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第271話 黒い雨

 次々と痛みを訴えて出す人達。前触れもない突然の出来事に撮影現場はパニックになっています。


 「これは・・・」


 「千年モグラは倒したはず!? 事前に何か仕掛けてたのか!?」


 フィフスは冷静に周りを怪我人が出た所の周辺を動きながら見回します。しかしどこを見ても何か凶器の一つも落ちてなく、痕跡として分かるのは被害者全員に共通する小さな、何かに貫かれたかのような傷でした。


 『他に術を放った痕跡もない・・・ その上発動時の魔力すら感じさせずに攻撃するなんて、どうやって・・・』


 混乱の中、常人より鍛えている程度のフィフスの感覚では、ここで怒っていることの全容を掴むことは出来ません。



______________________



 この騒ぎは、騒ぎの音が大きかったために校舎内の白兎にも聞こえていました。


 「何だ!? 何か起こっているのか?」


 しかし彼は次の瞬間そこに気を配る余裕がなくなってしまいます。というのも・・・



 ドンッ!!!・・・



 規模は小さいながらも、聞き覚えのある身の痺れるような轟音。白兎が嫌な予感をしながら振り返ると、いつの間にか侵入していたフログが剣を出して立っていました。


 「こっちはこっちでか・・・」


 白兎はすぐに腕輪のスイッチを押してスーツを着込みますが、ヘルメットの中では既に冷や汗を流しています。


 『三人でも余裕こかれたからな~・・・ これはマズいかも・・・』


 白兎は今度は自分がピンチになった事実を受け入れながらも、どうにか出来ないかと頭を回しながらにらみ合いを続けました。



______________________



 人の声や足音がごちゃつくこの中、一番感覚が敏感に感じるルーズは、少し何かを感じようと気を集中させていました。しかし攻撃の音はかなり小さいのか、彼ですら聞こえません。


 『一瞬にして怪我を負わせたところを見ると速度はかなりのもの。しかし飛び道具と仮定してもどこから? 何を飛ばしてきた!?』


 「アガッ!!・・・」


 こうして二人揃って対処が出来ずにいると、その間にまたしてもスタッフの一人が怪我をして倒れてしまう。


 『クソッ! このままじゃ大惨事だ! 何か打つ手は・・・』





 「・・・」


 周囲が騒ぎ、魔人の戦士二人もどうすることもできないこの状況下、安全のために少し離されていた鈴音も周りを見て慌てふためいていました。


 「な、何がどうなって!?・・・」


 しかしその隣にいる瓜は、普段と違って何故か一人落ち着いている様子でした。理由は分かりませんが、なにか気が抜けているようです。


 「・・・」


 瓜がそのまま一度ゆっくりと瞬きをすると、その目に見える景色に、さっきまではそこになかったものがぼんやりと映っていました。


 『何だろう? 黒い、雨?・・・』


 彼女の視界には、さっきからその場に黒く細い雨がかなりの速さで落ち、それに触れた人が怪我をしているように見えます。これが何なのか彼女はよく分かりませんでしたが、不思議と次々落ちてくるそれを一つ一つ無言のままに凝視してしまいます。


 そんな彼女の様子を見た鈴音は、つい心配になって声をかけてしまいます。


 「マッチー? どうしたんだ!? 前に出ると危ないぞ!!」


 「ッン!!・・・」


 声を聞いて瓜はハッと我に帰り、自然と前に出していた足を止めて鈴音の方に顔を向けました。


 「鈴音さん! 今、黒い雨が・・・」


 「黒い雨? そんなのどこにもないぞ?」


 「え?・・・」


 瓜は一瞬自分の耳を疑い、もう一度向こうを指差して言い直します。


 「あれです! 黒い雨!!」


 しかし鈴音が瓜の見る方向に目線を合わせても、彼女の言い分は変わりません。


 「何にも見えないぞ?」


 「ッン!!・・・」


 瓜は彼女の言い分が信じられませんでしたが、鈴音の表情から見て彼女は冗談を言っているわけではなさそうです。


 『どうして・・・ アッ!!』


 瓜が訳の分からないままに目線を鈴音の方に戻すと、彼女の頭上にその黒い雨が触れようとしている瞬間が見えました。


 「危ない!!」


 「エッ! ちょっ!!・・・」


 言葉で言っても間に合わないと判断した瓜は、咄嗟に鈴音を突き飛ばして前に出てしまいます。そしてその直後、突き飛ばした彼女の右腕を黒い雨が貫いて出血し、痛みに彼女は顔を引きつってしまいます。


 「ウグッ!!・・・」


 「マッチー!!」


 尻もちから立ち上がった鈴音の叫びにフィフス達は一斉に振り向きます。


 「瓜!!」


 自身の名を叫ぶ友人に、彼女本人は急場で繕った表情で無事なこと、そして攻撃のことを伝えます。


 「大丈夫です! それより、黒い雨が!!」


 「黒い雨?」


 瓜に言われてフィフスとルーズもその場を見回しますが、彼らの返答も、鈴音と変わらないものでした。


 「そんなもん、見えないぞ?」


 「残念ですが、自分にも何も・・・」


 「そんな・・・」


 魔人にすら見えていない。瓜はこの黒い雨が自分にしか見えていないのだと理解させられます。何故そうなのかという疑問も当然浮かび上がる彼女ですが、そんなことよりもこの場を対処するのが先です。


 そう思っている間に今度はフィフスの左肩辺りに黒い雨が降りかかっているのが見えました。


 「ゴー君! 右に動いて!!」


 「ア?」


 唐突にそんなことを言われてフィフスは困惑しますが、瓜が適当にこんなこと言い出すとは考えにくいと思い、指示通りに体を動かします。すると、彼のさっき立っていたところの地面に直径にしてごく僅かな円の穴が空きました。


 「!!・・・」


 瓜の言ったことがピタリ当たったことに驚きながらもフィフスは穴の位置、それと被害者の攻撃箇所から見てなんとなく予想が立ちます。


 「上空・・・ そっから何か撃ってきてるのか!!」


 すぐに上を向くフィフス。その目線からは見えないほどの上空では、構えていた武器らしきものを外している誰かがいました。


 「・・・」

<魔王国気まぐれ情報屋>


・校舎に現れたフログの心境


フログ「よく稲光で気付かないな、コイツら・・・」




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