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第274話 卒業生

 二つの場所でそれぞれ事件が起こり、どちらも解決しないままに元の場所に集合していきました。


 当然ながら怪我人がたくさん出たことで今回のドラマの撮影も中止になってしまい、無事で済んでいた花は匿われる形で撮影場所の楽屋に戻され、部屋の中にある椅子に座り込んでいました。


 「・・・」


 さっきの青年との一件から、花は落ち込んで無言のまま暗い顔を下に向けています。


 根須もマネージャーとしてこの後の予定の折り合いを合わせるために事務所と話をするといい、一人楽屋を離れて電話をしに行き、この場には一緒に戻ってきた瓜と鈴音が彼女を見守っていました。


 「花さん・・・」


 「・・・」


 二人としては花に青年とのことを質問をしたいものの、どうにも落ち込みきっている彼女に対してそれが酷に思えて出来ませんでした。


 そこに校舎で白兎との会話を終えたルーズが部屋に入ってきました。


 「ただいま戻りました。」


 「ルーズさん。」


 するとルーズの姿を見た途端、さっきまで難しい顔をしていた鈴音が膨れた表情に変わって彼に詰め寄り出しました。


 「ルーズ!! 怪我人ほっといて何処行ってたんだぞ!!」


 「すっ! 鈴音様!!?」


 ルーズは予想外に鈴音に怒られていることに動揺してたじろいてしまいます。


 「あの後本当に大変だったんだぞ!!」


 「も、申し訳ございません、鈴音様。」


 この光景を見ている瓜は鈴音に対して『貴方も途中で離れたのでは?』と思うところがありましたが、それを言う前に会話が収まったのでその言葉は流れてしまいました。


 「もう! 執事なのに頼りないぞ。」


 プイッとそっぽを向く鈴音。実際の所はいきなりいなくなった彼への心配もぶつけていたのですが、恥ずかしくて隠してしまいます。


 ルーズは焦りの汗を頭から飛ばしながら苦笑いをしながらこちら側の世界のご主人様である鈴音の機嫌を戻そうと苦労します。騒がしくなった部屋の音に花はゆっくりと二人の方に顔を向け、そのやりとりを見始めます。


 しばらくその様子を見ていた花は、その内痴話喧嘩をしている二人の姿が、誰か別の人物二人の姿が重なっていき、そして無意識に言葉をこぼしてしまいました。


 「懐かしいなぁ・・・」


 「「「エッ!?・・・」」」


 瓜はもちろんのこと、その場でもめていた二人も、花がこぼした言葉に反応して彼女の方に顔を向けました。花はいきなり注目されたことに戸惑いながらも、そこは女優としてすぐに適応して話し出します。


 「いや・・・ 二人を見ていると、なんだか学生時代の自分と重ねちゃって・・・ こんな大変なときなのに、ごめんね・・・」


 再び自分を責めて落ち込みかけた花に、三人は励ますように声をかけます。


 「いやいや! こんなときこそです!!」


 「そうだぞ! 大変なときこそ、気持ちだけでも明るくしておかないと!!」


 「湿っぽくしていても、状況は変わりませんしね。」


 ルーズの冷静な言葉に、花もそれに感化され、少し明るい顔つきになりました。


 「それも・・・ そうかもね!」


 小さいながらも不安から抜けた花は、この場だからこそのくだらない世間話をし始めました。


 「そういえば、貴方たちは、何処の学校に通っているの?」


 「え? 御伽高校ですが・・・」


 瓜に彼女達が通っている学校名を聞いて、花は目を丸くして座っていた席から立ち上がり、前のめりの姿勢になりました。


 「御伽高校!? みんな、御伽高校に通っているの!!?」


 「は、はい・・・」


 「そうですが、それが何か?」


 突然花が自分達の通っている学校名に食いついたことに三人が驚いていると、彼女は自分の胸に手を当てて何処か嬉しそうに話しました。


 「私! 御伽高校の卒業生なの!!」


 「「「エェ!!?」」」


 「花さんが、ウチらの先輩!?」


 鈴音は今売れに売れまくっている人気女優が自身の先輩だったという事実に大きく驚き、そして自然と口元が緩んでしまいました。


 「そんなことが! 偶然でも凄いぞ!! 花さんがウチらの先輩だっただなんて!!」


 鈴音のテンションに乗せられ、花も自分が思い出す御伽高校についての話を楽しそうに続けます。


 「ねえ、学校の校庭の隅っこの桜の木って、まだあるの?」


 「はい! なんでもその木の下で告白して結ばれたカップルは一生添い遂げるって、昔から学校の都市伝説になってて・・・」


 「そうそう! その都市伝説まだ続いていたのね!! ねえねえ! あれはまだあるの!?」


 思い出話を語り合い、段々と花だけでなく、鈴音や瓜からも重い緊張感がなくなっていきます。ルーズは御伽高校似通い始めてまだ数ヶ月のため、コアな話しについて行くことは出来ませんでしたが、彼女達の雰囲気に彼もどこか気分が良くなりました。


 話が盛り上がった来た最中、ふと瓜が壁際に離れていたルーズの方を向いて気になったことを聞きます。


 「あの、ルーズさん・・・ そういえば、ゴー君は・・・」


 「またしてもお手洗いだそうです。」


 「ホントに調子悪いな、小馬ッチ・・・」


 「全くです。」


 と表面上は笑顔を作っているルーズ。ですが彼は三人が視線を向けてこなくなった途端、冷たい顔になって考え事をし始めます。


 『二度も誤魔化が通じて良かった。特に瓜さんには・・・』


 彼が瓜の方に視線を向けると、瓜の肩に乗っていたユニーと視線が合いました。彼の方は事態を察しているのか、その目は睨み付けているものです。


 『仕方ありませんよ。今回の件は今の瓜さんを余計に曇らせる。それは絶対にするなと、もう一人のご主人様にキツく言われているのでね・・・』


 と、ルーズはユニーにアイコンタクトを送り、彼も理解して眉を下げました。


 ルーズは次に視線をあさっての方向に向け、フィフスのことを考えます。


 『出来るだけ穏便に納めてくださいよ。王子・・・』

<魔王国気まぐれ情報屋>


 この事件のことでフィフスは鈴音から下痢止め薬を貰ったとか・・・



フィフス『腹痛を理由にするの、金輪際止めておこう・・・』




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