第27話 包囲!! 赤鬼
戻ってフィフスと瓜。時がたってフィフスの気持ちは大分落ち着き、抱きついていたことに気付いてすぐに離れます。
バッ!!
「ス、スマネエ・・・ うっとうしかったろ。」
「だ、大丈夫ですから・・・ エヘヘ・・・」
瓜ははぐらかした。少し気まずい空気が流れたが、そのとき勢い良く離れたことで、フィフスは気付きました。
『あれ、あんだけダメージを受けてたはずなのに、今は全く痛くねえ。既に回復している。これも剣の力か・・・』
考え事をしていたが、フィフスは今いる場所のことでそれは一旦預けることにして剣を鞘に戻し、立ち上がって気絶している化けゴウモリの契約者の所へトボトボ向かって行きました。
『・・・ン? ってか、アイツ今しゃべってなかったか?』
その事に気付いたフィフスだったが、また言って元に戻ると面倒なので今回は言わないことにし、そのまま倒れている男の元に足を進めます。
「さてと、とりあえずこいつは警察に引き渡すとすっか。」
『あの、その方は?』
『あ、戻った。』
「気にしなくていい、色々あったんだよ。」
そうしてフィフスが男の前まで行き、近くに見つけたウエディングドレスの布を引きちぎり、丈夫な縄を作って彼を拘束しようとします。しかしそのとき・・・
「!!」
カチャ!! カチャ!! カチャ!! カチャ!!
カチャ!! カチャ!! カチャ!! カチャ!!
「目標確認、射撃体勢に入りました。」
「よし、そこの『赤鬼』無駄な抵抗をせず出てこい!!」
突如アパートの出入り口からフィフスに向けて大量の銃口を突きつけられました。訳も分からずあたふたする瓜をよそにフィフスは後ろを振り向いてそこにいた集団を睨み付けます。
『こいつら何者だ!? 警察にしても数が多すぎるだろ。どうする、下手に動くと瓜を巻き込んじまう。 注意を俺に集中させるか。』
そしてフィフスは振り返ると共に腕を構え、火花弾を打ち出そうとしました。しかし・・・
『なぜだ、なぜ出ない!?』
フィフスの手からは、火花どころか熱くすりませんでした。そしてそこに急な疲れが押し寄せ、本人の意思を無視してその場で崩れ落ちてしまいました。
「フィフスさん!?」
「何だ!? 他にも誰かいるのか?」
『まさか、今の一発で「魔力切れ」かよ・・・ タイミングの悪いことだな・・・』
様子を見て心配になった瓜は機動隊に見えることを考えずフィフスの所に駆け寄りました。
『大丈夫ですか!?』
「馬鹿・・・ 今お前が出たら余計ややこしくなるだろが・・・」
「エッ・・・」
フィフスの言うとおり、瓜が見えたことによって機動隊は良からぬ方向に考え出します。
「おい、中から女の子が出て来たぞ!!」
「まさか人質か!!」
「奴め、卑怯な手を・・・」
『こ、これは一体・・・』
機動隊の反応に戸惑う瓜。それに対して納得のフィフス。
「こうなると思った。理由は知らんが、魔人退治に来てやがる。」
『エエッ!! じゃあこれって・・・』
「化けゴウモリがやったことが俺のせいになっちまってる。」
フィフスが完全に参っていた。いくら彼でもこの状況は詰みだったのです。
「抵抗するな、出てこい!!」
『ここは素直に受けるしかねえか・・・』
「瓜、肩貸せ。」
フィフスは瓜に半ば担いでもらう形で立ち、支えられながらアパートを出ました。そこには、見慣れない特殊な服に身を包んだ集団が隊長らしき者を除いて全員銃を向けています。しかし、瓜がフィフスを助けていることに隊員達は驚いていました。しかし彼らの意思は変わりませんでした。
「一番隊は人質の解放、二番隊は部屋の中の捜索、残りはあの魔人に集中攻撃だ。」
「「「了解!!」」」
指示を受けた彼らは瓜を無理矢理引き剥がそうと近づきました。本人は嫌がっていますが、聞く耳は無いようでした。とうとう腕を掴まれ、後が無くなったときでした・・・
バチッ!!
そのとき、瓜の体から電流が流れ、隊員の腕を弾いたのです。
「ナッ!! 何が・・・」
フィフス達も含めて何が起こったのかと思うと、今度は地面に突如巨大な魔法陣が出現しました。
『黒い魔法陣? 一体誰が・・・』
などと考えている間にその魔法陣は光り輝き、隊員達の目を眩ませた。そしてフィフスと瓜の二人はそこへ足から沈んでいき、身動きが取れなくなりました。
「ナナナナ、何ですかこれ!!」
「わからん!! だが何か嫌な予感がする・・・」
フィフスの予感は当りました。二人は完全に魔法陣に吸い込まれ、底の無いいびつな空間に放り込まれてしまいました。
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「今彼らに退場されると困るんだ。これで一つ貸しってことで。」
魔法陣を発生させたのは、他でもないカオスでした。
「さてと、僕も次の手を打たないとね。そろそろ彼らも暴れたいだろうし~・・・」
化けゴウモリの契約者の男のことをすっかり忘れ、カオスはそこから立ち去っていきました。
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その頃の二人。謎の空間の中で自由に動く事も出来ず、なんとか互いの人差し指を掴んで一緒にいます。
「瓜、なんともないか!?」
『私は大丈夫です。それよりフィフスさんは・・・』
「俺も大丈夫だ。手を伸ばせ。」
そう言われて瓜はもう一つの手を伸ばし、フィフスもそれに合わせて伸ばします。しかしそのときフィフスの体力が持たず、掴んでいた指を離してしまいました。
「イッ!! しまった!!」
途端に瓜とフィフスは引き離され、お互い声をかけたがすぐに姿は見えなくなってしまいました。
「瓜ーーーーーーーーーーーーー!!」
「フィフスさーーーーーーーーーーーーーん!!」
そしてフィフスはその流れに押されるまま空間を進んでいき、少しして彼の目の前に全身が通れる大きな穴が出現し、フィフスはそこに吸い込まれていきました。
穴から出たフィフスは、すぐに堅い地面に顔面から激突した。
「ドべシャ!!?・・・」
さらに増えた疲れにさいなまれながらも彼が剣を抜き、杖代わりにしてその地面に立ち上がり、前方の景色を見た。そして見えたものに、彼は大きな衝撃を受けました。
「!? ここは・・・」
レンガで出来た建物
禍々しい薄暗い暗雲の空
町を行き交う魔人の民達
・・・そこは、フィフスのふるさとである『魔王国』だった。
<魔王国気まぐれ情報屋>
突然放り込まれて瓜と離れてしまったフィフス。思いの他流れが強くて現在グロッキーになりかけ。
『ウプッ!!?・・・ これもうしばらく続いたら確実に吐くぞ・・・』
しかしその後すぐに到着したため難を逃れた。
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