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第304話 集団リンチ

 さて、女性陣と魔革隊でそれぞれ口論が行なわれている中、この騒動で一番の被害に遭っている彼は今・・・


 「あぁぁぁぁぁぁ!!!」


 現在も三体の魔人に追われる鬼ごっこをしていました。


 「ま~て~!!」


 「そう言われて待つ馬鹿がいるか! って、俺も多用してたなこの台詞・・・」


 自分で自分に突っ込みを入れながらもフィフスは足を止める程の余裕はありません。そこに火車は無理矢理足を止めるために彼の前方に火球を撃ち出してきました。


 地面に激突し爆ぜるそれに一瞬怯むフィフス。その隙に羽交い締めにでもしようとかかる火車ですが、生憎この手は彼には通しません。


 彼はその場で背後にいる火車のガラ空きになっていた腹に身の引きを利用して右肘撃ちを当て、逆に彼を追い詰め、追撃に蹴りを入れて飛ばしました。


 「ガッ!!・・・」


 一体が返り討ちに遭って驚くえんらえんらと狒々。しかしフィフスからすればむしろようやくと言った想いです。


 「さて、とりあえずここまで来ればそうそう一般人は巻き込まないだろ。」


 「貴様、まさかわざと!!」


 「おう、俺は極力無関係なやつに血生臭いのを見せたくない主義なんでな。」


 フィフスは剣を鞘から引き抜いて構え、目線をキリッと凜々しくさせます。


 「さて、お前らの狙いは俺なんだってな。大方さっきの三人にカオスがおふざけで配ったといった感じだろう。いいぞ、返り討ちに遭いたいやつからかかってこい。」


 フィフスは挑発の言葉を吐き、同時に左手の指を「来い。」と煽る形のものを行ないます。これに真っ先に乗ったのは、以前フィフスに追い込まれた狒々でした。


 「上等だ! その軽い舌引きちぎってやる!!」


 狒々は正面から走って近付いて来ます。単純すぎる手に何かあると踏んだフィフスが構えると、狒々は何も変えることもなく正面から殴ってきました。


 しかし正面一直線に走ってきてからの物理攻撃は思っていたより威力が大きく、防御していたにもかかわらず吹っ飛ばされ返されてしまいました。


 「チィ・・・」


 更にその場に寒気を感じると、いつの間にか体が白い煙で覆われ、それが凝り固まってえんらえんらの姿になります。


 「つ~か~ま~え~た~!!」


 しかしフィフスは焦ることはなく、そのまま仁王立ちの態勢になります。諦めたのかと高をくくるえんらえんらでしたが、そこで彼の体がどんどん熱くなっていき、それと共に自分の体が蒸発していくのが見つかった。


 「お~わ~あ~!!」


 危機に気が付いて咄嗟にフィフスから体を離すえんらえんら。その隙に彼はそこから飛んで離れます。


 「相性が悪かったな。お前が煙なら俺の熱を上げれば自然蒸発する。」


 「じゃあ俺とはどうだ?」


 空中にいるフィフスに、同じく跳んできた火車が口から放射炎を繰り出す。フィフスも同じ技で応戦して相殺します。


 「相子だな。」


 「だが後出しじゃんけんならどうだ?」


 後ろから聞こえてきた声。空中にいるために対応しきれないフィフスに狒々が後ろから羽交い締めにしにかかります。


 「おいおい・・・」


 今は離れているとはいえ、この三人の魔人は元は魔王軍の戦士、やはり素人の人間や冒険者のようにはいかないことを自覚させられます。


 首を回して放射炎を放とうとしても、それでは火車の方に捕まってしまうのがオチです。だったらと火炎刀を動けるだけ上半身を動かして振りますが、これの空中なのが原因で中途半端にしか出来ません。


 「無駄だ!!」


 狒々はフィフスの攻撃を受けることなく近付き、剣を持つ右腕を掴んで腹に蹴りを入れます。「グフッ!!・・・」と吐き気を及ぼす彼をそのまま振り下ろして地面に叩きつけることで気絶させにかかります。


 「そろそろ墜ちろ!!」


 フィフスは地面に落とされたときにどうにか受け身を成功させて気絶は免れましたが、それでもショックは大きくダメージは残ってしまいます。


 『マズいな・・・ このまま三対三だとこっちの体力が持たない・・・』


 考え事をするフィフスに更に攻撃をかける三人。捌ききれずにいくつか受けてしまうフィフスは徐々にその拳に熱を帯びさせます。


 『面倒だ・・・ いっそここら一帯ごと潰せば・・・』


 その瞳が赤く染まっていき、思考が過激になっていく。フィフスは理性を抑えることもなく、ツギニキタ狒々の正拳突きを左手で抑えた途端、それを強く握り締めました。さっきまでとは明らかに強い力に狒々は苦しみだし、残りの魔人も彼の放つ雰囲気に動きを止めてしまいます。


 「ガアアァァァァ!!!」


 『何だ? このプレッシャー・・・』


 『す~ご~い~あ~つ~・・・』


 狒々は手を放そうとしてもビクともしない。そこに向けられたフィフスの視線はこの場を解決するものではなく、明らかに相手を殺すものになっています。


 「・・・鬱陶しい。」


 冷たい一言を口にし、彼はメラメラと燃え盛る拳を狒々に向けた。咄嗟に避けた相手は急所は避けましたが、余波で放たれた炎が彼の左腕を軽々と消滅させました。


 「ハアアァァァァァ!!?」


 力が抜けた一瞬をついてどうにか解放された狒々ですが、動揺は抑えきれません。残り二人は、相手の変わりよう、そして、攻撃の先に出来ていた大きな破壊あとに息を詰まらせてしまいます。


 「ナッ!・・・」


 完全に安全などなくなっている事に立場が逆転した彼等。二人は逃げ出そうとしますが、その前にいつの間にか至近距離にいたフィフスの攻撃を受けて狒々を巻き込んで吹き飛ばされてしまいました。狒々ほど重傷ではありませんが、どちらも血反吐を吐いてしまいます。


 「ブホアァ!!・・・」


 「いっ・・・ たい・・・」


 怯えて動かなくなった三人。フィフスはそこに向かいながら破壊炎の構えを取る。完全に手にできた炎は、被害を三人だけでは済まさないのは明白です。


 「アアアアァァァ・・・」


 怯えて逃げる三人。しかしフィフスはその先に一般人がいるにもかかわらず破壊炎を撃ち出そうと手を前に出します。


 しかし技を放ちかけたその瞬間、その腕はどこかから飛んできた氷に急速冷凍され、威力を弱められました。


 「・・・?」


 「やめなさい!!」


 フィフスが不気味に乾いた目で首を回すと、杖を向けたグレシアを先頭にした女性陣が追い付いていました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


モチーフ紹介


・えんらえんら

 『北風と太陽』より北風






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