表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
307/344

第303話 彼と出会った日

 その頃、遊園地内の別の場所で一人の少女が母親の手をつないで楽しそうに歩いていると、それを見つけてしゃがみ込み、彼女に持っている風船の一つを渡すピエロが現れました。


 少女は喜んでそれを受け取ると、「ありがとう」と告げて嬉しそうな顔をしながら母親と共に去って行きます。


 ピエロはそれを手を振りながら見送り、次の場所に移動しようとします。しかしそのとき、彼は後頭部に強烈なチョップを受けてしまいました。


 「オイッ!!」


 「ウゴッ!!・・・」


 ピエロは思わず手を放し、風船を空の彼方へ飛ばしてしまいます。


 「あ~あ、もったいない・・・」


 と呟くピエロ、カオスは渋々振り返ると、しばいてきたのは最近顔を見なかった彼の上司『セレン』でした。


 「これはセレン様。こんな所に何用で? もう僕への監視は終わったのではなかったんですか?」


 「こっちの台詞よ。魔人ほっぽり出して何平然とバイトしてんのよアンタ。」


 カオスはまだ痛むのかさっきまで風船を持っていた右手で頭をさすりながら立ち上がると、いつもの調子でふわふわとした軽口を叩きます。


 「そりゃあ本業の方もやってますよ。この場で三体解放しましたしいいいぃぃぃぃぃぃ!!!」


 カオスのヘラヘラとした言い分に腹を立てたセレンは彼が話している途中で関節技を決め、強制的に止めさせました。


 「痛い痛い痛い!!」


 「そう言ってまた魔人をおもちゃにしたわねアンタ!! 懲りるって事を知らないのかしら?」


 「おおおおもちゃだなんて誤解ですうぅぅぅぅ!! ちゃんと魔力持ちの人間を見つけ出して渡したんですからあぁぁぁぁぁぁ!!!」


 技の締め付けが強くなってカオスが悲鳴を上げると、セレンがそのままの状態で当然の質問をします。


 「フ~ン・・・ それで複数の人間が同じ願いを言い出すものなの? それも標的が獄炎鬼だなんて、なんで異世界でそんな偶然が起こるのかしら?」


 「ぐぐぐ、偶然じゃありません!! そこら辺については前にやったことの拾いものですよ!!」


 「拾いもの?」


 疑問を浮かべたセレンが絞める力を弱めたことでようやくカオスは気が楽になります。圧迫されていたことで荒くなっていた息を整えました。



______________________



 時を同じくして瓜サイド。彼女から投げかけられた一つの質問に、グレシアを美照は意図が分かりませんでした。


 「「「彼と初めて出会ったのがいつか?」」」


 フィフスを追う三人の女性がそれを投げかけられ、ふと思い出そうと頭を回します。その間にグレシアは瓜の耳元で自分の気持ちを囁いています。


 「どういうこと? そんなこと聞いて何か意味あるの?」


 「いえ、少し心当たりがありまして・・・」


 瓜は微苦笑をしながら小さい声で返事をします。その感じからグレシアはあまり人に聞かれたくない予想なのかと予想を立てていると、思い出した三人が一斉に瓜の質問に答えました。


 「確か・・・


 「そうだ!・・・   二月の末ごろだった!!  エッ!!?」」」


 「あれは確か・・・



 三人揃ってまた自分達の言っている事が被ったことに驚いてしまいます。この返事に瓜もやっぱりと言った様子で頭を下げて額から弱ったような冷や汗を流しました。グレシアや美照もこれには驚きます。


 「全員同じ時期!?」


 「なんでそんなピンポイントに・・・」


 そこに瓜から小さな声で説明がありました。あまりに小さいためにこの中で一番気軽に話が出来るグレシアが聞き取って代わりに大きく声を出します。


 「ふむふむ・・・ ハァ!? その時期にあの馬鹿が体を乗っ取られてたことがあった!!?」


 「は、はい・・・」


 そう、この場にいる三人の女性が付き合っていたというフィフス。それは彼本人ではなく、二月の末ごろ、枕返しの特殊術で別の人物に体を乗っ取られていたときのものだったのです。


※詳しくは第157話から第165話を読んでください。


 その事実を告げられ、三人の女性は全員信じられないと言った顔をします。当然です。一般の人に魔人のことは知られていませんから。しかし、グレシアから見た三人の驚き方には、どうにも完全に信じていないとはいったようなものではありません。全員が瓜の言うことに反論の一つもあげていなかったのです。


 『この不自然さ・・・ もしかして・・・』


 ピンときたグレシアは瓜と美照より前に出るようにしながら三人に聞いてみました。


 「貴方たち、まさか魔人と契約しているの?」


 『魔人と契約』、このワードに一般の人は「ハッ?」となるのが普通です。しかし三人はそんな顔にはならずに今度は流暢に口を動かします。


 「何言ってるのよ!? さっきから魔人だの乗っ取られただの。適当言って誤魔化さないで! やっぱりアンタも小馬君を狙ってるんでしょ!!」


 「そうよ! そうやって諦めさせそうったってそうはいかないわ!!」


 「私が、彼のことを一番知ってるんですから!!」


 切りのない事に面倒に思ったグレシアは、密かに背中越しに作っていた小さな氷の刃物を咄嗟に三人に向けて飛ばし、見事彼女達の鞄に命中させてそれを破き、中のものを外にこぼさせました。


 「ナッ!!・・・」


 いち早く気が付いたものもいましたが、中に入っていたものの重さもあってとても間に合いません。三人はそれぞれ色の違う契約の魔道書を落として言い訳が出来なくなってしまいました。


 「ビンゴね。ま、アイツを狙ってた時点でなんとなく予想してたけど。」


 目の前で見せられた芸当に驚いた三人はこの場でグレシアに追撃するのはマズいと思い、すぐに逃げ出そうとします。しかし彼女がそれを予想していないわけがなく、今度こそ仕掛けていた杖から氷巣形成を発生させて脚を固めてしまいました。


 「なっ! 何よこれ!?」


 「悪いわね。こう見えてアタシも魔人なのよ。」


 そこからグレシアは三人の尋問を執り行いました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・服を引っ張られて引きずられるカオス



カオス「あぁ! バイト代がぁ!!・・・」


セレン「そもそも勝手にやってることでしょうが!!」





 よろしければ、『ブックマーク』、『評価』をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