は五月二十五日。フィフスにとって年に一度の特別な日です。


 ですがこれに信はここで自分が言うよりも別の人物に言ってもらった方がいいと思い、敢えてここでフィフスにそのことを言うのはやめておきました。


 代わりに信はふと息をつくと、フィフスに対して別の提案を口にしました。


 「君のおかげで仕事は終った。早く帰って上げた方がいいんじゃない? そろそろ瓜君が起きる時間だろう。」


 「それもそうだな・・・ 帰るか・・・」



______________________



 フィフスは信のラボを後にすると、長時間眠らされていたこともあっていきなり身体を激しく動かしたのが仇となり、歩いて行く彼の脚は徐々に重くなっていきました。


 『ダァ・・・ 長すぎる睡眠から起きて早々に戦闘して労働するのは・・・』


 フィフスは重たい身体を引きずるように前に動かしながら、この疲れに関しても自分の中で納得させようとしました。


 『まあ、とりあえず火華は倒したんだし、過程はどうあれ良かったと思っておくか・・・』


 フィフスはようやくの思いで自宅に辿り着き、鍵を開けようとします。すると鍵穴に鍵を入れる前に扉が勝手に開き、玄関にいた瓜が現われました。


 「ッン!?」


 突然現われた瓜にフィフスはここまで感じていた疲れが吹っ飛んでしまいました。


 次に何故タイミングバッチリに彼女が扉を開けたのか気になるフィフスに、瓜は少し寝ぼけているのかポカンとした様子になりますが、すぐにほがらかな顔をして事情を話しました。


 「龍子博士から連絡があって・・・ そろそろ到着する頃かなって・・・」


 「抜け目ないな・・・ あのドクター。」


 どこか気まずい雰囲気になり沈黙が流れ出す二人。しかしフィフスは一度余所に向けた視線を彼女の顔に向け、家に帰ってきてまずする挨拶を告げます。


 「その・・・ ただいま・・・」


 フィフスからの挨拶を受けて、瓜は自然とその表情を笑顔に変え、言われた言葉に対して当然の言葉で返事をしました。


 「お帰りなさい・・・ ゴー君・・・ そして・・・」


 更に瓜は挨拶に続き、今日この日の彼のために贈る言葉を口にしました。


 「お誕生日、おめでとう!!」





 Happy Birthday  フィフス





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