第339話 お帰りなさい
火の手が上がり、これまでの暴虐に対する罰をその身に刻むように燃やされ、消滅した火華。
フィフス達この場に集った一行は一部始終を目の当たりにし、この場での先頭が終わりを告げた事を受け止めました。
「フゥ・・・ なんとか終ったか・・・」
「ゴー君・・・」
瓜の弱々しい声に隣に首を向けるフィフス。
ヘルメットを外した瓜はここまでの慣れない戦闘による疲れやドタバタに流されていたことももちろんありましたが、フィフスが戻ってきた嬉しさに感極まって涙が溢れ出しているようでした。
「う! 瓜!?」
「ゴー君・・・ 帰ってきてくれて・・・ 無事でいてくれて・・・ 良かったよぉ!!」
瓜は溢れ出てくる感情のままにフィフスに飛びかかり、フィフスは驚きつつも手を広げて彼女の身体を受け止めます。
「おおっと・・・ 泣くな泣くな。お前はいつも感情に流されてったく・・・ありがとな」
泣きわめいている瓜を疲れた身体でなだめるのを少し面倒に思うところがありつつも、それ以上に何処か嬉しく感じて彼女の頭を撫でます。
二人だけの空気が流れ出す中、突然フィフスは横から蹴りを入れられて飛ばされてしまいました。
蹴りを入れた張本人であるサードを筆頭に、ここまで散々彼のために働かされた戦闘員達が信を除いて総動員でため込んだ怒りをぶつけるように横たわったフィフスを踏みつけ出しました。
「なにが「ありがとな・・・」よ。人に散々迷惑かけといてその一言で終らせるはないわよね!!」
「勝手にいい雰囲気になってんじゃないぞ俺達は引っかき回された立場なんだまず俺達に謝罪の言葉を言うのが先だろ!!」
「皆さんやめて! ゴー君ボロボロに!!」
瓜の頼みもあって踏みつけにしていた全員が脚を放しますが、フィフスは火華と戦っていたときよりもボロボロの身体になって涙目になってしまっていました。
「ゴ、ゴベンナバイ・・・」
瓜に続き、信とセカンドが戦闘員達に割って入って仲裁に入ります。
「まあまあ、今回一番の被害者は彼なんだし、攻めるのはそこまでにして上げようよ。」
「そうですわよ。皆怖い顔をしていて嫌です。もっと笑顔になって! ほら、スマイル!!」
鮮度が笑顔になることを勧めるも、善人揃ってそっぽを向いてしまいます。
セカンドはそんな彼女達に対して持っていた大鎌の持ち手先端を地面に音が立つ程の強さで突きながら闇のこもった笑顔を振りまきます。
「ほら! 笑顔」
「「「「ハッ! ハイッ!!」」」」
流石魔王一家の長女と言わんばかりの怖い圧力に恐怖を感じた五人は、途端に揃って直立しながら引きつった笑顔を即席で作りました。
「よろしい」
納得したセカンドが優しい笑顔に表情を戻すも、彼女の隣にいた信は呆れて冷や汗を流しながら反応に困っていました。
「アハハ・・・ 流石五郎君のお姉さんって感じかな。『怖・・・』」
ほっとらかしにされているフィフスでしたが、ここで小さいサイズに戻ったユニーが顔の近くまで走ってきました。
「よう、ユニー。お前にも色々心配かけたな。」
ユニーは嬉しそうに飛び跳ねながらフィフスの方に乗っかりました。フィフスにも嬉しい気持ちはありましたが、殴られた痛みと相当な疲労から退いて欲しいのが一番に来ました。
「ああ、ユニー。嬉しいのは分かったからそろそろ退いてくれないか?」
しかしユニーはテンションが上がってはしゃいでいるために耳に入っていないようで、跳ねるのをやめようとしません。
「おいやめろユニー・・・ やめろ・・・ やめろって・・・」
何度言ってのはしゃぐのをやめないユニーに、とうとうフィフスは怒って立ち上がりながらユニーの身体を右手で握り絞めました。
「いい加減にしろお前! 俺今結構痛いんだぞ!!」
ユニーはこれを受けてようやく上がりすぎたテンションを反省し、上がった眉を下げて身体を落ち着かせました。
「フゥ・・・」
フィフスもこれを受けて自分を落ち着かせ、ユニーを自分の左肩に乗せると、瓜の元にまで進んで彼女の方に軽く手を置き、少し頭を下げてから全員に告げました。
「んじゃ、色々あったけど終ったみたいだし、帰るか。」
「「「「お前が閉めんな! お前がよぉ!!!」」」」
その場の突っ込む要員全員が突っ込みを入れました。
一方、彼等が気配を感じないギリギリの距離から様子を見ていた人物が一人。仮面を付けた男、カオスです。
「オォ・・・ 倒しちゃったよ火華を・・・ すっご。」
カオスは肘を立てていた態勢をやめてしゃがんでいた脚を真っ直ぐにして立ち上がり、一息ついてから感想の独り言の延べます。
「へえ、中々やるじゃん魔王字君・・・ いや・・・ 今回の功労者は彼じゃないか・・・」
カオスは視線の向きをフィフスではなく、瓜に向けて仮面の中にある口を大きくにやつかせました。
「彼女、やっぱり僕の想定通りのとんでもない人物だ。やっぱり欲しいなぁ・・・ これから先の僕のためにね」
カオスは瓜の方向に右腕を伸ばし、何かを掴み取るように拳を握り絞めて降ろすと、一瞬の間に立っていた位置から姿を消してしまいました。