第300話 三人の魔人
美照の思いがこもった言葉。これを聞いたフィフスは、彼女から言われたときのことを思い出します。そして一瞬目線を横に向けてからそれを戻し、彼も口を開きます。
「あのときか・・・ あれは・・・」
そうして彼が入学式の日に起こったことの詳細を話しかけたそのとき、彼は突然会話を中断して顔を上に向けました。
「どうかしましたか?」
顔色を変えたフィフスに質問をする美照。彼はこれに簡潔に大きく返事をしました。
「伏せろ!!」
「エッ!?」
美照が彼の声に従って咄嗟に伏せると、次の瞬間、丁度彼女の上を何かが通り過ぎ、そのままフィフスに向かって行きました。彼は背中のリュックに隠していた剣を取り出して鞘を抜き取り、相手の攻撃を刃で受け止めます。
「サプライズ・・・ ではないな。」
フィフスは明らかに敵意のある行為を受け、自身も擬態を解いて戦闘状態に入ります。彼の鬼の姿を初めて見た美照は目を引きますが、グレシアを見て慣れているためにすぐに受け入れることが出来ました。
「先輩!!」
「離れてろ!!」
相手の顔を見てみると、そこにいたのはどこかで見覚えのある目付きの悪い青年。しかしその鋭い爪をむき出した右腕は人間のものではありません。
「お前、何者だ?」
「俺を忘れたのか!? 獄炎鬼!!」
「あ? お前見たいなの知人にいたか?」
フィフスが相手の質問に質問で返すと、男は苛立って顔が獣のように醜悪なものになります。
「ええい! ならばこの姿を見れば、イヤでも思い出すだろう!!」
途端に彼は姿を変えていくと、そこには、以前フィフスと戦い、フログによってそけいされたはずの狒々の姿がありました。
「お前は! 甲冑の男にやられたんじゃなかったのか!?」
「ああ! おかげさまでな!! だからこうしてここにいる!!」
「あ?」
フィフスには狒々の言っている言葉の意味が分かりませんでしたが、どうにか攻撃を弾いて蹴りを入れました。
「ウグッ!!・・・」
狒々が怯んだ隙を見逃さすにフィフスは一度距離を取り、体勢を立て直そうとします。
『どういうことだ? こいつはあの時死んだはずじゃ・・・ ッン!?』
しかしフィフスは考え事に打ち込む余裕すらなく思考を止めました。また突然、上から魔力を感じ取ったのです。
彼はすぐに右に動くと、さっきまで彼が立っていた場所に真上から大きな火の玉が飛来してきました。ショックと熱気によって当たった地面がえぐれてしまいます。
火の玉はその炎を小さくしながらその中にあるシルエットを見せ、首を傾げて話しかけてきます。
「あれれ~・・・ おっかしいぞ~!! どうして気が付いたのかな~・・・」
そして炎が消えると、中から現れたのはその炎と同じくらい赤い肌に、体の所々が逆立っている魔人です。フィフスが二人相手に警戒を強めると、更に後ろから寒気を感じて前に出ました。
彼が動いてすぐ、その場から誰もいないのに声が聞こえてきました。
「お~や~・・・ き~づ~か~れ~た~?」
「今度は何だ!?」
フィフスがいい加減にしろと言わんばかりに言葉をこぼします。彼が後ろを振り返ると寒気の正体である冷気が煙として確認出来るほどに固まり、それが更に集約することで一体の魔人の姿になりました。
「『火車』に『えんらえんら』! お前ら、揃いも揃って何のようだ!!?」
視線を次々に変えながら相手を睨み付けるフィフス。しかしそれは彼だけではなく、現れた三人の魔人もお互いがお互いに警戒したような目を向けていました。それから狒々が二人の魔人に怒声を吐きます。
「お前らどこから湧いてきた!! コイツは俺の獲物だ! 邪魔すんな!!」
狒々の一方的な意見に残り二人の魔人もそれぞれ反論します。
「な~に言ってるのかなぁ~? この男は俺の獲物なんだよぉ~?」
「い~や~い~や~・・・ わ~た~し~の~で~す~よ~・・・」
お互いに一歩も引く気がない三人。そして彼等の会話の内容から、フィフスもその目的を理解しました。
「お前らの目的って・・・ まさか・・・ 俺か!!?」
フィフスが驚いて顔を歪めながら自信に指を差すと、三人の魔人は一斉に飛びかかる勢いになっていた。
「お前ら・・・」
「いい度胸だね・・・」
「わ~た~し~が~さ~き~!!」
とうとう動き出し、全員我先にとフィフスに向かい出す魔人達。
「おいおいおいおい!!・・・」
フィフスは握っていた剣に魔力を込めてコウシンを発動させ、羽交い締めになる前にその場から逃れます。突然彼が消えたことに相手側は全員驚きますが、勢いを抑えきれずにお互いにぶつかってしまいました。
「ウグッ!!」
「グガッ!!」
しかしえんらえんらだけはマカからだを煙に変えることで難を逃れ、そのままフィフスを追いかけました。
「ま~て~!!」
「だから何でだよ!!」
自分が狙われる理由が分からないフィフスが思わず聞いてしまうと、えんらえんらは律儀に答えてくれました。
「け~い~や~く~しゃ~が~あ~い~た~が~て~る~!!」
「契約者が!? てことはお前ら、全員まだ契約魔人なのか!?」
フィフスはふと驚くと、そこには済んでまで近付いているえんらえんらがいます。どうやら煙に変化することでかなりの速度を出せるようで、その速度はフィフスの予想を超えるものだったのです。
「チッ!!・・・」
技を出そうにも煙の体では効かないと手こずってしまう。するとそのとき、エンらエンらの右から何か飛び道具が命中し、彼をそのまま吹き飛ばした。
「何だ!?」
その突然の横槍にフィフスも驚いていると、それを放った張本人が歩きながら話しかけてきました。
「デートの最中に飛んだ邪魔が入ったわね。」
フィフスは声の正体に気付いてフッと小さくニヤけました。
「お前こそ、瓜とのお楽しみは何処行ったんだ? グレシア。」
姿を見せ、擬態を解いたグレシアは、彼の前に立って杖を構えました。
「当然、ぶっ倒してすぐに戻るわ。」
<祝 三百話>
フィフス「とか言っているけど、今回も特に何も考えていないよな・・・」
グレシア「むしろ予定よりストーリーが多くなってこうなったからね・・・」
ルーズ「この話が終わったら重要話やるみたいですよ。」
フィフス「話進むのか、それ・・・」
ルーズ「さぁ・・・」
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