第309話 プレゼントを買いに
さて、フィフスが瓜のことを思ってどこかに出かけたのと同じとき、当の瓜本人はサードと共に繁華街の中を歩いていました。
「今日はありがとうございます。」
「いいのよ~! ウリーちゃんからの頼みだも~ん!! 聞かない方がおかしいわ!!」
サードは笑顔が抑えきれずにニヤけたまま瓜を見て話を続けます。
「にしてもウリーちゃん、アイツの誕生日を祝うパーティーをしたいだなんて、コミュ障な貴方が大がかりな事を提案してきたわね~・・・」
そう、本日は五月二十三日、翌々日の五月二十五日は、フィフスの十七回目の誕生日なのです。彼女はこれを以前サードから聞き、日頃の感謝も込めてパーティーを開こうとしていたのです。
「す、すみません・・・」
「謝らなくていいのよ。私だって元々プレゼントぐらいは送るつもりだったし、どうせやるなら派手にやらないとね。」
恥ずかしそうにする瓜にそれを解きほぐす言葉をかけながらウインクを飛ばすサード。彼女は妹のように可愛がっている少女の今の姿に何処か思うところがあります。
『ホント、引っ込み思案だったこの子がこうも大きな事を提案するなんてね。これもフィフスと関わっていったからなのかしらね・・・』
「ケーキは魔女っ子ちゃんが用意してくれるらしいから、アタシ達は当日渡すプレゼントね。」
「はい。でも、何がいいのかわかんなくて・・・ サードさんなら、何か分かるかなと・・・」
瓜はこの誕生日に向けて、フィフスが何が好きなのか考えてみました。しかし彼と一緒に暮らしてきた時のことを振り返っても、とくにこれといった好きな物があるようには思えなかったのです。
そこで自分が知り合うより以前のフィフスを知っているサード奈良何か知っているのではないかと今回頼んだ形でした。しかし瓜の期待に反して彼女の返事はこう言ったものでした。
「う~ん・・・ 残念だけど、アタシアイツとそこまで長い付き合いじゃないのよ。」
「そうなんですか?」
意外な返事に瓜が聞き返すと、サードがその理由を話します。
「一応アタシ達王家だからね。小さいときから別の屋敷に住んでいたし、よくしゃべるようになったのもそこそこでかくなってからだったし、あんまりそういうのはよくわかんないのよ。」
しかしそう言いながらもサードの表情は邪悪にニヤついていきます。
「まあ、アイツの欲しがるものは一つ心当たりがあるけどね・・・ ニシシ・・・」
「へぇ! どんなのですか?」
関心を寄せる瓜にサードは自分のイメージを話し出します。
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<サードのイメージ>
何を知らされずに暗い部屋に通されたフィフス。何処か警戒しながら前に進むと、正面にライトが照らされ、彼の目の前に彼の身長と同じくらいの大きさのプレゼント箱が現れました。
「何だこれ?」
フィフスが箱の上部で結ばれているリボンを外して被さっていた蓋を取ると、箱の側面がパカッと開き、中に入っていたものが姿を現し、それを見たフィフスが赤面して全身を固めてしまいます。
「ナッ!!?・・・」
そこには全裸になった上からリボンで体を縛っている瓜が照れ顔をして声をかけてきました。
「ゴー君・・・ お誕生日、おめでとう・・・ プレゼントは、わ・た・し・・・」
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「なあんて感じでエッチな感じが一番いいと思うけどなぁ~・・・」
「やややや! 止めてくださいそういうのは!!」
瓜はサードのイメージをすぐに却下し、言われた事への恥ずかしさにまた顔を下げてしまいます。しかしサードは彼女にまた優しい笑顔を向けます。
『ほおんと、よく喋るようになったじゃない。 こうなるようアシストしたアイツは、今頃瓜の動向が気になって仕方ないんだろうけど・・・』
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と自身の姉に思われている弟。彼女の予想通り慌てて外を早足で歩きながら左右の店を見回っていました。
「う~む・・・ 唐突に外に出たはいいが、いざプレゼントを買うってなると何にすればいいのかわかんねえな・・・」
かゆくなった頬をかきながら困った顔をするフィフス。今回は彼が突発的にやったことのため、彼女からの希望もありません。かといって気軽に食べ物というもの何か違う気がします。頭を抱えたままフィフスが歩き続けていました。
「さて、何ならあの分の機嫌を直してくれるか・・・ 最も、物で解決しようとしている時点でダメなんだろうが・・・」
するとフィフスは右側から微かに悩みが打ち消すようなリラックス効果のある香りが匂ってきました。独特なそれに自然と目を向けると、見慣れない花屋がありました。奥から店員の女性が商品の花束を店先に出しています。
「よいしょっと・・・ フゥ・・・」
店員は商品を置ききると、額に流れた汗を右腕で拭います。その動作の最中にフィフスの視線に気付いたようで、すぐに彼に優しい笑顔を向けます。
「あら? いらっしゃいませお兄さん。」
「こんな所に花屋なんていつの間に・・・」
「つい先日開店したばかりなんですよ! せっかくですし寄っていきませんか?」
明るいハキハキとした声。周囲に咲いている花と同じくらいの明るさを感じます。フィフスの方も、店に飾られている花々に興味をそそらせ、店に近付いていきました。
『花か・・・ これならいいプレゼントになりそうだ。』
フィフスは店員の女性に案内されるままに店の中に入り、彼にとってまだこの世界で見慣れない種類の花を見定めることにしました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・サードが今回来て一番良かったと思ったとき
ヘンテコなデザインやそもそも日常で使いそうにない見たことのないものばかりのを選ぶ瓜を止めたとき。
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