第316話 匂い追跡
平次から思わぬ手がかりを手に入れたグレシアは彼に強制的に案内させながら彼が花束を買ったという花屋まで向かいました。しかし残念ながら既に影も形もなくなっていました。当然ついさっきこの場所で買い物をしていた平次はグレシアより前に出て驚きます。
「あれぇ!!? さっきまでここに花屋があったのに!? どこいった!!? エェ!!?」
「チッ・・・ 足が速いわね。それともこれも奴らの技なのかしら?」
「技!? どういうことだよ!!?」
「うるさいわよ。とにかくその花束渡しなさい。」
「やだよ! これは町田さんに渡すプレゼントで・・・」
平次は抵抗して花束を背中に回してグレシアに取られないように逃げ出しますが、戦士であるグレシアからそんなことで逃げ出せるはずがなく、すぐに後ろを回って片手で掴まれます。
「アンタが何企んでんのか大体想像が付くけど、止めといた方がいいわ。」
「うるさい!!」
「渡して断られるか渡さず現在進行のままかどっちがいい?」
「なんで振られる前提なんだよ!! 微かでも希望があったって!!・・・」
「だったら大人しくその花束渡しなさい。今の瓜には必要なの。」
「はぁ?」
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ということで信が出勤したラボに連れて来られた平次は早速花束を渡したときに軽く笑われてしまいました。
「ハハハハ!・・・ 流石は平次君。君の不憫な境遇と幸の無さが初めて生きた瞬間だね。」
「それ褒めてんの!? それともけなしてるの!!?」
「後者でしょ。」
「即答するな!!」
同じ位置に密集している三人が盛り上がっているに対し、部屋の隅に立ち尽くしている少女が一人。友人甲斐ない事に重ねて一番現住に扱われている瓜です。平次が彼女が視界に入った途端、それまで叫んでいたのを抑えて心配する目付きになりました。
「町田さん・・・ あんなに悲しそうに・・・」
「分かったでしょ。今あの子は難しいときなの。」
「まあ重くならないでよ。これで対策が見つかるかもしれない。いや、見つけてみせるからさ。」
空気が重くなったのを見て信は彼等を明るくしようとウインクを送り、平次から受け取った花束に入った火華をサンプルに使って対抗策の研究を始めました。
「それでドクター、他のメンバーから連絡は?」
グレシアからの質問に信は振り返ることなく返事をします。
「三琴君や経義君からは何もなし。白兎君と思念君は店の場所を当たったけど君らと同じくもぬけの殻だったらしい。」
「おいおい、なんでそんなところに二人も配置したんだよドクター?」
今度は平次から来た質問。丁度ピンセットで火華の花びらを綺麗に採取した信は振り返っていつもと何も変わらぬ明るそうな顔で答えます。
「店が何のは予想済みさ。彼等は五感の一部が鋭いからね。そこから細かいことでも見つけてくれるんじゃないかと期待しているんだ。」
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と、信に妙な期待を向けられているのが伝わったのか、二人揃って身震いをするルーズと白兎。
「何でしょう、今のは・・・」
「さあ? でもある意味脅しがかったものが来た感覚・・・ ドクターってとこだろうね。」
「嫌な期待ですね・・・」
ルーズが機嫌の悪い顔をし、白兎が苦笑いを浮かべます。そんなたわいのない会話をしている最中でも、二人はどこかに向かって走り続けていました。ルーズの嗅覚を頼りに、火華の手がかりを追っているのです。更にそこでルーズが鼻をひくつかせてます。
「スンスン・・・ 匂いが濃くなってきました。近いです。」
「妙だ・・・ 随分簡単に見つかってくれるじゃないか?」
少し怪しさを感じるところがありながらも、時間的に余裕のない二人はそのまま手がかりを追って森の中にまで突入しました。
「とうとうこんな所にまで・・・」
「あからさまにテリトリーに誘われているようですね。」
しばらく走った先、二人は不自然に木々がなくなっている草原地帯にまで飛び出し、前にいたルーズが足を止めたことで白兎も合わせます。
「どうかした?」
「突然匂いの方向が変わりました。左・・・ いや、周辺一帯から近付いて来ている!?」
「ッン!!?」
ルーズは両腕を獣化させ、白兎はスーツを着込んでお互いの背中を重ねながら周辺一帯を見回して警戒します。
すると周辺の木々の枝の上や、幹の横から大勢の人影が姿を現しました。
「おおっとこれは・・・ 思ったよりの大歓迎で・・・ 岡見、コイツらについては知ってるか?」
「噂程度なら・・・ この世界の伝説上には、火華が落とした花は美女の姿に変身し男達を翻弄する。しかし本当はそんなものではありません。」
ルーズの説明の途中、影の何人かが出現しますが、全員揃ってその伝説通りの美少女達でした。これだけでは白兎もルーズの言っていることに疑問を浮かべるところでしたが、それはすぐに正されました。
その美少女達の後ろからは、同じような背丈でありながら頭が丸々緑のツタで構成され、顔となる部分に大きな火華が咲いている完全な怪物のそれでした。
「ああ・・・ 言いたいこと分かっちゃったかも・・・」
「ええ、あれが火華の分身の正体、『火華人』です。」
その瞬間、ルーズと白兎は軽く二十人を越えた怪物は女性によって囲まれてしまっていました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
匂いを追っていった先・・・
白兎「こ、ここは・・・」
ルーズ「紛らわしい花の匂い・・・」
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