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第299話 遊園地デート

 ということで日をまたいで週末。待合場所に向かう電車の中。


 「・・・」


 ブレスレットを取り返すだけのつもりが、何かややこしいことになってしまったことが遊園地への期待より勝っていました。何より彼が今一番気を重くしていた理由は隣にありました。


 「・・・なんでお前も来てるんだよ。」


 「その・・・ 志歌さんに誘われまして・・・」


 現在フィフスの隣には、よりにもよって今一番いて欲しくなかった瓜がいたのです。


 「用事があって来るそうで、ついでにどうかと・・・」


 『グレシアのやつ・・・ 面倒くさいことを・・・』


 そもそも彼がブレスレットを取り戻そうとしているのは、あれが船の上で瓜から貰い、その場で何度も助けて貰った物なのです。


 それがこうも簡単になくした上、別の人に付けられていることが知られれば、フィフスにとっては気が気ではありませんでした。


 そのままどこかもやついた空気を漂わせながらも二人は遊園地の入り口に到着すると、そわそわしている美照とどっしりと構えたグレシアが待ち構えていました。


 「お! おおお! おはようございますうぅぅぅぅ!!!」


 「ま、時間通りね。」


 グレシアが石導家に居候していることから美照とも一緒に過ごしていることは察していたフィフスですが、何故わざわざここに一緒に来たのかについては疑問に思いました。


 「なんで一緒に来てんだ?」


 と率直に質問するフィフスに、グレシアは顔を下げている美照に指を差してコイツのせいと暗に示します。


 「この子、度が過ぎるレベルの方向音痴なのよ。だからここまでを一人で行かせたら絶対あさっての方向に向かうって事で案内したの。」


 「保護者みたい・・・」


 「それでせっかく来たのにただで帰るのがもったいないから瓜を誘って自分も楽しもうって事か・・・」


 「そういうこと。というわけで瓜、今日はヨロシクね!」


 瓜に話しかけた途端明るくなるグレシアに受ける側の彼女が少し困惑して目線を泳がせると、その中に美照の左手首が含まれました。一瞬でしたが、彼女はそこに何かを見つけます。


 そこでもう一度よくそこを見てみると、美照は腕輪のようなものを付けています。


 「あれは・・・」


 明らかに見覚えのあるそれに瓜がその正体をはっきりさせようと更に目を懲らして見ようとすると、その前にフィフスが前に出て視覚を遮ってきました。


 「まあこんな所で喋り続けててもなんだ! そろそろ中に入ろうじゃねえか!!」


 大きめも目立つ声に気を引かれた瓜は目線を外し、そのまま遊園地の中に入ってフィフス達を分かれることになりました。


 「じゃ、アタシ達はこっちで好きに回っとくから、そっちも楽しんでね。」


 「おう、んじゃあな。」


 フィフスは顔を下に向けて無言のままの美照を半強制的に瓜から離し、二人きりになってから表情を崩して早速ため息をつきました。


 「ハァ~・・・ 『なんとかバレずに済んだ・・・』」


 フィフスはここからどうにか美照のご機嫌を取ろうと、丸くなりかけた背中を戻して彼女に聞いてみます。


 「それで、どこから行くんだ?」


 そもそもフィフスにとっては遊園地を言うもの自体初めて。自分では何処でなりがあるのかをイマイチ分かっていないのです。その事も相まって美照に聞いたのですが、彼女は一向に声を出しません。


 「ん? お~い・・・」


 フィフスがも良い弛度呼びかけても、彼女の態度は変わりません。しかし少ししてから、手で強く握ってクシャクシャになっている遊園地のマップを広げ、そこのアトラクションの一つに凄く震えている指をどうにか差しました。


 「こ! こここ! ここに!!・・・」


 情緒がおかしいながらも要望を受けたフィフスは喜んでそれに従います。


 「ああ分かった。じゃ行くか!!」


 フィフスはゆっくり動いている彼女に合わせて進みながら彼女の指名するアトラクションを楽しんでいきました。


 しかし場を盛り上げようとするフィフスの気遣いもむなしく、美照は未だに無言のままでいます。


 『おいおい・・・ さっきから一言も話してこないぞ・・・ 何かマズいことしちまったか?』


 と不安になるフィフス。しかし美照の方は内心相手のことを考える余裕がないほど動転していました。


 『何やってんのよ私!! せっかく先輩があの人なのか聞くチャンスが出来たのに、そんなことすら聞けないなんて!! でも、なんだか怖い!!』


 この自問自答の繰り返しで一向に前に踏み出せない美照。こんなことが続いたとあって、より気難しくなっていました。


 「・・・」


 とフィフスが戸惑い、美照も踏みとどまり続ける状況。このまま次のアトラクションに向かおうとしていた二人。するとそこに突然前に異質な存在が目の前に現れました。


 「ンッ!?」


 「ハエッ!?・・・」


 二人の前に現れたのは、この遊園地のマスコット、『クマコウ』でした。ファンシーながらも大柄な存在に二人揃って圧倒されていると、クマコウは左手に持ったすく数個の風船の一部を右手に移し、彼等に手渡しました。


 「どうも・・・」


 フィフスのとりあえずの礼の言葉に優しく手を振りながら離れていきました。取り残された二人は少し間を開けてから口を開きます。


 「何だったんだ、あれ?」


 「何かのサービスじゃないですか?」


 「そうか?」


 「多分。」


 「「プッ!・・・ アハハハハハハ!!」」


 ふとこみ上げた笑いに流され、二人は固まっていた緊張が解けるように笑い合いました。それが続き、美照は我に返ってふと思いました。


 『あれ? 私、普通に話せてる!! こんなに気軽に・・・』


 そこで美照はこれに乗じようと、歩いていた足を止めてフィフスに声をかけました。まだ緊張があるため顔が下がってしまいます。


 「あの!! 先輩!!・・・」


 「ん?」


 フィフスが少し前に出てから振り返ると、彼女の真剣な眼差しを見て体を向けます。


 「・・・」


 彼が真摯に受け止める構えを取ると、美照は一度下がった顔を上げながら息を吸い、腕にはめたブレスレットに触れながらフィフスにハッキリと自分の言葉を伝えました。ふとそよいだ風が彼女の髪を揺らします。







 「入学式の日、私を助けてくれたのは貴方ですか?」

<魔王国気まぐれ情報屋>


・その頃の平次


 妹にストーカー行為をしないようにグレシアによってギチギチに拘束。隣に吊し上げられたソックもあり・・・



平次「本当に俺の扱いぞんざいじゃないか・・・」





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