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第327話 対火華アイテム

 戦闘員各々が火華の分身体によって足止めされ、流れが止められてしまった夜の森の中。その一カ所にて容赦のない発砲音が響き渡ります。しかし次の瞬間に驚くことになったのは撃たれた火華人ではなく、彼女に銃を撃った信の方でした。


 「ナッ!!」


 相手の火華人はレーザーを頭に直撃して頭部上半分が焼失した直後、不気味に笑い声を上げ出しました。直後に残った下頭部から植物の細いツタが網を張るように上に伸び出し、形がまとまった途端に色を変えて元の姿に戻ってしまいました。


 「フフフフフ… ハハハハハ!!」


 「驚きの再生力だ。日の光も出ていないのに。」


 思わず科学者として関心してしまう信に火華人は自慢気に語り出します。


 「私達は異世界の植物よ。こんな遅れた文化の植物と比べられない程にね。」


 「おおっと、謎を見つけようとする科学者としてグサッ!! と刺さる言葉だ。意地悪なことを言うね、少女君。」


 「フウキよ、ヨロシクね科学者さん。」


 挨拶ついでにとフウキは触れ挙げた右掌からオレンジ色の花粉を振りまき、信にある程度近付いた途端に花粉を爆発させた。


 「ウオッ!!?」


 途端に後ろに身を引く信の足首に、着地した地面から生えたツタが絡みつきます。


 「おっと! 罠の用意も出来ているのか。」


 「昼間に現れた男のように脚を取り外したら逃げ出せるんじゃない?」


 フウキはそんな芸当が出来る人がそう中々いないことを理解した上で言葉をかけてきます。このまま追撃をかけて短期決戦に持ち込もうとしたフウキでしたが、攻撃の直前に信は何も抵抗しないことを不審に思って動きを止めました。


 「微動だにしないわね。返り討ちでも狙っているわけ?」


 「あ、バレちゃったか。動かなすぎるのも良くないね。」


 すると信の足下から突然熱気が排出され、自分の足首を絡めていた植物を近くにある雑草ごと燃やすことで拘束を解放し、瞬時に右に動いて銃を連射します。フウキは用心していたため回避するとまた話しかけて警戒を逸らそうとします。


 「こんなに一瞬で拘束を解くなんてね。」


 「たまたま君達の植物のサンプルを手に入れたからね。対策はさせて貰ったよ。」


 「へえ、随分自慢げじゃない。ならこれはどう!!」


 フウキは今度は口から吹き出す花粉を信の周りを囲い込むように吹き出し空中に固定しました。信は途端に何かを感じて身体の動きを止めます。フウキはそれを見て関心したように目を細めて顎を上げた。


 「ふ~ん… 勘がいいのね科学者さん。」


 「やっぱり、これ触れたらまずい奴かな?」


 「お察しの通り。その花粉はちょっとした刺激を受けただけで連鎖爆発するものよ。そこから少しでも動いてその軽い風圧で隣り合った花粉に触れた途端、 ボンッ!! ってわけ。」


 「ご丁寧にどうも。随分自慢のようだね。」


 ヘルメットの中で微妙な表情をする信に、フウキは彼を鼻で笑って自慢げな台詞を続けます。


 「当然よね。魔術が使える魔人ならまだしも、貴方はこの世界にすむ特殊能力のない住民。昼間のこのように手足がちぎれたとしても、これを逃れるのは無理でしょ。」


 「あの子用の対策か。てことは君達皆この芸当を使えるの?」


 「言ってどうなるの? 貴方はここで死んで、後に残ったものは私達の栄養になって貰うから。」


 するとフウキはまた追加で花粉を吹き出す構えを取った。信は一周回ってマスクの内で笑ってしまいます。


 「おおっと、ただでさえ追い込んでいる相手にオーバーキルをかけるのかい?」


 「そのまま動かないで長時間いられても邪魔なだけだから。安心しなさい。お仲間さんも皆すぐに私達のご飯になるから。」


 「そうかい。でも僕はここでやられるわけにはいかないんだ。帰りを待ってる人がいるんでね。というわけで、早く帰りたいからそろそろ君には退場して貰うよ。」


 一切焦っている様子がない上に威勢のいい台詞を吐く信にフウキは少しムカついた様子で眉をしかめました。


 「あっそ。減らず口はそろそろ閉じなさい!!」


 フウキは勢い良く口から信の位置に一直線に飛ばし、彼にトドメを刺しにかかります。しかしそこで突然彼女は吐き気に襲われ脚がよろめきました。


 「ナッ!?」


 視界も歪み、立ちくらむフウキの様子を見たことと周りを囲んでいた花粉が消滅したことで信は確信しました。


 「よし、そろそろか。」


 「何をした!?」


 動揺するフウキに信が歩き出しながら説明しました。


 「言ったでしょ、対策は出来てるって。本体に直接攻撃できたら良かったんだけど、出し惜しみをしてここでやられたら元も子もないしね。」


 よたついてふと下に視線を向けたフウキは、辺りにあるはずの火華の植物が全て枯れていることに気が付いた。


 「まさか毒!? こんなに長時間も流していたなんて。」


 「大変だったよ。火華(君ら)に効いて人には無害な薬を作るのは。でもそこは、動物と植物の違いのおかげで解決できたよ。」


 信は話を終えてすかさす銃からレーザーをフウキに撃ち込みました。胸に直撃した光線は彼女の身体を灰色に変化させていきます。


 「レーザーまで、特別製なんて…」


 「君の言うとおり僕は魔人じゃないし、手足を分解することも出来ない。でも…」


 信は空いていた左手で軽くヘルメットを叩いて彼女に示します。


 「僕には人より考えられる頭がある。人にはそれぞれの才能があるんだ。それを見ようともせずあざ笑ったのが、君の敗因だ。」


 フウキは悔しそうに何かを言いかけるも、直前に顔までレーザーの効果が侵食したことで動きが止まり、そのまま砕かれた粘土作品のように身体を崩壊させました。


 勝負が付いて銃を下ろした信。無言ながらも頭の中では他の戦闘員達のことを思っています。


 『さて、他の皆も上手くいっているといいけど。』


 信はその場から移動し、火華の本体がある場所にへと向かっていきました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・対火華用アイテム 他の植物には気概が出ないように配慮済み。


信「この作品に関しての動物、植物への危害はありません。」




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