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第276話 花の恋人

 フィフスとルーズは、根須から聞いたパワーワードに特に驚くような様子は見せず、ただ落ち着いて聞き入れていました。むしろそんな素っ気ない反応に根須の方が困惑してしまいます。


 「やっぱりか。」


 「のようですね・・・」


 しかし根須はそこに間髪を入れず反論も入れます。


 「でも彼は悪くない! 怪物を誘い込んだのは、私の勝手です・・・」


 「どうしてそんなことした!?」


 「花に!・・・ 彼女に少しでも、元気になって欲しかったから・・・」


 一見すると根須の言うことは訳が分かりませんが、二人は特に疑問を浮かべる様子もなく、彼女の言い分を聞き入れていました。


 「花と彼は高校時代からの付き合いなんです! でも、花の人気が上がれば上がるほど会える時間がなくなってしまって・・・


  花自身も表向きは大丈夫そうな顔をしていたけど、近くで見てるとあの子が辛そうで・・・ 花のためとは分かっていても、どうにかならないかと私もずっと悩んでた。そんなときに、仮面の男が彼の願いを叶えに来たとか言って現れて・・・」


 彼女は少し前にカオスに会ったときに彼が言った台詞を思い出します。


______________________



 「あの女優さんの彼氏さんに頼まれて来ました~ ということで協力お願いしていいですか?」


 当然根須も、突然現れた訳の分からない格好の男を信用するわけありません。彼女は部屋の出口に向かって後ずさりながらも疑いの声を出しました。


 「そ、そんなこと! どこかの迷惑なファンが・・・」


 「『園田(そのだ) 密潮(みつしお)』からの頼みって言ってもですか?」


 「ッン!!・・・」


 根須は密潮の名前が出たことに目を丸くして反応し、ドアノブを掴みかけた手を下げてしまいました。そして開いた目を震わせながらついカオスにもう一度聞いてしまいました。


 「今、何て・・・」


 カオスは調子を良さそうにしながら右手の指をパチンと鳴らします。するとさっき根須が開けようとした扉が勝手に開き、そこから彼女が見たこともない奇っ怪な怪物が入ってきました。


 「アァ!!・・・」


 現れた怪物に根須が扉から離れて腰を抜かすと、カオスはその怪物の肩に触れて諫め、根須の近くでしゃがみ込みます。


 「ごめんごめん、ビックリさせちゃったね。彼も悪いやつじゃないんだ。でも悪役に目立つならうってつけだろ?」


 「何が言いたいの?」


 「売れっ子女優に休みを与えて彼氏君と会わせる口実を作ろうって事。汚れ役はこっちで引き受けるからさ。どうだい? 彼女のためにも・・・」


 根須は不思議と、たった数分でこの異様な状況になじんでいった。実際今の花に事務所がそう簡単に長期の休暇を与えてくれるわけがない。そして頭の中に、辛そうな様子の花の姿がまた思い浮かびます。


 「・・・」


 考えた結果、根須はカオスと手を組むことにしました。



______________________



 一通り話を聞き終えたフィフスは、千年モグラの叶えようとしている願いの内容を簡略化して口にしました。


 「よ~するに千年モグラの契約内容は彼氏に花を会わせること。そのためにアイツを攫いに来てたのか。こんな大事(おおごと)にまでして・・・」


 「人を怪我させるなんて、そんなことは許していない。」


 「だが定義もしてなかったんだろ? 魔人の契約は縛りの穴を縫ってくるのが当たり前になっているからな。いくらでもこんな荒っぽい手は使ってくるぞ。」


 根須はフィフスにそれを言われて申し訳なさそうに顔を暗くし、頭を下げます。


 「ごめんなさい・・・」


 「こうなるともう花の予定は変えざる終えない。謝罪する時間があるなら、事務所に交渉でもしたらどうなんだ?」


 「・・・ 分かりました。」


 フィフスは根須に一方的に承諾させると、ルーズと共に後ろに顔を向けて軽く行きをするように口にします。


 「んで、そろそろ盗み聞きは止めて出て来たらどうだ?」


 後ろの壁の影に隠れていた影がその言葉を聞いて「ビクッ!!」っと体を震わせます。そして観念し、その場から姿を現しました。


 「既にバレていたんですね・・・」


 「さ、流石の察しの良さだぞ・・・」


 現れたのは花の楽屋で会話を続けていたはずの瓜と鈴音でした。


 「お二人とも、どうしてここに?」


 「いや、マッチーがなんか隠し事してそうって言って・・・」


 「すみません! でもゴー君がこんなにお腹を悪くするとは思えなくて・・・」


 『腹痛で誤魔化すのは一回が限界だったか・・・』


 と内心フィフスは反省しましたが、次にその口でルーズに文句を言い出しました。


 「ルーズ、お前勘が鈍くなってんじゃないのか?」


 「わざとですよ。この際二人にも話を聞いて貰った方が話が早いでしょう。」


 「あ、いや・・・」


 鈴音がルーズの言葉を聞いて微妙な顔を浮かべます。その彼女の後ろから、この場で最も話を聞いてはまずいであろう花が姿を現したのです。根須は大きく動揺し、音のずれた声を出してしまいました。


 「三人でしたか・・・」


 「貴方まで・・・」


 「根須さん・・・ 本当なの、今のこと・・・」


 根須は花に顔向けできないまま小さな声で返事をします。


 「ええ・・・ 本当よ・・・」


 花はショックと驚き、そして少しのうれしさを受けたような、妙な衝撃に襲われ、その場を数歩下がってしまいました。


 「花さん・・・」


 「いい、大丈夫だから・・・」


 心配して寄り添おうとする鈴音に花は素っ気ないながらも配慮した返しをし、両手を握って自身の肩を下ろします。


 フィフスも花、そして内通者がらみのことで気が気でない瓜にこの話を聞かれたことに少々もやつきがありましたが、今更その事についてどうもなりません。なので彼は花に直接聞きました。


 「さっきも言ったとおりだ。ここまで来ると流石にしばらく仕事は休んだ方がいい。」


 「・・・ 分かったわ。」


 もどかしさや引っかかりも残ったままでしたが、この場で花からも許可が取れたのを良しとすることにし、この後のことを相談するためにルーズを連れてこの場を離れていきました。


 「・・・」


 しかしフィフスは、そのときすれ違ったときの瓜の暗いことを考えている表情が目に焼き付いてしまいました。

<魔王国気まぐれ情報屋>


・念のためトイレットペーパーを用意する女子三人


鈴音「万が一本当だったときのために・・・」


瓜「どっちにしろゴー君にとって恥ずかしいような・・・」




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