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第277話 事務所からの返答

 撮影場所から少し離れた薄暗い細い道。先程女性陣三人に追いかけられていた青年が膝を抱えて息を切らしていました。


 「ハァ・・・ ガァ・・・ さっきは間に合わなかったが、次こそは・・・」


 何か独り言をこぼしながら膝に乗せていた手を外して再びさっきの場所に向かおうとします。そんなあれの背中に一瞬弱い風が当たった感覚を感じました。そして次の瞬間・・・





 

 「勝手な事をされると困るなぁ~・・・」



 「ッン!?・・・」


 突然耳元に聞こえてきた声に青年がゾッと体を震わせて振り返ると、さっきまで影も形もなかったカオスがすぐ近くに現れていました。


 「君の願いはこっちが叶えてあげるって言ってるだろう。そうカリカリしないでこっちに全部任せておいてよ。」


 カオスはやれやれといったような感じで軽口を付いていると、相手の青年、『園田(そのだ) 密潮(みつしお)』は血相を変えて反論し始めました。


 「他人を怪我させていいなんて誰も言ってない!! 俺はただ・・・ ただ! 花と話をしたかっただけで・・・」


 「しょうがないでしょ。売れっ子女優の時間を赤の他人が調整するのは大変なんだから。願いを叶えたいなら、多少の我慢は必要なんだよ。」


 「それとこれとは違う!!」


 密潮がカオスの減らず口に応じず反論し続けましたが、今度はその音をかき消す轟音が耳に入ってきたことで強制的に止められてしまいました。


 「!!?・・・」


 近くに雷でも落ちてきたような音に密潮は音の鳴った方向を注目すると、またしてもさっきなでは誰もいなかった場所、今回はカオスから少し離れた場所に、着地地点を陥没させ、右腕に気を失っている千年モグラを抱えたフログが立っていました。


 カオスも彼の存在に気が付いて後ろを振り返って声をかけます。


 「アッ! フログ、お疲れ~」


 「・・・」


 フログは無言のままその場に抱えていた千年モグラを下ろして離れると、気を失っていた千年モグラが目を覚ましました。


 「ウッ!・・・ グゥ・・・ ここは?・・・ どうしてここに?」


 「フログが運んでくれたんだよ~ 感謝してあげてね。」


 千年モグラはフログの名前が出て来た途端に全身の毛が逆立つように驚き、近くにいた本人の姿を見て尻をついたまま後ろに下がり出しました。


 「ヒィ!! しょ、処刑人!! お、俺を狙ってきたのか!!?」


 「今回は例外だ。それに俺は管理人でもある。そうそうあの手は使わん。」


 若干震えが収まらないながらもフログ本人からの声を聞いて千年モグラは自分を落ち着かせ、その場に立ち上がりました。会話の内容が一人理解できない密潮は戸惑ってしまいます。


 しかしそんなことはお構いなしにフログはカオスに話しかけます。


 「例の人間からの情報は?」


 「それが内通者がいたことが魔王子君にバレちゃって。もう女優さんの側近から情報は手に入らないよ。」


 「ならばどうする? 手を打たれて匿われたら動きづらくなる。


  ・・・が、お前のことだ、他にも手は考えているんだろ?」


 フログの言い回しに、カオスは「ククク・・・」と小さく笑い声をこぼします。


 「・・・うん、君の言った通り。仕掛けはたった一つじゃない。千年モグラもそれのためにいるんだからね。」


 「お前の悪趣味のせいで俺まで巻き込まれたんだがな。」


 「そこはまあ、同期のよしみって事で頼むよ。」


 カオスは例のごとく形だけの頼み込みをし、その態勢を解くとボソッと暗いトーンで一言こぼしました。


 「まぁ、あの女優さんはどっちにしろ現状から逃れることは出来ないんだけどね。」


 その声を拾った密潮は、感じ取った不安から瞳を震わせました。



______________________



 そのとき、フィフス達臨時マネージャー四人組は、監視下の元本当の事務所と連絡を取っていた根須からその返答を聞きました。


 全員ここまで大事になってしまっては、原因がどうあれ花のスケジュールを変えざる終えない。颯太かをくくっている部分がありました。ですが根須から聞いた言葉に、四人は驚愕してそっくりそのまま返してしまいました。


 「ハァッ!!?」


 「「「「仕事を続行させる!!?」」」」


 根須は圧に押されて無言で首を縦に振って言葉を肯定します。次に鈴音や瓜がより前のめりになって攻めてしまいます。


 「何でだぞ!? 怪我人も何人も出てるのに!!?」


 「いくらなんでもおかしいです!!」


 根須は注目の視線に耐えかねて自信の視線を逸らしながら事務所からの見解を伝えました。


 「本人には特に支障がないから・・・ そして、これまでのアクシデントは偶然重なっただけと、判断されたそうです。」


 「そんなのって!!・・・」


 かといって魔人の存在を公にすることは出来ない。なにより当事者でもない人に話しても聞いてもらえない。しかし異世界からやって来ていたフィフスの取っても、この処置は異常に思えました。


 「おいおいこれは笑えないぞ・・・ これが『ブラック』ってやつか? 随分人のことを考えていないと見られるが・・・」


 「こうなっては仕方ないわ。うちの事務所は大手だから、下手に逆らえば芸能界での活動が出来なくなってしまう・・・」


 それを言われてしまっては、部外者である四人も口を閉じざるおえません。話を聞いた花も膝の上に置いている両手を震わせています。


 少し考えたフィフスでしたが、そんな花の姿を横目に見たことで口を開いて周りに聞こえるようにハッキリ言いました。


 「仕方ない。下手に隠れるより向こうから来たのを返り討ちにする方が手っ取り早い部分もあるしな。」


 「ゴー君・・・」


 「そ、そうだな!」


 「そう考えることにしましょうか。」


 フィフスの鶴の一声それぞれ自身を納得させた一行。そうして四人は次の撮影現場に行く準備をすることになりました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


 フログは魔革隊の一般構成員からは他の幹部より恐ろしい存在として認識されています。


 基本姿を見れば自分がやられると印象づけるため、幹部間でしかほとんど彼は姿を現しません。





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