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第293話 家鳴 キコ

 その後、フィフスのスマートフォンからサードからの招集がかかり、瓜と静は彼女が指定したメイド喫茶の裏口辺りに集まりました。スマートフォンの持ち主は顔面を鷲掴みにされながら地面を引きずられていました。


 「ふ~ん・・・ そういうことだったの、納得したわ。」


 そこで女子二人からの事情を聞いてサードはようやくフィフスを手から離しました。頭がそのまま地面に落ち、さっきまでの攻撃が相まってかなり痛めています。


 「グガァ!!・・・」


 「ゴー君!!」


 瓜がすぐにフィフスに駆け寄ると、サードは後頭部に手を当てて軽い謝罪をします。


 「いやぁ~ごめんごめん。私てっきり一国の跡継ぎともあろう奴が落ちるところまで落ちちゃったのかと思って・・・」


 「お・・・ 王女がメイドになって・・・ 男に媚びを売るのは・・・ いいのかよ・・・」


 フィフスが途切れ途切れに文句を言うと、サードは容赦無く地面についた彼の頭を踏みつけました。


 「フンッ!!」


 「アガァ!!」


 「ゴー君!!」


 追撃に白目を向いたフィフスを気にしながら瓜はサードに一応聞きます。


 「あの・・・ 一応、聞きますが・・・ 何故ここに?」


 「当然バイトよ。ここの制服可愛いでしょ?」


 「は、はぁ・・・」


 瓜がリアクションに困っていると、サードは脚を乗せたまま自分の知っている情報を話してくれました。


 「あの坊ちゃんなら、週の初めくらいから来るようになったわね。それもアタシが見る分だけど、他の子には目もくれなくて、一人の子ばっかり話しかけているのよね。」


 「一人だけ? というと・・・」


 「最近ここのバイトに入ってきた『家鳴(いえなき) キコ』って子よ。彼女もプライベートで仲良くやってるみたいで、この前連絡先交換してたはよ。」


 「へぇ~・・・」


 静の表情は替わりませんが、手に持っている双眼鏡にヒビを入れてしまいます。サードはそんな彼女に追い打ちとなることを言い出します。


 「そういえばキコちゃん、今日シフト早く終わらせるって言ってたわね・・・ そろそろその時間だったはずだけど・・・」


 含みをある言い分に三人。フィフスと瓜は別の意味で嫌な予感をしていると、メイド喫茶の正面口から経義が出て来ました。その場で立ち尽くし、誰かを待っているようです。


 壁に身を寄せてそれを覗き見る四人。すると少し時間が経ち、経義のもとに赤いワンピースを着ながらも、そのスタイルが隠しきれていない若い女性が現れ、彼に声をかけました。


 「ごめん! 待った?」


 それは、さっきまでメイド喫茶で彼を接待していたキコです。フィフスと瓜は『やっぱり・・・』と内心で気落ちしていると、キコの呼びかけに経義が気軽な様子で返事をしていました。


 「いや、大丈夫だ。」


 そのときの声のトーンは、明らかに壁を作っていない親しげな関係であることを示し、静は無意識に掴んでいた壁にヒビを入れ、瓜とフィフスはそれぞれ反応の声を出します。


 「ヒィ!!・・・」


 「ウッワ・・・」


 静の怒りを知るよしもない経義。そのまま流れ出キコに本題を話します。


 「それで? 今日は何処に行きたいんだ?」


 対するキコも彼の左腕を抱き締め、その豊満な胸を躊躇なく彼に押し当てました。



 バキイィ!!!・・・



 静は表情こそ一変していませんが、掴んでいた壁をとうとう腕力で砕いてしまい、残りの三人はそれを見て口を大きく開きながら絶句してしまいます。


 「じゃあ行くか。」


 「ええ。」


 覗かれている二人はそんなことを知らないままその場から動き出します。その様子は端から見れば完全にカップルのそれです。


 「行きますよ。」


 「「は、はい・・・」」


 静の冷たい簡単な一言に、フィフスと瓜はただ賛同することしか出来ませんでした。そこからバイトを終えたサードも加わり、四人で経義とキコの後を追うことになったのですが・・・





 そこからは、フィフスと瓜にとってはとても気疲れし、サードにとっては見ていて面白い光景になりました。


 店を離れた経義とキコの二人は繁華街に出向き、そこでのショッピングを楽しんでいる仲睦まじい様子を見せつけられることになりました。盗聴器からも、二人の甘い会話の内容が嫌がおうにも聞こえて来ます。


 「この服、どうかな?」


 「お前にぴったりだ。俺が買ってやろう。」


 「いいの! ありがとう!!」


 イラッ・・・


 それに目を血走らせた静が殴りに飛び出そうとする度に二人が実力行使でどうにか止めていました。


 「グヌヌヌヌヌ!!・・・」


 「落ち着いてくれ! 頼むから落ち着いてくれ!」


 「このメイドちゃん相当荒れてるわね。」


 「分かってんなら見てねえで手伝ってくれよ!!」


 ここまで来るのに既に四、五回ほど静の制御にいそしみ、二人揃って正直かなり疲れてしまっています。流石にそれを受け続けてフィフスも静に突っ込みを入れました。


 「いい加減にしろよ!! お前から言い出したことを手伝わされて、なんで俺らばっか苦労しなきゃならねんだよ!!」


 「す、すみません・・・ どうにもあのアマの声を聞くと冷静な判断が出来なくなってしまいまして・・・」


 「あのアマって・・・ 怒りで口調が変わっちまってるぞ、おい・・・」


 フィフスが怒ったことで更に疲れていると、盗聴器からまたしても会話が聞こえて来ました。話の内容からして別れ際のようです。


 「今日は楽しかったぁ~!! ありがとう、経義君!!」


 「待て!・・・」


 テンションの高いまま彼女が解散しようとすると、経義がそれを呼び止めました。キコがそれに振り返り、覗いている四人も集中します。


 そして経義は真剣そうな顔をして、キコに真っ直ぐ伝えました。



 「明日、お前に言いたい大事なことがある。」



 「「「ンッ!!?」」」


 「わ、若様!?・・・」


 その言葉に、キコよりも四人が動揺してしまいました。

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 現在この作品の番外編に関するアンケートもやっておりますので、答えてもらえると嬉しいです。



フィフス「ちょっと前からやってるのに今更だな・・・」


瓜「他にもやることが多くて忘れていたみたいです・・・」





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