第313話 呉越同舟
瓜達この世界に人物達は、カオスはハッキリと言ってのけたことに戦慄して身体を固めてしまいました。
「そんな・・・ ゴー君が、戻らない?・・・」
「ああ、絶対にね。」
確信があるように言うカオスに、瓜は「そんな・・・」と口がこぼれてふらついてしまい、サードがそれを受け止めます。
「ウリーちゃん!!」
「マッチー! 大丈夫か!?」
心配になって声をかけるサードとグレシア。
「あ、ありがとうございます・・・ 大丈夫・・・ ですので・・・」
瓜がお礼を告げて寄りかかるのを止めると、サードはカオスを睨み付けて敵意むき出して聞きます。
「で、なんでわざわざアンタがそれをアタシ達に言うわけ? あの馬鹿がいなくなるのなら、魔革隊に取っては邪魔者がいなくなって万々歳じゃないの。」
カオスは彼等の周辺をウロウロと歩きながら自分のペースに戻って返事をします。
「それだけなら僕も別にいいんだけどね・・・ あの植物、見境がないからねぇ~・・・ 魔力持ちの人間までそれで養分にされたらこっちの計画にも支障が出る。場合によっては溜まったものじゃないんだよね~・・・」
カオスは見張られながら彼等の一周くるりと歩き回ると、身体を反転させて一行に近付き、腰を引かせてへりくだりながら瓜の前にまで歩いてきました。
「ということで、こんなこと普通ならあり得ないんだけど、僕から君達に一つ提案。」
そう言うとカオスは自身の右手を瓜に差し出し、首を少し横に傾げてハッキリ彼女に伝えました。
「ここは一時休戦して、僕達魔革隊と手を組まないかい?」
「エッ?・・・」
「悪い話じゃないと思うよ、こっちの知っている情報はそっちに渡すし。」
困惑する瓜。彼女は以前にも船の中に監禁されていたときに同じようにカオスから誘われたことがあり、そのときは断っていました。あの時は自分の身柄に関することだったのですぐに距離することが出来ましたが、今回は事情が違います。
『この人は、これまで色んな人を騙して魔人と契約させてきた人・・・ でも、こうして迷っている間にも、ゴー君の身が危ないかもしれない・・・』
視線を下げて拳を強く握り、大いに悩む瓜。これを楽しそうに見るカオス。少し沈黙が流れた後、瓜は震えながらも自身の右手をゆっくり上げだし、カオスの差し出す手に重ねようとしました。
『ここで、私が乗れば・・・ 少なくともゴー君は・・・』
カオスが仮面越しに口元をニヤつかせて彼女の手を掴もうとしたそのとき、サードとグレシアが前に出て彼の右手を弾いた。
「イッタ!・・・ 何するんだい? 手は組まないって事で、いいのかな?」
不満そうな顔をするカオス。しかし二人は周りの男性陣とアイコンタクトを取り合い、軽く頷いてから前を向くと、グレシアが代表して返事をしました。
「いいえ、特別に乗ってあげるわ。」
「ただし、今回だけよ。」
サードが補足を付けながらも、カオスはふと頭を下げます。するとそこから腹を抱えて笑い出し、そのまま頭を上に上げて背中をのけぞりました。
「ハハハハハ!! ハハハハハハ!!! こういうのをこの世界では『呉越同舟』って言うんだっけ? バッチバチに警戒されているのが残念だけど、まあいいや。契約成立って事で。」
するとカオスは暗闇の方にバックステップをし、先頭にいたグレシアとサードがこれを追いかけるも、彼の姿はまた消えて無くなっていました。
「アイツ・・・ 楽しむだけ楽しんで・・・」
「・・・ん?」
後ろにいたルーズが暗闇の地面から発する違和感のある音を耳で拾いました。そこで彼がグレシア達のいるところまで歩いてしゃがんでみると、カオスが置いたらしき紙の束がありました。
「これは・・・」
書かれている文字は異世界のもので日本人に解読することは出来ませんでしたが、ここにいる魔人三人は読むことが出来ます。
「ルーズ、それは?」
「どうやら彼の言っていた情報のようですね。見事に向こうの都合の悪いことには触れられていませんが・・・」
ルーズ曰く、どうやら手に持っているカオスからの情報は、国際間で受け渡すような文書と同じように自分側に都合の悪いことについては一切書かず、ぼかされているものだったそうです。
しかしこんな紙でも、今の彼等からすれば十分な情報にはなり、信に伝えると対策が出来そうです。そこで彼等はすぐに信の所に駆け寄って書いてあることを翻訳して伝えました。
「なるほどね・・・ 了解した。出来るだけ手は打っておくよ。」
了承した信にグレシアは彼の耳元に近付いて補足を付けました。
「それと、もう一ついいかしら?」
「何だい、さっきよりも真剣な顔をしているけど。」
「カオスのさっきのこと・・・ というより・・・」
「瓜君のことか・・・」
グレシアが離す前に察して言った信。彼女は軽く頷き、彼に真剣な頼み事をします。
「理由は分からないけど、あの仮面の男はどうにも瓜に固執している。フィフスがいない間、ドクターの方で守ってもらえないかしら?」
「当然だよ。僕もこのことについては前から気がかりだったしね・・・ 言われずとも請け負わせて貰うよ。」
二人は、いなくなったフィフスのことを心配して胸の前に右手を置いてあさっての方を向いている瓜の方に視線を向け、それも込みにしての対策を話し合い、その夜は解散という形になりました。
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