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第28話 魔王子ころりん

 前回、カオスの策略にはまり、どういう訳か帰郷したフィフス。しかし本人はその事を知らない。町の周りの魔人は突然現れた男に動揺していた。


 『どういうことだ? こうも簡単にこちらの世界に戻るとは・・・』


 しかしそんなことは二の次にし、彼が初めに心配したのは瓜の安否だ。


 『マズいな・・・ もしアイツもこの国に来ているのなら、人間嫌いの魔人に見つかった途端に惨殺されちまう。はやくしないとな・・・』


 しかし何度か挑戦したが、なぜかテレパシーは通じなかった。彼は自分の状態のことも相まって焦った。


 『ダメか、なら直接探すしか・・・ 』


 そうして歩き出したフィフスだったが、体は言うことを聞かずその場で倒れ込んでしまった。心配になった一人のおじさんが駆け寄ってきた。


 「おいおい、大丈夫かあんちゃん!!」

 『クソがッ!! 万事休すかよ。もう・・・ 意識が・・・』


 フィフスはそのまま気を失ってしまった。周りの魔人達はさらに駆け寄り、彼のことを心配した。


 「オイあんちゃん!!」

 「これ、マズいんじゃ無い・・・」

 「はやく医者を!!」


 騒ぎ立てていると、その内の一人がフィフスの顔を見た。


 「ん? こいつどっかで見たことが・・・」

 「知り合い?」

 「いや、でもどっかで・・・ 確か写真だったかな・・・」


 すると、騒ぎを聞きつけたのか、近くにいた魔王軍の小隊がやって来た。


 「何事だ!? こんなところで!!」


 住民はびくつきながらも、事の発端を説明した。


 「なるほど、ではその男はこちらで預かろう。」

 「おお・・・ 魔王軍が動くならもう安心だ。」


 かくして部隊のリーダーの男が患者を担ごうと近づくと、彼の顔を見て動きが止まった。


 「ん? 何か止まったぞ。」

 「どうかしましたか? 隊長。」


 疑問を浮かべている部下達と違い、隊長は顔からこれでもかというほどの汗をびっしょりかいた。


 「こ、この御方は・・・!!!」



______________________



 「アーーーーーーーーーーーー!!!」


 フィフスの心配する瓜も地面にたたきつけられていた。打ち所がまだ良かったのか、少し痛がりながらもすぐに直った。しかし立ち上がり見る景色には、四方八方見慣れないものが広がっていた。


 『こ、ここは一体どこだろう・・・ そうだ!! フィフスさん!!』


 すぐに瓜はテレパシーを送ったが、返信は無かった。


 『どうしたんだろう・・・ 返事が無いなんて初めて。何かあったのかな・・・』


 しかしそんなことを考えている間が無いことを彼女は知った。その住人はみんな、瓜の知る人間では無く、フィフスと同じ魔人だったのだ。


 そして彼らは、突如として現れた人間という存在に、住民は血の気が引いていたのです。そして・・・


 『ま、まさか・・・ ここは・・・』

 「に、人間・・・」

 「人間だ。人間がいるぞ!!」

 「何でこの魔王国に!?」

 「に、逃げろーーーーーーーーーーー!!」


 住民達は恐れおののき、その場から急いで立ち去っていった。


 『やっぱりここはフィフスさんが言っていた『魔王国』・・・ しかし、何で皆さん逃げ出したんだろう?』


 訳も分からず瓜はそこを徘徊していました。その様子を暗い路地から覗く陰が二人・・・


 「何だアイツら、たかが人間一人にビビり上がって。」

 「ホントに最近の魔人はへっぴり腰で参っちまいますねぇ兄貴。」

 「あの人間も、どうやってこの国に入ったかは分からんが、こうも町を我が物顔で歩くとは腹立たしい。ここは一発締めて、世の中の厳しさを教えてあげるとしよう。」

 「さっすが兄貴、大人な対応っす。」

 「「イッシッシッシ・・・」」


 視点が戻って瓜、とにかくフィフスを見つけ出そうと歩いていましたが、当然ながら行く当てなど無くウロウロしていていました。


 さらに時間も時間だったこともあり、すぐに日が沈みだした。宿も無い瓜は歩き続けてこそいたが、久しぶりの孤独にさいなまれていた。そしてその感情に、瓜はどこか今まで以上に寂しさを感じた。


 『こんな気持ちは久しぶり。なんで?』


 その事について、彼女はすぐに答えを思い上げた。


 『そうだ・・・ フィフスさんが私の所へ来てから、ハチャメチャでしたけど、毎日が楽しかった。彼が私に気を使って、契約のためとはいえ、必死に動いてくれた・・・』


 キュッ・・・


 瓜は自分の胸に手を当てた。


 『フィフスさんがいなくなった途端にこんな気持ちになるなんて、どこまで私は彼に甘えているんだろうな。彼はこの世界で、もう自分の家に帰って家族との一時を取り戻しているはず。それを私が邪魔するのは、恩知らずにも程があるよね・・・』


