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第281話 以津真天

 敵の攻撃の正体が分かったルーズ。瓜は当然それが気になって彼に聞き、彼も素直に答えます。


 「攻撃の正体!? それって・・・」


 「空気弾です。僕の風刃と同じく、周辺の空気を固めている。おそらく移植を弱めた分速度を上げているのでしょう。」


 するとルーズは右腕の肘を直角に曲げて前に出し構えながら話を続けます。


 「おかげで、大体の居場所も読めましたしね!!」


 話を切った途端、彼は斜め上の上空に風刃斬撃を撃ち出し、上空の雲に命中させ、その雲は簡単に真っ二つに切り裂かれてしまいました。


 「雲が真っ二つに!!?」


 「雲じゃありませんよ。あれは・・・」


 ルーズが腕を下ろす頃、彼が切り裂いた雲が再生すると共に形を変化させていき、それが完了して見せたのは、人と鳥を足したような風貌の魔人が背中の羽を羽ばたかせています。


 「やはり擬態してましたか。」


 「魔人!? あんな所に!?」


 「以津真天(いつまで)ですか・・・ しかしあれは・・・」


 以津真天はグッと目付きをこわばらせて二人を睨み付けてきます。


 「いつまで・・・」


 「ん?」


 「いつまで・・・





  ・・・いつまでこんな茶番を続けるつもりだぁ!!!」


  するとその魔人は叫んだ分以上の空気フッと吸い、一気に吐き出しました。


 『<疾風術 風針(ふうし) 豪雨>』


 「「ッン!!」」


 瓜は目で、ルーズは耳で頭上にさっきまでの攻撃が大量に降ってきたことを感知し、ルーズがすぐに風渦幕を発生させて弾き飛ばそうとしますが、攻撃の速度が速く、何発かは防御しきれずに二人の頬や肩をかすってしまいました。


 「クッ!・・・」


 「ウッ!・・・」


 ルーズは防御の姿勢を崩さないまま以津真天を見て考え込んでいました。


 『どういうことだ!? さっきの斬撃で奴の体は真っ二つになっていたのがああも軽々と戻るなんて・・・ そもそも以津真天に雲に擬態する能力なんてなかったはず・・・』


 激しい攻撃は収まりましたが、ルーズの攻撃を警戒してか以津真天は更に上空に飛ぼうとします。しかも動きながら一方的に二人に文句を言いつけるおまけ付きです。


 「何故邪魔をする!? 私は契約者の願いを叶えようとしているだけ。あの女も、それを心の奥では臨んでいるではないか!!」


 「条件を言ってないんでしょう! 自分が魔人になるだなんて聞いてたら、普通断りますからね!!」


 「だが願いは本物だ! それも相当切羽詰まったな! おそらく魔人化のことを言わなくても奴は私達にすがってきただろうよ!!」


 叫んでいる途中、以津真天はルーズの風刃で羽を切り裂かれてしまいましたが、またしてもすぐに修復されて空を飛び続けます。


 『チッ、やはりダメか・・・ ん?』


 二度の攻撃を受けても全く効果のない以津真天を見てルーズは少し違和感を感じました。


 『彼のあの姿、鋭いくちばしにかなりの筋力、あんな細かい針を飛ばさずとも戦えるはずでは・・・』


 しかし考え事をさせる間もなく、以津真天は次の攻撃を撃ち出してきます。後ろに瓜がいるため下手に動けない彼は待たしても防御に徹せざる終えません。そうしている間に、以津真天の姿がまた雲に変化していきます。


 「また雲に戻るか! これではキリがない!!」


 その後ろで守られてばかりいる瓜も、自分に何か出来ないかと、ポケットからマグナフォンを取り出します。


 『さっきから私、何の役にも立てていない。せめて、相手の弱点だけでも見つけないと・・・』


 瓜はどうにか手がかりだけでも見つけようと注意深く変化していく以津真天の姿を見ていきます。そこで皮肉なことに、過去の経験から彼女が普段から人の顔を見る正確が功を奏することになりました。


 雲に変化する直前、彼女は以津真天の表情に少しだけ変化があったことを見つけたのです。


 「あれ? なんだか、苦しそう?・・・」


 「苦しそう?」


 瓜がふとこぼした声に、ルーズも気になってまいます。そこで瓜は自分の主観で思った事を彼に伝えました。


 「いやその・・・ 何というか、雲になりかがっていない・・・ ような・・・」


 今だフィフス以外の相手に一心に注目されるとコミュ障が出て声が途切れ途切れになってしまいますが、ルーズにはこれでも伝わりました。


 「雲になりたがらない・・・ まさか故意で変化していないというのですか?」


 「あ、あくまで私の予想ですが・・・」


 謙遜する瓜ですが、ルーズは彼女の言い分とこれまでも魔人による花への襲撃の仕方、そしてフィフスから彼だけ事前に言われていたことを思い返します。


 『王子は千年モグラは囮と言っていた。わざわざそんなものを用意してまで何故直接襲撃しなかったのか・・・


   もしそれが出来ないのだとしたら・・・


    再生が本人にも仇になっているとしたら・・・』


 そのとき、ルーズの頭の中で電流が勢い良く流れるように物事が繋がった感覚を覚えました。


 「そうか・・・ そういうことか!!」


 ルーズは何かを理解した途端、目付きを真剣なものに戻して再び前を向き、瓜に聞き出します。


 「瓜さん?」


 「はい?」


 「少しの間集中したいので、防御を解いてもいいですか?」


 「・・・」


 瓜はそのルーズの声に、何か考えがあることを理解します。そんな時の彼女の答えは当然・・・





 「はい! 後は自分で頑張ります!!」


 瓜は意識的にガッツポーズをして、気合いを入れるポーズを取ります。ルーズは後ろも見えているわけでもないのにあたかもそれが見えているような話をします。


 「そう力まなくても大丈夫ですよ。」


 するとルーズは上空への防御を解き、顔を下げて左腕の肘を曲げて指を少し丸め、そこに同じく指を少し曲げた右腕を少し空間を空けて重ねます。手元の形だけはおにぎりを握るときのものに似ています。


 「奴には、一撃でトドメを刺しますので。」


 顔を上げたルーズは、瓜にハッキリそう言ってのけました。

<魔王国気まぐれ情報屋>



モチーフ紹介


・以津真天


 『親指姫』より渡り鳥




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