第307話 フィフスは運命の・・・
その後、フィフスからの連絡を受けてエデンコーポレーションのスタッフ達が現場の後処理にやって来ました。その中には、聞いた内容に興味を持った信もいます。彼は陥没した地面の近くでしゃがみ込んでよく見ます。
「ほほぉ~・・・ これはまた派手にやったねえ・・・ これも魔人かい?」
「分からん。だが甲冑の男のやり方にしては大事過ぎる気がしてな。」
「だろうねえ・・・」
「あ?」
フィフス達は信の返事の言葉に引っかかります。それに関して聞こうとすると、その前に信が自分から話してくれました。
「この大雑把すぎる破壊後には宛があってね。最も確定じゃないから、この場でこれですって提示することは出来ないけど。」
「知っていることを聞くなってか?」
「知らない方がいい・・・ というより、知るとよりエデンの別部署に狙われることになるよ。」
瓜はそれを聞いて一瞬ゾッと震え、フィフスはそんな彼女をチラリと見て視線を前に戻します。
「分かった。このことについてはこれ以上聞かないでおく。」
物足りないのが顔に出ているフィフスに信は笑って肩に手を触れながら追加で伝えます。
「それに君は今ここにいるべきじゃないだろう? 志歌君から聞いたよ。平次君の妹のこと。」
「ウッ!!・・・」
痛いところを突かれたフィフスは物足りない顔からむず痒い顔になり、瓜も苦笑いをしてしまいました。
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そうして合流した一行。意図的に分けられてフィフスと美照が二人きりになり、残りの三人とユニーが別で遊ぶことになった。と表向きにはなっていますが、その一行は茂みの裏に隠れながら二人の様子が気になって見ていました。
「あの二人どうなるのかしら。」
「気になりますね・・・」
「本当に世話を焼かせるわ。」
「「ん?」」
瓜とグレシアはしれっと隣にいるユキに目を向けます。すぐにグレシアは流れで彼女の事を聞きます。
「てか、アンタ何者?」
「あ、どうも。祓い屋家系の末裔、『白雪 林』です。ヨロシクお願いします先輩。」
「祓い屋!? 牛若さんと同じ・・・」
「ま、そんなこと今はいいじゃないですか。それより・・・」
ユキこと『白雪 林』に言われて再度前を向かせました。丁度そのとき、二人はお互いの顔を見て話をしています。
「それでその・・・ 先輩・・・」
「分かってる。さっきお前が聞いて来た事だろ?」
美照がコクリと首を縦に振り、首を戻すと、確認のためにもう一度聞きます。
「四月の入学式の日、私を助けてくれたのは貴方ですか?」
改まった姿勢になる彼女。真剣な気持ちなのでしょう。それを受けてフィフスは一度目を閉じ、それを開いてからゆっくり話し出しました。
「残念だが、お前を助けたのは俺じゃない。」
「エッ!?・・・」
美照はフィフスからの予想外の返答に目を丸くして驚き、隠れて見ている三人も身を乗り出してしまいます。
「でも、気を失っていた私を助けて、学校にまで届けてくれたのは、貴方だってユキから聞いて・・・」
「確かに学校にまでお前を送り届けたのは俺だ、だが生憎俺は、魔力を感知して向かった場所で気を失って倒れていたお前を見つけたんだ。同じ制服だったから学校まで運んだ。それだけだ。」
フィフスの言い分に美照はショックを受けてしまう。目の前にいる人こそが自分の運命の相手だと思っていたのに、それが外れたのだから無理はありません。しかしフィフスにも非はないです。むしろハッキリ言ったのは、彼なりの優しさなのでしょう。
美照はそんな自分の表情を彼に見せたくは無いと顔を下に向け、質問を変えます。
「それじゃあ・・・ 私を助けた人は誰か、知ってますか?」
しかしこれに関するフィフスの返答も期待していたものではありませんでした。
「残念だが知らん。俺がそこに行ったときにはお前以外誰もいなかった。」
「そう、ですか・・・」
美照が拳をギュッと握り締める。悔しい気持ちでいっぱいいっぱいなのでしょう。それを抑えてでも、彼女は顔を上げたとき、彼に笑顔を向けました。
「ありがとうございます! 教えてくれて・・・」
「美照・・・」
すると美照は左腕に付けていたブレスレットを外し、フィフスに渡します。
「これ、返します。約束は、守ってくれましたし・・・」
震える手を見て思うところがありながらも何も言えないフィフスはそれを受け取ると、彼女はもう一度深く頭を下げてその場から逃げるように走り去っていきました。
「ちょ、美照!!」
隠れていたグレシアと林はそれを追いかけていき、瓜は追いかけもしないフィフスの方に近付きます。
「いいんですか、これで・・・」
「変に引きずるよりハッキリさせておいた方がいいだろ。」
「それは・・・」
そして走って行った美照に追い付いた二人。
「美照!!」
「大丈夫!?」
二人が下を向いている彼女の顔をよく見ると、ポロポロと大粒の涙をこぼしている姿が見えました。
「!!・・・」
しかしフィフスへの怒りの言葉を吐きかけた二人に美照は先に話し出します。
「違った・・・ でも、今日分かっちゃった・・・ 私、あの人の隣には立てない。」
「アンタ・・・」
「凄いよね、あの人。怖がって何も出来ない私とは違う。いざってときに自分から前に出て、支えになって・・・ 完敗しちゃったわ。」
あの人とは瓜のことなのでしょう。美照は冷たい空気が当たる左手首を右手でさすりながら想いふけっています。
『あのブレスレットも、あの人から貰った物なんだろうなぁ・・・ フフッ・・・ 勝負所の話ですらなかったのね・・・』
と自問自答を追えると、美照は自分のモヤモヤを吹っ切ろうと大きく伸びをし出します。驚く周りを余所に腕を降ろすと、上がった顔はさっきよりは明るくなっていました。
「ま、しょうがないわ! 運命の王子様は別にいるんだし!!」
「切り替えはやっ!!」
美照は前を向いて「よしっ!!」と気合いを入れる声を上げ、顔だけ後ろに向けて二人に声をかけます。
「何つっ立ってんの!? 行くわよグレシア! ユキ!!」
「エッ、行くって・・・」
「せっかく来たんだもん!! 今日は一日遊園地を楽しむわよぉ!!」
そう言うと美照は二人の手を引いて走り出します。混乱したまま二人は引っ張られる中、彼女は決意していました。
『そうよ! 次こそ本当の王子様を見つけてやるんだからぁ!!!』
その表情は、何処か晴れやかなところがありました。
<魔王国気まぐれ情報屋>
・キャラクター紹介
{石導 美照}
種族 人間
年齢 15歳
誕生日 11月5日
身長 153cm
性格 恋愛能
家族構成 父 母 兄2
好きな物・こと 読書(少女漫画のラブコメ)運営の王子様
嫌いな物・こと 数学 現実的な話
好きなタイプ 運命の王子様!!
将来の夢 運命の王子様と結ばれること
モチーフ 『ヘンゼルとグレーテル』よりグレーテル
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