第323話 対火華作戦
またしてもフィフス、そして何故かいないサードを覗いたメンバーがラボに集められ、全員の視線の先の信が手に持ったスプレーガンを披露した。
「完成したよ、対火華用装備。」
「はっや・・・」
「サンプル手に入れて半日も経ってないですよね・・・」
「ま、そこは僕のこの才能にあふれた頭があってこそだけどね・・・ アーハッハッハ!! ハッハッハ・・・」
信の異常とも言えるほどの仕事の速さに全員凄いを通り越して完全にドン引きしていました。信もこれに気が付いて取り繕っていた笑顔が崩れますが、「パンッ!!」と両手を叩いて空気を変えます。
「コホンッ・・・ 見ての通りのスプレーガン。平次君が持ってきたサンプルで調べて分かった奴らの弱点物質を詰めてあるよ。最も急場でこさえたから数に限りがあるし仕組みも単純だけどね。」
信の簡素な説明にこれまた信以外の全員揃って『ものの形を作り上げている時点でぶっ飛んでるだよ・・・』よとで言いたげな顔になりましたが、時間がないためにこの場は空気を読んで流します。
信は続いてラボの壁にとある画像を出現させ、全員に自分が考えた作戦について話し出します。
「僕の考えた作戦はこうだ。決行は今日の夜。植物は夜の方が静だからね。」
「異世界のものは全てがそうとは限りませんが、今回については当てはまるので賛成です。」
「思念君と白兎君の調査で奴らが巣作っている場所は大体特定できている。これ以上被害者が出る前になんとか対処をしておきたいんだが・・・」
「問題があるのね?」
話の分かっているグレシアの意見に信はコクリと目を閉じて軽く頷い来ながら両目を閉じ、左目だけ開けて顔を上げながら右手の人差し指を立たせて問題の詳細を説明します。
「ああ、大きく二つね。一つは奴らの数の多さ。木々に咲いた花から増えるとあって、プチプチ一体ずつ減らしていっても切りがないこと。もう一つは捕らわれている被害者をいつ人質に取られかねないことだ。」
「でも、なんで火華は回収した人達をすぐに全部吸収しようとしないのかしら? その方が効率いいはずなのに・・・」
「僕もそこ、気になっていたんだよね・・・ そこで一つ仮説を立ててみてみたんだけど・・・ 奴らは大きさこそそれっぽくなっているけど、まだ力をつききれていないんじゃないかな?」
「つききれていない? どうして?」
「そもそもとして常識的な樹木の成長のはやさをしていない。そこは異世界産ってことで納得でいるけど、それならいちいちチマチマと人を攫うなんてまどろっこしい真似をする必要性が分からない。」
「確かに、攫った対象もバラバラ。あのやり方ならいつこのように人攫いがバレてもおかしくないのに・・・」
信は続いて右手の態勢をそのままに中指も立たせて閉じていた左目も開けて二つ目の理由を言います。
「それにそれなら思念君達を取り逃がすのもおかしい。魔革隊の奴らの助けがあったとはいえ、自分のテリトリ-内からそう簡単に逃がすかい?」
「というと、火華にとって僕らが何体か分身体を破壊したのは実のところ向こうにかなり痛手を与えていたと?」
「まあ、奴らが現状どのくらい数をこさえられる力があるのか分からないからハッキリとはしないけど・・・」
信が火華の仮説を占めてモニターに顔を向けると、火華のいる森を一周囲むような配置で赤い点が均等に出現した。
「配置はこんな感じ。さっきの仮説から考えてもはやいとこ手を打って置いた方がいいのも事実だしね。」
赤い点の数は丁度この場にいる信も含めた戦闘員の数と合う。しかしこの事にそっと右手を上に挙げて意見を言い出しました。普段人前に話慣れない事もあってつい声かけだけ大声になってしまいます。
「あのっ!!・・・ 私も・・・」
「ん? なんだい瓜君?」
信が瓜の小さい声が聞こえずらかったことで彼女の顔を見てもう一度言うことを求めると、彼女は視線を受けて頭を下げてしまいながらももう一度今度は相手に聞こえるように口を開いて声を出します。
「私も・・・ 参加したいです・・・」
「ッン!!・・・」
「瓜・・・ アンタ・・・」
瓜はここでも腰を曲げて頭を下げて信に頼み込みます。
「足手まといにはなりません!! お願いします!!」
必死な瓜の態度。さっき木良の時もこれを見ていたグレシアは彼女の中にあるフィフスを助けたい思いに心の内から込み上げてくるものがありました。しかしそれでも、信の意見は変わりませんでした。
「却下だ。君は戦闘員じゃない。」
「分かっています・・・ でも、私は彼のテレパシーが出来るし・・・」
「くどいぞ。」
食いすがるように続ける瓜に経義が冷たい目線を向けながら突き放します。
「友人がやられて焦っているは、例え戦闘員だったとしても邪魔になるだけだ。今は大人しくしておけ。」
「でも!!・・・」
身を乗り出す瓜を後ろからグレシアが両手で彼女の両肩を押さえつけてきた。
「志歌さん?」
「落ち着きなさい・・・ フィフスが心配なのは、アタシ達も同じ・・・」
「じゃあ!!・・・」
「分かって!・・・ フィフスは、アタシ達が必ず助けるから・・・」
「・・・」
そこに鈴音も近づき、正面から瓜を諭してきます。
「悔しいけど・・・ シカシカ達の気持ちももっともだぞ・・・ ウチらと一緒に待っとこ、マッチー・・・」
「鈴音さんまで・・・」
瓜は沸々と抑えられない焦りを感じながらも結局自分の意見を受け入れてはもらえませんでした。
よろしければ、『ブックマーク』、『評価』をよろしくお願いします。