第314話 二十四日 朝
しばらくの間遊び回り、休憩を取ろうと切り株に隣り合って座る二人。一落ち着きすると、フィフスの方から話を始めます。
「・・・なあ、シーデラ。」
「ん? なぁに?」
するとフィフスは顔を下に向けてどこか考え込んだような表情をし、もう一度シーデラの顔を見て質問をします。
「どうして、お前がここにいるんだ? だって、お前はもう・・・」
フィフスの話は、途中でシーデラの右手が頭に優しく触れてきたことで遮られました。
「私が・・・ どうかした?」
ふと小さな笑顔を見せるシーデラ。フィフスは頭を撫でられて恥ずかしそうに頬を赤くして彼女の手を離した。
「止めろよ・・・」
「フフッ・・・ どうしちゃったのそんな顔して。アホっぽ。」
「アッ?」
フィフスは流れで唐突に盛り込んできた蔑みに反応して赤らめていた頬を元に戻し若干苛立った目線を彼女に向けます。
「クスス・・・ 今度は怒りだした。ホント、アンタは見てて飽きないわね。」
「オイッ!!」
マズいと思ったのかシーデラは切り株から立ち上がってフィフスから逃げ出しました。フィフスはすぐに彼女を追いかけようと立ち上がりながらまた過去のことを思い返していました。
『そうだった・・・ シーデラはいつも、こうやって俺のことを会う度にからかって、楽しんでたんだったな・・・』
シーデラは振り返って挑発するように右手を振りながらフィフスに声をかけてきます。
「どうしたのよフィフス! アタシはここにいるわよ!! 速く来なさ~い!!」
わざとらしい言い方にまたフィフスは顔を歪ませながらも何処か楽しそうにまたこれを追いかけていきました。
現在時刻が森に入ってからすでに翌日の朝を迎えていることに全く気が付かずに・・・
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その朝になり、目を覚ました瓜。そして彼女が寝室を出ると、既に起きていた女性とすれ違いました。
「あ! 瓜、おはよう!!」
「おはようございます、アヒルさん。」
やって来たのは、信の妻の『龍子 アヒル』。彼女がいることから分かるように、瓜は現在信の家に再び寝泊まりしていました。
本人はこの状況について何故かは分かりきっていませんでしたが、グレシアからは・・・
「カオスの事は信用できないわ。こんなときに一人でいるのは危険よ。ユニーがいるとはいえ、保険をかけておくにこしたことはないわ。」
・・・と、言うことだそうです。押しに弱い彼女は例のごとく言いくるめられ、一度来たことがあるという理由で信の家にお邪魔する形になりました。
リビングに着くと、休日だというのに既に起きていた信が瓜やユニーの分も朝食を用意してテーブルの上に並べていました。
「やあ、おはよう瓜君。」
「おはようございます、博士。」
瓜は用意された席に着き、食事を始めます。その最中で信は話を始めました。
「カオスから渡された情報を元に、エデンの方で人捜しはしておいたよ。そこで周辺の人達からこんな話を聞いたよ。」
瓜はご飯を食べていた箸を止めて信の顔を見ました。
「それで、ゴー君の居場所は!?・・・」
「残念ながらそれについては分からなかったよ。それどころか、人捜しをするのに中々難易度の高い事態になってね・・・」
瓜が信の難しい顔を見ると、彼はそれに気付いて表情を誤魔化しながら向き合います。
「ああ・・・ そこに書いていた行方不明者の交流関係をたどって追跡しようとしたんだけど、その被害者達が揃いも揃って接する相手が少なくてね・・・ ほとんど情報が得られなかったんだ。」
「・・・そうですか。」
隠してはいても、信には瓜の気持ちが沈んだことが一目で分かります。そこに彼は少しでもましにしようかと自分で入れたコーヒーを飲みながら続きを話しました。
「ただ何も分からなかったわけじゃない。なんとか聞き込めた人や、消える直前の被害者に会った人から聞いたことに共通点があってね。」
「共通点?」
「なんでも全員その手に花束を持っていたとかね。遠目に見ただけだったから何が入っていたか分からなかったけど、くくっている包みの柄が全て同じものだったようだ。」
「じゃあ! その花束を渡したのが・・・」
「だろうねえ・・・ 今白兎君に店の居所を探らせて・・・」
プルルルルル!!・・・
二人の会話の最中、早速部屋に置いてある電話が鳴り響いた。席を立った信が受話器を取ると、丁度話題に上がっていた白兎からのものでした。
「ああ、白兎君か。丁度君の話をしていたところだよ。それでどうだった?」
「楽しそうに朝食を取っているところすみませんけど、悪いニュースが上がりましたよ。」
「悪いニュース?」
「目撃者の話から店の場所が発覚して今着たとこなんですけど、そんな店は影も形もありませんでしたよ。」
「影も形もない!?」
「商店街の人から聞いても、そんな店なんて知らぬ存ぜぬと・・・ 向こうさんはかなり動きが素速い上に、用心深い質なようです。」
「そうか・・・ でもそこからなんとかするのが君の取り柄だろう?」
「ブラック労働押しつけないでもらえます? ま、ここまで来たら頑張りますよ。」
白兎は電話を切ってポケットにしまうと、後ろを向いてそこにいる相手に声をかけます。
「だ~ってさ、期待されてるみたいよ俺達。」
「ですね・・・ やれるだけ痕跡は追ってみますよ。」
返事をしたのは、いつもより何処か真剣な顔をしたルーズでした。
<魔王国気まぐれ情報屋>
二十四日にこの話を投稿することになっていますが、完全にたまたまです。
フィフス「そこは言わなくていいだろ・・・」
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