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第279話 仏の顔も三度まで

 フィフスと千年モグラが真っ向に向き合い、お互い相手の出方を伺って動かない膠着状態。そんな中で千年モグラは、まず気になったことを率直に質問しました。


 「どうして俺があの車を襲うと分かった?」


 フィフスの方も警戒を緩めないまま話をします。


 「あの仮面野郎の打つ手が一つだけとは思えなかったんでな。だがあんな格好の本人が撮影現場に直接はいることは出来ないんでな。せいぜい出来るとして事前の仕掛け・・・


  ・・・根須のスマートフォンの位置情報を追跡したんだろ。」


 「ッン!!・・・」


 千年モグラが黙り込みます。まさしく図星の意思表示です。


 「それでまんまと正面からやって来てくれたおかげでここまで追い込めたわけだ。マネージャーが気絶するのは想定外だったがな。」


 フィフスの言葉に千年モグラは一度怒りの表情を見せましたが、その顔を下げて今の心境を誤魔化そうと言葉を吐きます。


 「ヘッ!・・・ 標的がここにいないのなら俺がここにいる意味はない。この場は改めさせて貰おう!!」


 千年モグラは今までと同じく戦う気はないようで、またしてもその場から逃げ出そうと先程二人の前に出るために開けていた穴に飛びかかるように入っていきました。


 「マズい! 逃げられるぞ!!」


 「心配ない、予想済みだ。」


 鈴音は焦り出しますが、フィフスの方は一切その様子がありません。彼はすぐに千年モグラが入っていった穴に近付き、大きく息を吸い込みます。そして穴の中に向かって思いっ切り吐きながら火炎を出しました。


 『<火炎術 放射炎>』


 「な、何してんだ小馬ッチ!?」


 鈴音は彼の行動が理解できませんでしたが、その意味はすぐに実例を見て分かることになりました。何故なら・・・


 「アチャチャチャチャチャァァァァァ!!!!!」


 穴を掘って逃げていったはずの千年モグラが、鈴音の後ろ少し離れた所から突然大声を出して出て来たのです。


 「エェッ!!?」


 相手の姿を確認したことでフィフスは放射炎を止め、穴に近付けていた頭を戻しました。驚いた鈴音は動揺してフィフスに聞きます。


 「い、一体何があったんだぞ!!?」


 彼女の質問にフィフスは奥にいる千年モグラに近付きながら、彼にも伝えるように答え出します。


 「俺はたまたまここに来たわけじゃねえ、周りを見てみろ。」


 鈴音は言われた通り周辺を見回すと、焦りで気付かなかった建物の群が初めて目に入りました。


 「ここは・・・」


 「即席で見つけたビル群間の細い道。地下にはぶっとい鉄骨があって爪を通さない。逃げるには来た道を真っ直ぐ進むしかなく、自然その攻略も楽だ。穴に火を吹きゃモグラたたきのように出てくるんだからな。ここら一帯、『ねずみ取り』ならぬ『モグラ取り』ってことだ。」 


 鈴音は説明を聞いて納得するも、千年モグラの方はそうもいきません。彼にとって穴掘りの速さは、これ以上ない自信を持っていました。それに直線一択だったとはいえ、たかが必殺技でもない術に追い付かれてしまったのです。


 それと同時に彼はフィフスの目を見ました。その視線からはここまで見せられた威嚇ではなく、体を震わせる本物の殺気がありました。フィフスはもう千年モグラの命を逃す気はないようです。


 『あり得ない速さ・・・ ここまでの戦闘には見えてこなかった殺る気。モードに入った途端これか・・・ 恐ろしい奴だ、獄炎鬼・・・』


 相手のことに一周回って感服した千年モグラは、両腕を軽く上げて見せました。一見するとそれは、降参の意思表示です。フィフスもこれには首を傾げて聞きました。


 「何のつもりだ? 今になって負けを認めたか?」


 「ある意味その通り、正面から相手をしてもやはりお前には叶わなそうだ。だが・・・」


 千年モグラは悪あがきと言わんばかりにまたも砂雹をぶつけてきます。白兎のいないこの場で吸引は出来ず、狭い場所では魔石を使っての疾風術も使えません。


 そのため今回はもろに目くらましを受け、千年モグラに動かれてしまいます。しかし彼の目的はもうこの場から逃げ切ることではありませんでした。


 「キャア!!」


 「鈴音!?」


 砂雹が晴れてフィフスが前を見ると、鈴音の左腕を掴まれて拘束し、首元に爪を突き付けている千年モグラの姿がありました。


 「お前・・・」


 「正面からで勝てないのなら、人質を取ってしまえばはやいだろ? 卑怯と思うのならいっても構わないぞ。」


 「ウッ・・・ ググッ・・・」


 フィフスは剣を掴む手が強くなります。しかし決して千年モグラの先方にケチを付けることはありませんでした。


 「そうは言わない。戦い方は個人の自由だからな。」


 「ほう、話が分かっているな。じゃあ早速その剣を捨てて貰おうか。」


 優位な立場に立ち、千年モグラは揺さぶりをかけてきます。ですがフィフスはそんな彼に冷たく返しました。


 「お前、忘れてないか?」


 「あ?」


 すると次の瞬間、鈴音の姿はフィフスの側に移動し、千年モグラは一度に何度も攻撃を受けたときの激痛を感じるのと同時に吹っ飛んでいました。


 「アァ!!?」


 フィフスはコウシンを使用し、千年モグラから鈴音を奪還すると共に抵抗できないよう相手に何度の打撃を叩きつけていたのです。


 千年モグラは地面にこすれながら落ちると、何度の攻撃されたショックで軽く嘔吐して崩れ落ちてしまいます。


 「ガハァ!!・・・ アァ・・・」


 「俺にはこの手は効かないんだよ。」


 千年モグラはもがき苦しんだが、すぐにその場がどこかに気が付きました。吹き飛ばされたことで、細い道から彼が出てしまっていたのです。


 『不幸中の幸いだ! ここなら潜れる!!』


 千年モグラは早速地面に爪を突き立てますがフィフスがそんなことをさせるわけがありません。用意していた火炎刀を地面にこすって斬撃を飛ばし、相手の近くで渦に変形させて動きを拘束しました。


 「ナガッ!!?・・・」


 渦からうっすら見える向こうから、フィフスは剣を振り上げて走ってきます。迫り来る死に怯えた彼は声を張り上げます。


 「まっ! 待てっ!!」


 命乞いをする千年モグラにフィフスはきつい目のまま答えます。


 「お前知ってるか? この世界にはこんな言葉があるらしい・・・


  ・・・『仏の顔も三度まで』だってな!!」


 彼はそのまま身動きの取れない千年モグラを袈裟斬りにし、相手はそのまま燃えて灰化し、風に吹かれて散っていきました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・フィフス達魔人は、生まれつき一族姓の魔術しか使うことが出来ません。


 しかし属性によって色の違う魔石を消費することで、他の属性の魔術も使用可能です。




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