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第297話 経義の変化

 少し落ち着いたキコは魔革隊の名を聞いても首を傾げるだけで、何も知らないようです。そこでフィフスは彼女に具体的に聞きます。


 「お前、具体的にはどうやって来たか覚えてるか?」


 「そんなこと言っても、ただ町中で変なひび割れを見つけて、そこに近付いたら、穴が空いて、気が付いたらこっちに・・・」


 「そうか・・・ 『自然発生したゲートか? どうにしろ、調べないと行けないことが増えちまったな。』」


 と彼が考え事をしていると、サードが彼に聞いて来た。


 「ねえ、結局この子はどうすんの? 要は単なる迷子なんだし、殺す必要もないでしょ?」


 「龍子博士に報告しますか?」


 三人で話をしている中、静は経義に駆け寄り、こちらもキコに負けない量の涙を流しています。


 「若様ぁ!! そうだったのですね!! やはり若様は色仕掛けなどに引っかかっていなかったのですね。良かったですぅ!!・・・」


 「鼻水垂らしながらべたつくな、気持ち悪い。」


 直接顔を当てられるのは避けながらも、彼は彼女の頭を撫でて落ち着かせます。


 「全く情緒の激しい奴だ・・・ しかし、これでこそお前だな。いつもの調子に戻ってよかったよ。」


 「いつもの調子? 私、変でしたか?」


 涙を抑えながらも鼻水が出たままの静が少し間抜けな表情でぽかんとしていると、経義はそんな彼女を見て少しこみ上げた笑いをこらえながらなでていた頭をポンポンとします。


 「ああ、お前がこぼさずに紅茶を注げるなんて、普通ならあり得ないことだからな。」


 「そこで人の調子を判別します!? なんかそれはそれで悲しいです・・・」


 「そこらでいいか? お二人さん。」


 フィフスに声をかけられ、二人はこの場での話を切り上げ、経義は静の頭に当てていた手を放してフィフスの方に顔を向けます。


 「それで、そっちの方は片がついたのか?」


 「調べることが増えちまった。とりあえずドクターに報告だな。」


 「そうか。」


 短めに話を切った経義は、今度は自分のたぶらかすように見せていたキコに近付きました。彼女はブルブルと残像が見えるほど体を震えながら声を出します。


 「わわわわ! 私に何かごよ! ごよご用でしょうか!!?」


 散々悪事を働いたことで完全に弱気になり、これから自分にされることを想像して逃げ腰になっています。経義もそんな彼女に右手を振り上げ、彼女の頭に向かって振り下ろします。


 「ヒイィ!!!・・・」


 とキコが頭に手を当ててどうにか威力を下げようとしました。しかし彼はそこで攻撃をすることはなく、静と同じようにそっと頭に触れてきました。


 「・・・ ?」


 彼女が優しく触れられたことに驚いて目を開けると、経義は彼女に対して物珍しい話し方で声をかけました。


 「突然こんな世界に来て混乱でもしたんだろ。もう安心しろ。魔人に対しても寛大な変人に話しを通しておいてやる。」


 「・・・お、怒らないの?」


 「怒って解決もしないだろ。俺は悪い魔人しか潰す気はない。」


 経義のキャラの変わったような話し方にフィフスはゾッとしていまいます。


 「本当にあれ牛若か? 俺と初対面のときに真っ先に殺しにかかっていた牛若なのか?」


 「寛大な変人って、龍子博士のことでしょうか・・・」


 経義の言葉に落ち着いたのか、それ以上キコが騒ぐこともなく、この場での騒動にはひとまず収まりがつきました。



______________________



 そこから更に翌日の昼休み。この日は二人でいたフィフスと瓜の所に、騒動の連絡を聞いた信から電話がかかってきました。フィフスの方は購買で買ったパンを食べながらジト目で聞いています。


 「報告のあった場所に部隊は送っておいたよ。」


 「それで、その・・・」


 瓜から投げかけられた質問が言い終わる前に信からは返事が来ます。


 「空間の裂け目なんてものは、既に影も形もなくなっていたよ。」


 フィフスもそのタイミングにパンを食い終わり、会話に入ってきます。


 「ま、そもそもどうやって発生したのかすら分からない者だからな。消えていても不思議はないだろう。」


 「少し声のトーンが低いじゃないか五郎君。何を考えているのかな?」


 フィフスは表情を緊迫したものにし、少し間を開けてから小さめの声で思っていた事をこぼします。


 「今回の飛縁魔は食料目的だ。奴らは一度の食事で人を殺すほどの血は飲まない。だからまだ被害はましだったが・・・


  ・・・この先はそうはいかないかもだろう? 下手をすれば魔革隊と同格、あるいはそれ以上の厄介者が来るかもしれない。もしかしたらもう潜伏しているのかもな。」


 フィフスの言い分。あくまで仮設でしかありませんが、瓜や信に重く事を受け止めさせるには十分なものでした。


 流れる空気が辛気臭くなり、これ以上重いのはごめんと思ったフィフスは、そこで話の話題を変えます。


 「そういや、例の女はどうなったんだ? 因幡からは反省もしてるからって事で、監視処分で済んだとか聞いているが・・・」


 フィフスの質問に調子を戻した信は何処か電話越しにもむず痒そうにします。


 「ああ・・・ その件なんだけど、事件はともかくとして、個人でややこしくなってるみたい・・・」


 「「はい?」」



______________________



 「お願いします!!」


 「いや、そう言われましても・・・」


 その頃の牛若家の屋敷。既に対応に困り果てている弁にキコが何度も猛烈に懇願していました。それもそのはず、彼女が言っていることは、この屋敷の経済事情を大きく揺さぶるものだったのです。


 「お願いします! 私をここの使用人として雇ってください!!」


 「だぁら、何度もおっしゃっても無理なのです。」


 「何でですか!? 私、あのメイドよりよっぽど使えますよ!!」


 あの日以来、キコが牛若家使用人になりたいと毎日懇願するようになったのです。屋敷の奥の経義と静は、それを見て困っていました。


 「またやってやがる・・・」


 『若様にまた女の影が・・・』


 静にとっては結局受難が増えることになってしまいました。

 新作短編、『異世界転生者の俺より先に魔王を倒した奴についていったら別の異世界に来てしまった!!』を投稿しました。



 題名通りちょっと変わった異世界冒険物語となっていますので、是非読んでみてください!!



フィフス「随分力を入れてるなぁ~・・・」


グレシア「アタシ達の出番なくなったにしないでしょうね・・・」





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