 瓜は動かしていた足を止め、腕も降ろした。表情は空よりも暗くなっている。


 『このまま会わないほうが、彼のためだよね・・・』


 どうにも心がもやつく中、結局彼女はどこに行くことも出来ずにいた。しかもその間に日が沈み込み、いつの間にか夜になっていた。


 流石の彼女も疲れが来たため、休憩をしようと近くの木の鉢に座った。先程までの騒動で上着を無くしていたため、体が冷えてきている。


 『さて、ここからどうしましょうかな・・・ お父さんにも、迎えに来てもらうことは出来ないし・・・ 勝手にこの世界の魔人を連れ去ったバチと言ったら、そこまでなんだろうけど・・・』


 へっクシュン!!


 『冷えてきましたね・・・ どこかで暖を取れればいいのですが・・・』


 寒さにくしゃみをした彼女の前に、忍び寄る二人がいた。


 「おやおや、こんな夜更けに若い女性が一人とは・・・ しかも、人間の・・・!!」

 「エッ?・・・」


 そこに来たのは、路地裏から瓜を見ていた二人組だった。その内の大柄な男が威圧をかけながら話し出す。


 「人間、ここはお前らのような『カス』が来て言い場所では無い!! 今すぐ立ち去れ!!」


 瓜はいきなりのことに固まってしまった。しかしそんなことは彼らには通じるわけも無く、小柄な男が話した。


 「さあ、帰った帰った。この御方は、かの勇者達を次々と葬ってきた無敵のゴブリン、『ゴブント

』様であるぞ。女、大人しく帰りな!!」


 そんなことを言われても瓜にはこの世界に帰る場所など無い。コミュ障が災いして話せないでいると、また勝手に話しが進んだ。


 「強情を張るか人間めが!! 兄貴、こんな奴はやくやっちまいましょうよ。」

 「まあ待て。この女、人間だが中々良い体つきだ。今夜のおもちゃに丁度良い。」


 ニヤッと悪くゴブントは笑った。


 「ひゃーーー!!、さっすが兄貴、人間相手に容赦が無いっす。」


 ちびがおだてる。その言葉にゴブントはさらに調子に乗った。


 「ニシシ、そうだろそうだろ。さあて、ここで最強の俺様と会ったのが運の尽きだったな!!」


 威張るゴブントに会わせるちび、二人分かりやすい悪役の笑い方をしながら近づいてくる。瓜は今日の疲れを押しきって逃げ出した。


 「ナッ!! 待て!!」

 「兄貴に恐れをなしたんですよ。アイツ」

 「それでもここまで来たら最後までやらないと気が済まん、追うぞ!!」


 瓜はどこか隠れる場所が無いかと探しながら逃げていたが、一つ大きな家を見つけただけで隠れられる場所など無く、いつの間にか行き止まりにまで追い込まれていた。


 『し、しまった!!』

 「フッフッフ・・・ 道を間違えたなお嬢ちゃん・・・」

 「お嬢ちゃん・・・」


 ニタニタした顔で彼らは動けなくなった瓜に攻めていった。


 「さあ、追いかけっこは終わりだ。大人しく俺様のおもちゃになってもらおうか・・・」

 『い、嫌・・・』


  どんどん近づいてくる二人。瓜は震えながら何も出来ない自分を情けなく思っていた。そな彼女を気にするはずも無く、ついにゴブントは瓜に飛びかかってきた。


 「ヒャッハーーーーーーーーー!!」


 そんな刹那の中、瓜が思ったことはたった一つのことだった。


 










 『フィフスさん!!』















 そのときだった、男二人の後ろから突如横蹴りを入れられ二人揃って真横の壁にめり込んだ。


 「・・・!!」


 瓜は暗がりと自分の涙目のせいで良くは見えなかったが、その目には見覚えのある二本角が映っていた。


 『もしかして、本当にフィフスさんが・・・』


 壁から脱出した二人はその鬼の方に振り返った。


 「て、てめえ、この俺様を蹴るとは・・・」

 「かの『ゴブント』様に・・・ 貴様何者だ!!」


 そこにいた鬼は明かりの下まで足を進めた。そこには・・・


 「ただの通りすがりの鬼さんよ。」


 フィフスではない全く違う黄鬼の女だった。


 『誰ですかーーーーーーーーーーーーー!!』


 状況について行けない瓜を放って話は続きます。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・ゴブント


 ゴブリンの戦士。得意技は強面なイケメンフェイスwで脅し倒すこと。



・ゴブントの手下。


 ゴブントが酒場でつるんだ手下。虎の威を借る狐だが、実は内心ゴブントを馬鹿だと見下している。




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