第311話 お呼び出し
その日の夕方、すっかり遅くなった瓜は急ぎ足で自宅に帰りました。サードからも今回フィフスに何の言づても伝えずに来たことを指摘されたのです。
『早く帰らないと! ゴー君が何を思っているのか・・・』
手荷物はサプライズのためにサードに預けておいた瓜が家に到着し、息の上がった状態で扉を開けて中にいるであろうフィフスに挨拶します。
「ただいま帰りました!!・・・ って、あれ?」
瓜が顔を上げて前を見ると、目線の先にあるリビングは明かりが消され、部屋にいると思われていたフィフスは外に出ていたのか姿が見えませんでした。
「何か用事でもあったのかな?・・・ ドクターからの呼び出し?」
友達の予定についてそこまで詮索するのも野暮かと思った瓜はこれ以上考えるのは止めておきました。しかしすぐに帰って来るであろうと踏んでいた彼女の予想は外れ、日が沈みきって夜になってもフィフスが帰ってくることはありませんでした。
「・・・」
少し心配になってくる瓜。風呂を入って夕食も食べ終わっても、その状況は変わりません。机の上のユニーも彼女の心境に共鳴するように、何か胸騒ぎを感じ始めます。
晩ご飯がいるかどうかも分からなかったためにそれを名目にテレパシーを送ってみましたが、返事は一行に帰ってきません。もしかしたらまた物の中に入れられているのかもしれないと当たりの物を見に行っても、当然ながら特に異常は見当たりません。
瓜は自分が出来ることは出来るだけやりましたが、効果がないままリビングの椅子に座り込んでしまいました。それでも微かな期待を残して自身のマグナフォンを目の前のテーブルの上に置いておきます。
「ゴー君・・・ 何かあったのかな・・・」
もうこれしきでは寂しがってはいけない。そう心では思っても身体は正直に反応してしまいます。するとそんな瓜の期待が届いたのか、マグナフォンに着信が入りました。彼女はすぐに手に取って確認しましたが、残念ながら送られてきたメッセージはグレシアからのものでした。ですが彼女は通知の内容を二度見しました。
「そこにフィフスはいる?」
グレシアからの連絡は、まるでフィフスが彼女とも連絡を取り合っていないように見えるものでした。魔人に関することの連絡で戦闘員じゃない瓜にしないことは理解できますが、信頼する仲間であるグレシアに送らないことには、不自然さを感じたのです。
『どうして彼に直接でなく、私に・・・』
気になった瓜はマグナフォンを両手に持ち上げて返事を送ります。
「いいえ、まだ家にも帰ってきません。テレパシーを送っても返事がなくて。」
すると少ししてグレシアからまたメッセージが送られてきました。今度はそのすぐ下にどこかの地図を載せた画像が送られてきます。
「今すぐ来て 話がある」
「エッ・・・」
妙に急を要すような話に瓜は少し戸惑いながらも急いで支度を整え、彼女に指定された場所にユニーを連れて向かっていきました。
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瓜が駆け足でグレシアに指定された公園に到着すると、同じように来ていたルーズと鈴音を始めとし、信や経義に弁、白兎に今朝会ったサードと、彼女がこれまでのことで見慣れた顔の内のほとんどが集合していました。
「皆さん! どうしたんですか揃って・・・」
「マッチー! そっちもシカシカに呼ばれたのか?」
「はい。てことはお二人も・・・」
「急な話があるそうでして・・・ ところで瓜さん、王子は?」
「お前達、いつも一緒にいるイメージがあるんだが。」
「それが・・・」
瓜がに諸事情を話そうとすると、その前に呼び出した本人が登場して簡潔にまとめて説明しました。
「既に巻き込まれているようね。ホント、相変わらず悪運の強い奴・・・」
「志歌さん。」
「それで志歌君、こんな夜更けに呼び出して何のようですか?」
「・・・」
グレシアは問いかけられたことにどこか警戒してよそよそしくしながら口を開きます。
「正確に言うと、ここに呼び出したのはアタシじゃないわ。召集役を頼まれただけ。」
「召集役? だが誰に・・・」
頭を悩ます周りの少年少女達。しかしその中で信はすぐにグレシアよりも更に後ろの暗闇に目を向け、彼女に質問を飛ばしました。
「もしかして、後ろの遊具に座っている彼のことかな志歌君。」
信からの指摘にグレシアが多少驚きながら無言で頷くと、その後ろの暗闇の中でタイヤの遊具をベンチ代わりにして座っていた誰かが笑い出した。
「クククク・・・ ハハハハ!! さっすが~・・・ 勘がいいね、博士さん。」
「この声って・・・」
「まさか!!・・・」
全員が暗闇から聞こえた声に騒然となりました。聞き覚えのあるその声から暗闇にいるのが誰なのか予想を上げると、彼等の予想は的中することになりました。
座っていた相手が立ち上がって街灯の下まで進むと、その姿を現しました。それを見て瓜の肩を降りたユニーを始め、グレシア以外の戦闘員が全員揃って戦闘準備に入り、経義が代表して相手に聞きました。
「貴様・・・ どういうつもりだ!・・・ カオス!!」
なんと、グレシアに頼んで瓜達全員をこの場に招集したのは、彼等の敵であるカオスだったのです。
「魔王子君がいないけど・・・ それ以外は全員揃ったみたいだね。待ってたよ。」
カオスは両手を自信の正面で「ポンッ」と叩き、仮面越しにでも分かるほど嬉しそうな声を出した。
・二人で待ってと気のグレシアの心境
『落ち着いて考えると仮面にフード姿の男がタイヤのおもちゃの上に座っているって結構シュールな光景よね・・・』
彼女は変な冷や汗をかいた。
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